枯山水とは?
枯山水の歴史と由来
枯山水にはどんな種類がある?
枯山水庭園にある石や模様の意味は?
枯山水があるスポット5選
自宅で枯山水を作る方法
日本のわびさびの心を継承していく枯山水

水のない庭に石や白砂を用いて水の流れを表現した日本庭園。テレビや雑誌で誰もが一度は見たことのある光景ではないでしょうか。この日本の伝統的なわびさびを感じられる庭園様式を「枯山水」といいます。

華やかさはないものの素朴で慎み深く、日本の風情が感じられる枯山水。アップル創業者・スティーブ・ジョブズも枯山水の魅力に引き込まれ、何度もお忍びで日本へ訪れていたほど。

今回は、枯山水の歴史や種類だけでなく、おすすめスポットや家で枯山水を楽しむ方法を紹介します。

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【わびさび】の意味とは?世界を魅了する日本の美意識を紐解く

京都府 < 京都市

【わびさび】の意味とは?世界を魅了する日本の美意識を紐解く 日本らしさを感じる「わびさび」。日本人特有の美意識や感覚を表す言葉です。茶道や庭園を見た際によく使われますが、実際にはどのような意味なのでしょうか。今回はわびさびを感じる場所や意味など、歴史を交えながら日本の美学を紐解きます。

その他伝統・日本文化

枯山水とは


京都府高台寺の枯山水
枯山水とは、池や鹿威し(ししおどし)などを使わず石や砂、草木で山や川の自然風景や宇宙を表現した庭園様式のひとつ。無の境地を目指す禅の趣が影響を与えた飾り気のない閑静な庭園です。

他に仮山水(かさんすい)、故山水(こさんすい)と呼ばれており、平安時代の書物にはこせんずいとも記されていました。散策するのではなくじっくり景色を眺めることで、心を落ち着かせて石の位置や砂の模様を考察しながら眺めるのが枯山水の楽しみ方の一つです。

枯山水の種類は時代や造園方法によって異なるため、その場所独自の世界観を感じることができます。

枯山水の歴史と由来


妙心寺の枯山水と枝垂れ桜
枯山水の歴史は長く、水を使わない庭園は飛鳥時代にも存在したといわれています。平安時代末期に書かれた日本最古の庭園書である『作庭記』には「池もなく遣水もなき所に石たつる事あり。これを枯山水となづく。」と記されており、作庭記が枯山水の由来に。

しかし、平安時代にはまだ禅宗が広まっていなかったため、庭の一区画に置かれた石と白砂だけという現在の趣ある美しい枯山水の姿とは少し違う形式であったと考えられています。

鎌倉時代に入ると中国から禅宗が伝来し、枯山水が本格的に広まりました。庭で禅の儀式を行うにあたり、禅の思想を表現するために本格的な石を組み合わせて配置するようになります。その際、京都にある西芳寺(苔寺)を禅宗寺院として復興させるべく派遣されたのは、夢窓疎石(むそうそせき)という禅僧。

寺院の中にあった庭を禅の修行をする場にするために石や白砂を導入し、枯山水を築きました。この西芳寺の枯山水は国内初で、石の配置だけで豊かな水量を感じさせる庭園に。ここから枯山水という庭園様式が世間に浸透していきます。

また、1467年の応仁の乱で京都が荒廃し、狭い土地に低予算で造園できる枯山水が脚光を浴びます。それまでの日本庭園は水を得られる場所に築くのが常識でした。しかし、応仁の乱で苦しめられた貴族や寺院が労力とお金をかけることなく美しい庭園を復興する策を考えて行き着いたのが枯山水です。

水のないところに水を感じる禅の精神性だけでなく、簡単に庭園を作ることができる点が多くの人を魅了しました。


春の龍安寺の枯山水

その後は、中国の歴史や伝説に基づく島などを意味する石と、白砂を用いて水の流れの模様を描いた枯山水が流行。武士の時代に変わっていくにつれ武家や庶民にも広がり、禅の思想を受けた素朴さや簡素さではなくより美しさに注力した枯山水へと変化していきました。

しかし、茶道の発展とともに茶の湯の際に手を清めるための手水鉢(ちょうずばち)や植物が主体となった茶庭(ちゃてい)や池のある庭園が主流に。茶道の文化広がるにつれ、枯山水は徐々に衰退していきます。

昭和20年の終戦以降、庭園に対する再解釈が行われ、太陽の塔で有名な岡本太郎やイギリスの有名な造園家が注目したため、「モダン・ランドエスケープ・デザイン」として世界的に評価されるようになりました。

このように枯山水は日本の伝統的な美しい庭園様式として現在に継承されてきたのです。また、禅の思想に基づくということから、枯山水を英語で「Zen garden」と表現されています。

枯山水の種類

実は枯山水にはさまざまな種類があります。枯山水は、平庭式(ひらにわしき)、準平庭式、枯池式(かれいけしき)、枯流れ式(かれながれしき)、特殊形式の5種類に分けられます。その土地特有の立地を生かす様式で、枯山水への理解を深めるには重要なポイント。

ここでは枯山水の種類とその特徴を解説します。

平庭式(ひらにわしき)

平庭式枯山水は最もシンプルで、一面が平らな庭に造園される様式。苔以外の植物がなく、現在の「石庭(いしにわ、せきてい)」を指します。京都にある龍安寺の石庭が平庭式枯山水となっており、世界的に枯山水の代表格として知られる特別名勝の庭園です。

準平庭式


準平庭式特有の築山
準平庭式枯山水は、平庭式枯山水に小高い山を加えた様式です。平庭式とはあまり大きな違いが無いので、事前に知っておかなければ素人の目では判別しにくくなっています。

準平庭式特有の小高い山を造ることを築山(つきやま)といい、地形に変化を与えることで庭に深みを持たせようとする技法。『作庭記』に「山をつき」という言葉が記述されていることから、築山と呼ばれるようになったとされています。

枯池式(かれいけしき)


枯池式枯山水

枯池式枯山水は、水を用いていないのに実際に池があるかのように石を組み、空っぽの池を表現しています。世界遺産「古都京都の文化財」にも指定されている西本願寺の庭園は枯池式で有名です。

また、滋賀県の青岸寺庭園の枯山水は苔が池の水を表していますが、雨が降ると水が苔から染み出て溜まり、本物の池になるそうです。

枯流れ式(かれながれしき)


天龍寺の枯流れ式枯山水
枯流れ式枯山水は、周りに護岸のようなものをつくり、その内側に小石や砂を敷いた小川の清流を表現した様式。京都府の天龍寺の庭園は枯流れ式枯山水で知られており、庭一面に描かれたさざなみの砂紋は緩やかな川の情景を演出しています。

特殊形式


銀閣寺の向月台と銀沙灘
特殊形式枯山水は、平庭式、準平庭式、枯池式や枯流れ式には当てはまらないそれ以外の枯山水のことを指します。慈照寺銀閣の向月台(こうげつだい)や銀沙灘(ぎんしゃだん)が有名です。

枯山水庭園にある石や模様の意味は?

枯山水のなかにある大きな岩石や、水を表現した砂の模様・砂紋にもちょっとした意味があるのです。さまざまな種類があるので代表的なものをいくつか紹介します。

須弥山(しゅみせん)


大徳寺の北庭にある須弥山

須弥山(しゅみせん)とは、世界の中心にそびえ立ち、仏の住む聖なる山。仏教では重要なシンボルとされていることから大きな立石を須弥山として置き、その周りに低い石を並べた石の組み方です。

蓬莱山(ほうらいさん)


龍源院にある蓬莱山
蓬莱山とは、道教の蓬莱神の思想に基づく石の組み方。道教では、不老不死を願う思想を持つ仙人の住む蓬莱山が人間の理想郷とされています。石や築山で蓬莱山を表現し、その周辺には鶴や亀を見立てた石を置くのが一般的。

三尊石(さんぞんせき)


建仁寺にある三尊石
三尊石(さんぞんせき)は、中央に置いた大きな石の両脇に小さな石を置く石の組み方。名称は仏像の三尊像にちなんだ名前で、大きな石を弥勒菩薩(みろくぼさつ)、両脇を文殊菩薩(もんじゅぼさつ)と普賢菩薩(ふげんぼさつ)に見立てています。

砂紋(さもん)


龍安寺の滴るような砂紋

砂紋とは、庭に敷かれた白砂を用いて水流を表現したもの。砂で描かれた多彩な模様と石や植栽の調和は、枯山水の鑑賞に大きな役割を果たしています。

ここではそれぞれの砂紋の種類が何を表現しているのかを解説します。

・さざなみ(流水紋):平穏な水面を象徴する模様。線の大小で川や海などの規模を表しています。
・うねり:平穏ではありますが、さざなみよりも躍動的な波を表現しています。
・網代波紋(あじろはもん):折線を連続させ、硬くやや荒い波を表しています。
・片男波紋(かたおなみもん):円弧を連続させたもので、うねりと網代波紋を混合させたやや躍動的な波を表現しています。
・青海波紋(せいがいはもん):無限に広がる波を表現しています。力強さと柔らかさが混ざり合う雰囲気。
・渦紋(水紋):一滴の水が落ち、そこから広がる波紋や渦潮を表現しています。
・観世水(かんぜみず):さざなみと渦紋を組み合わせたもの。流水に滴る水を表現しています。
・獅子紋:旋紋(せんもん)ともいう。渦紋の変形で、荒々しさを表現している。
・立浪紋:荒ぶる波を表現しています。

枯山水があるスポット5選

龍安寺(京都府)


秋の龍安寺の石庭
枯山水庭園で知られる「龍安寺」。室町時代に創建された寺院で、世界遺産にも指定されています。龍安寺といえば、「龍安寺方丈庭園」と呼ばれる石庭。国の史跡と特別名勝に指定されている石庭は禅の美を表現した由緒正しい庭園です。

龍安寺の枯山水庭園の石の数は全部で15個なのですが、どの角度から眺めても必ず1個の石は他の石に隠れて見えないように造られています。

1975年にはイギリスのエリザベス2世が龍安寺を公式訪問し、世界的に注目される枯山水庭園に。龍安寺の枯山水は作庭家や石の配置の意図が謎に包まれており、石庭と向き合いながら考察するのも楽しみの一つです。

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神社・寺

西芳寺(京都府)


西芳寺の苔に覆われた庭園
境内を約120種もの苔が覆っていることから苔寺の名でも知られる「西芳寺」。世界文化遺産に指定されている禅寺で、そこにある庭園は鎌倉時代と南北朝時代を代表する禅僧・夢窓疎石が作庭し、日本最古の枯山水庭園と語り継がれています。

足利義満をはじめ西芳寺で座禅に励んだ歴史上の人物は数知れず。のちに足利義満や足利義政が創建する金閣寺や銀閣寺など、室町時代を代表する庭園の原型になったといわれています。江戸時代末ごろに洪水の被害に遭ったことで苔が庭園を覆うようになり、唯一無二の枯山水庭園に。

現在は枯山水ならではの砂紋などは見られませんが、苔に覆われた庭園はまるで緑の絨毯を敷き詰めたような美しさ。特に梅雨明けはより一層神秘的な景観を楽しむことができます。

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神社・寺

玉堂美術館(東京都)


玉堂美術館にある枯山水
東京都青梅市の御嶽駅(みたけえき)すぐ近くにある「玉堂美術館」。主に日本画家・川合玉堂の作品を展示する美術館で、東京都内ではほとんど見ることのできない本格的な枯山水庭園が設けられています。

玉堂美術館の枯山水を手がけたのは、戦後に5期も総理大臣を務めた吉田茂の邸宅にある吉田茂庭園をつくった中島健という作庭家。中島健は美術館のすぐそばにある多摩川をイメージして作庭しており、枯山水と桜や紅葉、山並みといった周囲との景観の調和を図る借景という技法を用いています。

白砂で描かれたさざなみと石の周りに広がる水紋が緩やかな川の流れを表現しており、どこから見ても石組の変化を楽しむことができる設計になっています。

金剛峯寺(和歌山県)


金剛峯寺の枯山水と奥殿
和歌山県北東部、高野山にある「金剛峯寺(こんごうぶじ)」。真言宗の宗祖である空海(弘法大師)が修禅の道場として開いた真言宗の総本山です。本来は高野山そのものが金剛峯寺と呼ばれていましたが、1590年ごろに豊臣秀吉が大政所を弔うために建立した青巖寺(せいがんじ)が金剛峯寺と呼ばれています。

金剛峯寺境内の渡り廊下を抜けた場所にあるのが日本最大の石庭と称される蟠龍庭(ばんりゅうてい)。この蟠龍庭は約2,340㎡を誇り、一面に敷き詰めた白い砂は雲海を表現しています。庭園中央に建てられた奥殿の周囲には曲線を描くような石組が置かれており、まるで雲海に浮かぶ奥殿とそれを守る龍のような佇まい。

秋には庭の周りの紅葉が枯山水に散りばめられ、日本の秋の情緒を感じることができます。

浄妙寺(神奈川県)


浄妙寺の枯山水と紅葉
「浄妙寺(じょうみょうじ)」は源頼朝の重臣によって創建された寺院。浄妙寺は足利氏の菩提寺で、鎌倉時代に南宋から渡来した蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)ら臨済宗の名僧が開山した禅宗寺院です。中でも鎌倉幕府の庇護のもと、築かれた鎌倉五山のひとつ。

茶室の手前にある枯山水は、京都の天龍寺の庭園を手がけた曽根三郎が作庭し、スギゴケや松などの緑と巧みな石組だけで構成された和風情緒豊かな庭園に。茶室では抹茶と和菓子を嗜みながら美しい枯山水を眺めることができます。

自宅で枯山水を作る方法


枯山水の砂紋と植物

石や砂と草木や苔などの緑が織りなす庭にわびさびの心を感じられる枯山水。実は自宅でも手軽に作ることができるのです。今回は枯山水風の園芸と小さなお盆に作るミニ枯山水の作り方を紹介します。

枯山水の庭の作り方

① 植物を植えるための日当たりの良い場所に白っぽい砂利を敷きます。
② 次にホームセンターなどに売っている熊手で砂利を優しくなぞり、水の流れを表現していきます。
③ 土や石、植物で高さを作り、自分の思うように山を表現します。
④ 最後に自分の好きな植木や大きな石をバランスよく置きます。

ミニ枯山水の作り方

こちらはキットで作るのもおすすめです。実は龍安寺が監修した枯山水キットも販売しており、トレイを箱庭に見立てて世界で一つだけの本格的な枯山水庭園を作ることができます。

① トレイに細かくサラサラとした砂を敷き詰めます。
② 専用の熊手やフォークなどで砂に自分の思いのままに模様を描きます。
③ 小さな石をバランスよく配置します。
④ お好みで苔を置くのもおすすめ。

日本のわびさびの心を継承していく枯山水

今回は枯山水の魅力だけでなく、おすすめスポットや家で枯山水を楽しむ方法を紹介しました。

見ているだけでもわびさびを感じられる枯山水。眺めるだけでもよし、どんな意味があり、何を表現しているのか自分の想像を膨らませるもよし。

枯山水そのものの知識や歴史を理解した上で足を運ぶと、見方や感じ方が違ってくるかも知れません。枯山水庭園に赴き、日本ならではの美しさを楽しんでみてはいかがでしょうか。