こけしとは?
こけしの種類や特徴
伝統こけし
創作こけし
まとめ

多くの人が一度は目にした、もしくは耳にしたことのある「こけし」。伝統的なものだけではなく、ユニークでかわいいこけしが増加した近年は海外の観光客からも人気です。

物によっては100万円以上の値段がついたこともあるのだとか。こけしブームが起こったこともあり、こけし好きの女子を指す「こけ女(こけじょ)」という言葉まで誕生しました。

しかし実際にこけしを見たことや手に取ったことはあっても、どのようなものであるかを知らない人もいるのではないでしょうか。お土産としても目にするこけしは、日本が誇る伝統工芸品の1つ。

今回は、こけしの歴史や特徴、種類について紹介します。

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伝統工芸

こけしとは?

観光地のお土産などでも見かける「こけし」。名前を聞いたことや実物を目にしたことのある人も多いと思いますが、そもそもどういったものなのでしょうか。ここでは、こけしとは何であるのかを説明します。

こけしは木製の人形玩具


こけしとは木製の人形玩具を指す

こけしは、ろくろ挽きで作られた木製の人形玩具のこと。工芸品や民芸品として、広く知れ渡っています。厚い板や丸太を取り付けたろくろを回転させ、工具で削って形を作るのがろくろ挽き。職人の技が生きる伝統技術です。

一般的なこけしは、球形の頭部と円柱形の胴だけを持つシンプルな作り。頭部に顔と髪型、胴体に着物などが描かれ、産地によって表情や模様、胴の形に違いがあります。こけしに描かれる姿は女子である場合が多いですが、実は明確な性別はありません。

現在では、部屋に飾って鑑賞するのが主なこけしの使い方。お土産に選ばれることもあり、産地によった違いを楽しめます。最近は通販でこけしを購入することも可能。旅行に行った時とは違うこけしを買うことができます。

こけしの歴史


こけしの起源は奈良時代まで遡る

こけしの歴史は古く、最古のこけしが誕生したとされるのは奈良時代。称徳天皇(しょうとくてんのう)が国の安泰を祈願し、100万基の小さな木製の塔を各地の寺院に納めました。

仏教の呪文の一種である「陀羅尼経(だらにきょう)」を入れて奉納された木製の塔。「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」と呼ばれ、形こそ似ていませんが日本最古のこけしであると言われてます。こけしの前身である木製の塔は、木地師(きじし)という職人によって作られました。


こけしは東北地方の温泉地から広まった

江戸時代に入ると、東北地方の温泉地で木地師と湯治客(温泉客)による交流の機会が増加。木地師は土産物としての需要があると知り、お椀やお盆を作った時に出る端材を使っておもちゃを盛んに作るようになりました。現在よく見かけるこけしは、この木製のおもちゃが形を変えたものと考えられています。

土産物として最古のこけしだと言われているのは、文政(1804〜1830年)に宮城県の遠刈田(とおがった)で作られたこけし。天保(1830〜1844年)には福島県の土湯(つちゆ)でもこけしが作られるようになったそうです。

当時の温泉客の多くは、日頃から厳しい農作業で疲れている農民。疲れた体を癒すために温泉を訪れていました。木地師が作ったこけしは心身回復や五穀豊穣、山の神につながる縁起物と考えられ、多くの温泉客が土産物として持ち帰るように。こけしはおもちゃとしてのみならず、縁起物としても重宝されていました。

こけしという名前の由来


こけしには多くの呼び名がついていた

こけしという名前がついたのは近年になってから。それまでは「きでこ」や「でころこ」、「芥子人形(けしにんぎょう)」など、地域によって多くの呼び名がありました。

しかし1940年に「東京こけし会」が開催した「第1回現地の集まり・鳴子大会」において、名前を「こけし」に統一すると決定。これ以降、こけしという名前が広まっていきました。

こけしという名前の由来には、さまざまな説が存在します。中でも有力とされているのが、芥子坊主に似ているという説。芥子坊主というのは、江戸時代の子どもたちの髪型を指します。当時の子どもたちは手入れしやすいように、頭頂部だけ髪を残して丸坊主するのが主流。これが芥子の果実に似ていたことから、「小芥子(こけし)」が由来と言われています。


こけしという名前は頭の形に由来するとされている

こけしの語源については、一時期「子消し(子化身)説」も話題に。こけしが広まった江戸時代は、長期的な飢饉が何度も発生しました。

そのため子どもを産まないようにしたり、産まれてすぐに養わなくなったりする「口減らし」が横行。亡くなった子どもたちを供養するために、こけしが用いられたというのが子消し説です。

少し怖い子消し説ですが、実は根拠のない噂として広まったとされるもの。裏付けできる明確な文献はなく、俗説(デマ)に過ぎないと言われています。

こけしの種類や特徴

奈良時代に起源を持つこけし。大きく分けると「伝統こけし」と「創作こけし」の2つが存在します。

伝統こけし

江戸時代後期から作られ始め、古くから伝えられてきた「伝統こけし」。産地は東北地方に分散しており、全部で11系統に分類されています。特に宮城県の鳴子(なるこ)と遠刈田、福島県の土湯は「三大こけし発祥の地」。伝統こけしは、産地によって受け継がれる形や模様、技法などが異なります。

宮城伝統こけし


鳴子こけしは宮城伝統こけしの1つ

主に宮城県の仙台市や白井市周辺で作られている「宮城伝統こけし」。1981年に国の伝統的工芸品に指定されています。宮城伝統こけしの特徴は、頭と胴だけのシンプルな形と可憐な姿。「鳴子系こけし」や「遠刈田系こけし」など、全部で5系統こけしが存在します。

素朴で単純な形の宮城伝統こけしですが、系統によってこけしの形や模様はさまざま。製作技術や模様は一族もしくは弟子のみに受け継がれたため、それぞれ独特のこけしが誕生しました。また系統ごとの伝統を守るために、こけしの製作には多くの制約があるそうです。

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伝統工芸

津軽こけし


青森の津軽こけしは人気で提灯になっている

青森県の温湯(ぬるゆ)温泉や大鰐(おおわに)温泉が主な産地の「津軽こけし」。1本の木から作る「作りつけ」という技法が用いられ、髪型はおかっぱ頭であることが多いこけしです。

胴がくびれていて、足元が末広がりであるのが特徴的。模様は「ねぶた絵」から影響を受けたと言われており、ボタンの花やだるま絵、アヤメ模様が描かれます。津軽こけしは、多様な型や技術を元に完成した比較的歴史の浅い系統。表現様式が多彩で、さまざまな型や模様のこけしが存在します。

南部こけし


南部こけしは岩手を代表する工芸品の1つ

岩手県の花巻市や盛岡市を中心に製作されている「南部こけし」。はめ込み式の頭がくらくらと動くことから、頭部が揺れる様子の擬態語である「キナキナ」という通称がついています。

赤ちゃんのおしゃぶりから発展したと言われており、無彩色であるのが元々の南部こけし。他系統の影響を受けて模様が施されるようになり、花が描かれることから「花巻こけし」とも呼ばれています。

木地山こけし


木地山こけしは年賀状に使用されるほど秋田でおなじみの存在

秋田県の湯沢市が主な産地となっている「木地山(きじやま)こけし」。らっきょう型の頭と太い胴体を持つこけしです。頭頂部の赤いリボンを結んだ模様が描かれ、菊や梅、着物姿の前垂れ模様が胴体に描かれるのが主流。素朴な雰囲気が伝わってくるこけしです。

山形こけし


山形こけしは前と左右に描かれた髪の毛が特徴的

山形県の山形市で主に生産されている「山形こけし」。小さな頭部の前と左右に描かれた髪の毛が特徴的なこけしです。頭のてっぺんににあるのは赤い放射状の飾り「手絡(てがら)」。細い胴体に山形こけし独特の四弁の梅や桜、紅花などが描かれます。

蔵王高湯こけし


蔵王高湯こけしは遠刈田こけしから発展した系統

山形県の蔵王(ざおう)温泉が主な生産地である「蔵王高湯(ざおうたかゆ)こけし」。丸みのあるどっしりとした形のこけしです。山形こけしよりも胴体が太くて短く、頭が大きいのが蔵王高湯こけしの特徴。宮城伝統こけしの「遠刈田こけし」から発展した系統であると言われています。

土湯こけし


土湯こけしは返しろくろにという伝統技法が光る

福島県の土湯温泉や猪苗代(いなわしろ)町を中心に生産されている「土湯こけし」。小さい頭と細い胴体を持つこけしです。土湯こけしに見られる特徴の1つは、ろくろを逆回転させる「返しろくろ」によって描く独特の模様。頭頂部には「蛇の目」という黒い輪、前髪の両脇には「かせ」という髪飾りが描かれます。

土湯こけしの中には、大きな目に赤いフチ取りの「たこ坊主」という種類も存在。顔や模様が土湯こけしとは異なるということから、2018年に12系統目の「中ノ沢こけし」として独立したとも言われているそうです。

創作こけし


創作こけしは自由な発想で製作される

伝統こけしに対して、新しく自由な発想で作られる「創作こけし」。東北地方以外の地域で、戦後から作られるようになった新型のこけしです。創作こけし作りが特に盛んなのは群馬県。国内第1位の創作こけし生産量を誇ります。

創作こけしには「これ」という決まりがないため、こけしに見えないような作品があるのが面白いところ。アニメや映画のキャラクターがモチーフになる場合もあり、型にはまらない自由なこけしを楽しむことができます。

こけしからは伝統技術が垣間見える

今回は、こけし歴史や特徴、種類などを紹介してきました。奈良時代に起源があるこけしは、お土産や縁起物として全国に広まった東北地方を代表する伝統工芸品。工房で職人が丹精込めて作り上げるため、シンプルながらも伝統的な技術が垣間見えます。

こけしの正体を知ってから改めて目にすることで、今までは気づかなかった魅力を感じられるはず。こけしを手に取り、職人の技や古くからの歴史を感じてみてはいかがでしょうか。