苔寺ってどんなところ?
苔寺の歴史
苔寺の見どころはどこ?
苔寺の基本情報
苔寺の予約方法とは?
苔寺は1つじゃない?
苔寺の周辺スポット
まとめ

緑の絨毯のように苔が庭園を包み込む絶景で知られる「苔寺(こけでら)」。京都府京都市の洛西エリアに位置している臨済宗(りんざいしゅう)の寺院です。

「古都京都の文化財」の構成遺産の1つであり、正式名称は「西芳寺(さいほうじ)」。寺院としては珍しい葉書での事前予約制のため、京都で一番参拝するのが難しいともいわれています。

しかし、昔は多くの観光客で賑わう一般的な寺院でした。このような制度になった原因は観光公害。苔を守り、静かに己と向き合う空間にするためという想いからできた制度だそうです。

今回は苔寺の歴史や見どころ、予約方法について解説していきます。

【関連記事】
苔寺の後に京都の世界遺産を周りたい人はこちら↓
【京都の世界遺産】は実は1つだけ?古都の文化財を徹底解説

京都府 < 京都市

【京都の世界遺産】は実は1つだけ?古都の文化財を徹底解説 日本を代表する観光地「京都」。世界遺産には金閣寺や清水寺、仁和寺などがありますが、意外にも登録数は1つだけです。その理由は「古都京都の文化財」として登録されているため。今回は、そんな京都の世界遺産を紹介します。

神社・寺

苔寺とは


緑の絨毯のような苔で覆われた庭園
京都府京都市洛西エリアに位置する「苔寺」。正式名称を「西芳寺」といい、起源は約1,300年前までさかのぼる由緒ある寺院です。かの有名な聖徳太子の別荘だったといわれる地に建てられたことでも知られています。

苔寺といえばなんといっても一面が緑に染まった絶景が楽しめる庭園。澄んだ空気と落ち着いた空間が演出する異質な雰囲気は参拝者の心を洗います。


さまざまな種類の苔を楽しめる西芳寺の庭園
現在は多くの観光客を受け入れることはしておらず、事前予約が必須。葉書でのやりとりをする必要がある上、3,000円以上とされている拝観料、庭園の見学のみはできず、写経をはじめとした本堂の参拝に参加する必要があるなど参拝障壁は高めとなっています。

しかし一昔前の1977年までは一般的な寺院のように多くの観光客を受け入れていたそう。ではなぜこのような参拝方式をとっているのでしょうか。


西芳寺の庭園へと続く小道
その原因は観光公害にありました。観光公害とは観光客が増加することによるゴミや排気ガスの増加、騒音や交通事故の発生などのこと。1955年ごろから庭園ブームが巻き起こり、世界中の観光客が苔寺を訪れるようになり、観光公害が発生してしまったそうです。

そのため苔の保全や寺院の宗教的雰囲気を維持することを目的に事前予約制を採用するようになりました。

※2021年6月より、直前の申し込みに限り、オンラインでの受付が可能になりました。

苔寺(西芳寺)の歴史


西芳寺の起源をつくった行基
西芳寺(苔寺)は奈良時代、聖武天皇の命により東大寺の大仏建立で知られる「行基(ぎょうき)」が法相宗の寺として開山しました。その地には聖徳太子の別荘があったといわれています。

そして平安時代には空海が放生会という生き物の命を大切にするため、鳥や魚などを放つ儀式を行っていたそう。その影響もあり、西芳寺の宗派は真言宗へと移り変わりました。鎌倉時代に入ると、浄土宗の開祖と仰がれている法然を招き入れることとなります。それに伴い、宗派も浄土宗へと改宗。


夢窓疎石が造り上げた美しい西芳寺の庭園
その後兵乱が相次ぎ、西芳寺は一時荒廃の一途を辿ってしまいます。そして室町時代初期には当時の高僧であり、作庭の名手であった夢窓疎石(むそうそせき)が禅宗へと改宗し、再興しました。

約1,300年という長い歴史の中で3度の改宗を経験した西芳寺。それでも途絶えなかったのは足利義満や義政をはじめとする著名人やその時代に暮らす人々の厚い信仰があった証と言えるかもしれません。

名前の移り変わり


宗派が入れ替わるごとに姿を変えてきた西芳寺
現在は「西芳寺」という名前である苔寺ですが、昔は少し違う名前だったのをご存知でしょうか。

行基が寺を開いたとされている当時の名前は「西方寺」。読み方は同じですが込められた意味合いは異なります。

西芳寺の名前の由来に関わっている達磨
西方寺の「西方」とは文字通り西の方角を表しており、「西に浄土がある」という浄土宗の思想が色濃く反映されています。そして「西芳寺」の「西芳」とは、「祖師西来(そしせいらい)」と「五葉聯芳」という禅宗の開祖とされる「達磨(だるま)」にまつわる故事からきたそう。

それぞれの名前にそれぞれの時期の宗派が影響しており、西芳寺が形を変えながら長い歴史を歩んできたことがわかります。

なぜ苔で覆われているのか


鮮やかな緑が美しさを演出する西芳寺の庭園
現在の苔寺の庭園といえば全体を苔が覆った幻想的な景色が思い浮かびますが、作庭当時は白い砂に松が映える日本庭園でした。苔に覆われるようになったのは江戸時代末期ごろからのことで、わずか200年ほどの期間だといわれています。

度重なる戦争や大雨によって美しい庭が荒れることによって、次第に苔が生えはじめ、いつしか庭園全体を覆うようになっていきました。

ポツンと浮かぶ小舟が物悲しさを感じさせる西芳寺の庭園
歴史的にいえば間違いなく「負の歴史」ですが、それがあったからこそ苔寺には息を呑むほどの絶景が作られていきました。そして苔を取り除くことなく、美しさを見出し、保全したからこそ今の苔寺の美しい空間ができたのです。

苔寺(西芳寺)の見どころ

ここでは苔寺の見どころについて紹介します。緑の世界に誘惑される一面の苔以外にも名所といえるポイントが目白押し。苔寺の深い歴史と宗派の混ざり合いが生んだ芸術的な庭園を隅々まで味わいましょう。

庭園


「ビロード」とも表現される苔寺の苔
苔寺の庭園は上段と下段に分かれており、自然の地形を生かした立体的な造りになっています。上段には枯山水の石組み、下段には黄金池(おうごんち)があるという他の庭園とは一線を画す独特な構成。そしてその光景の中には宗派の混じり合いを感じることができます。

上段の枯山水がある庭園はもともと法然が開いた「厭離穢土寺(えんりえどじ)」と呼ばれる浄土宗の寺のもの。そこに夢窓疎石が日本最古といわれる枯山水の石組を造り上げました。そしてその中に禅宗の精神性を反映し、「新時代的」な庭園が築かれたのです。


苔と池の美しさが際立つ苔寺の庭園
下段の黄金池がある庭園はもともと「西方寺」(旧西芳寺)のもの。庭園の中心となっている黄金池は心字池とも呼ばれ、その名の通り「心」という漢字をかたどった池になっています。池にかかる橋まで苔に覆われた現在の姿は息を呑むほどの美しさです。

【関連記事】
石や白砂で描かれる日本の石庭、枯山水を知りたい人はこちら↓
【枯山水】とは?石や砂で描かれる日本庭園の謎に迫る

京都府 < 京都市

【枯山水】とは?石や砂で描かれる日本庭園の謎に迫る 水を用いずに石や白砂で山水を表現した日本庭園「枯山水」。作庭記や禅宗に由来するわびさびを感じさせる庭園様式です。砂で描かれる模様や岩の配置にも様々な種類や意味が存在。あのジョブズもお忍びで訪れた枯山水の魅力やおすすめの場所5選を紹介します。

神社・寺

金閣寺と銀閣寺との関係


豪華絢爛な印象を与える金閣寺の楼閣
京都の中でもトップクラスの人気を誇る「金閣寺」と「銀閣寺」。これらの庭園は西芳寺の庭園をもとに造られました。

現在の西芳寺と金閣寺、銀閣寺の庭園の一番大きな違いといえば楼閣(ろうかく)があるかどうかではないでしょうか。金閣寺にも銀閣寺にも池に浮かんだ楼閣が存在していますが、西芳寺の黄金池には楼閣がありません。

しかし、昔は西芳寺にも金閣寺、銀閣寺のような楼閣があったといわれています。そしてその二層構造の楼閣は金閣寺、銀閣寺のモデルとなりました。

【関連記事】
豪華絢爛な金閣寺についてもっと知りたい人はこちら↓
【金閣寺】歴史や見どころは?金色の世界遺産を徹底解説!

京都府 < 洛西エリア

【金閣寺】歴史や見どころは?金色の世界遺産を徹底解説! 金色に輝く舎利殿が有名な「金閣寺」。日本の観光名所・京都の中でも特に人気のスポットです。正式名称は鹿苑寺(ろくおんじ)で、世界遺産にも登録されている格式高いお寺。今回は、そんな金閣寺の歴史や見どころを紹介します。

神社・寺


わびさびを感じる銀閣寺の楼閣

豪華絢爛な金閣寺の庭園と日本特有の美意識「わびさび」を感じる銀閣寺の庭園という正反対に思えるものも、その根底には西芳寺の庭園がしっかりと根付いているんです。

【関連記事】
「わびさび」の精神を体感できる銀閣寺についてもっと知りたい人はこちら↓
【わびさび】の意味とは?世界を魅了する日本の美意識を紐解く

京都府 < 京都市

【わびさび】の意味とは?世界を魅了する日本の美意識を紐解く 日本らしさを感じる「わびさび」。日本人特有の美意識や感覚を表す言葉です。茶道や庭園を見た際によく使われますが、実際にはどのような意味なのでしょうか。今回はわびさびを感じる場所や意味など、歴史を交えながら日本の美学を紐解きます。

その他伝統・日本文化

本殿(西来堂)


比較的新しい苔寺の本殿
西来堂と呼ばれる西芳寺の本殿は比較的新しく、昭和44年(1969年)に京都大学名誉教授の村田治郎によって設計され、再建されました。

金色の豪華な装飾が特徴的で、本堂内部の襖絵は堂本印象画伯によって抽象画が描かれています。参拝の際にはここで写経などを行います。

湘南亭


数々の偉人に愛された湘南亭
千利休の次男である「千少庵(せんのしょうあん)」によって建てられた「湘南亭」。国の重要文化財にも指定されている茶室です。

千利休が豊臣秀吉に切腹を命じられた時、一時的に隠れ家として利用していたといわれています。また、明治維新の際には岩倉具視が幕府の難から逃れるために隠れることもあったそう。

湘南亭で偉人が過ごした風景を味わってみてはいかがでしょうか。

苔寺(西芳寺)の基本情報

アクセス: (1)京都駅から、京都バス73系統もしくは83系統乗車、「苔寺 鈴虫寺」行き 終点の「苔寺 鈴虫寺」約60分 下車徒歩2~3分
(2)JR嵯峨嵐山駅から、タクシーで約10分
住所:〒615-8286 京都府京都市西京区松尾神ヶ谷町56
電話番号:075-391-3631
営業時間:基本午前のみの開門(予約状況によって午後の開門あり)
参拝冥加料:1人3,000円以上
公式サイト:苔寺(西芳寺)

苔寺(西芳寺)の予約方法


懐かしいはがきでのやりとりを楽しむことができる苔寺への参拝

往復はがきで参拝の申し込みをしましょう。はがきに「拝観希望日・同伴人数・代表者の氏名・住所・電話番号」を明記し、拝観希望日の1週間前までに届くように送ります。

後日、参拝証が返送されてくるので忘れずに持っていきましょう。

※ 冬季は本堂の襖絵のみの公開となるため、庭園の見学は不可

※ 2021年6月から直前の予約に限り、公式サイトからオンラインでの予約ができるようになりました。往復はがきより参拝冥加料が1,000円高くなる点には要注意。

参拝の流れ

参拝受付をして、本殿へ向かおう


参拝者を出迎えてくれる苔寺(西芳寺)の本殿
参拝証に書かれた時間をしっかり守って西芳寺を訪れましょう。参拝賞を見せて中に入ると本殿である西来堂が現れ、90%を超える湿度と青々とした自然が静かな空間に佇む光景が広がっています。

御朱印を拝受したい人はここで御朱印帳を預けましょう。西芳寺の御朱印は珍しい見開きのもの。迫力のある御朱印は旅の思い出になること間違いなし。

本堂で写経をしよう


なかなか難しい苔寺での写経
本堂に到着したら写経を行います。持参した筆ペン、もしくは用意していただいた硯と筆を使って字をなぞっていきましょう。

50文字程度のため、10分ほどで仕上がります。書き終えた写経を納め、参拝を終えたらいよいよ庭園へと向かいます。

苔に包まれた庭園を鑑賞しよう


苔の美しさを思う存分堪能できる苔寺の庭園
心ゆくまで苔に包まれた庭園を楽しみましょう。一面緑の庭園は美しくも、どこか寂しさを感じるような雰囲気に包まれています。

マンジュウゴケやビロードゴケなど120種以上といわれる苔の絨毯は桜や紅葉など季節の花とも相性が良く、見事なコントラストを生み出しています。また、庭園の見頃といわれる梅雨明けは眩しいくらいに美しい緑を味わうことができます。

苔寺は1つじゃない?

「苔寺」といえば西芳寺となるほどの知名度を誇る西芳寺の庭園。しかし苔寺と呼ばれるところは他にもあるんです。ここでは西芳寺以外の苔寺を一挙に紹介します。

妙法寺(神奈川県)


「鎌倉の苔寺」と呼ばれる妙法寺
「鎌倉の苔寺」の異名をもつ「妙法寺」。日叡(にちえい)によって1253年に創建された寺院です。

妙法寺が苔寺と呼ばれる所以は境内にある苔の石段にあります。苔の石段は全体を苔が覆い尽くしており、周りの自然に溶け込むように存在しています。

現在は苔保全のため立ち入り禁止ですが、訪れた際は必ずチェックしておきましょう。

三千院(京都府)


紅葉と緑のコントラストが美しい秋の三千院
約1,200年の歴史をもつ京都の寺院「三千院」。京都府京都市に位置する2つの庭園が特色の寺院です。

2つの庭園とは「聚碧園(しゅうへきえん)」と「有清園(ゆうせいえん)」。聚碧園は茶室があり、自然の美しさを堪能できる庭園、有清園は季節ごとにさまざまな表情を見せる庭園となっています。


いたるところに隠れている小さなわらべ地蔵
苔寺と呼ばれる所以は有清園に広がる苔の絨毯。秋になると紅葉した葉が苔の上に落ちてくることで、緑と赤黄の絶景を作り出します。また、庭園内には小さなわらべ地蔵が隠れています。よく目を凝らすと見つかるかも。

祇王寺(京都府)


緑の絶景に囲まれた祇王寺の庭園
『平家物語』に登場し、「悲恋の尼寺」と呼ばれる「祇王寺(ぎおうじ)」。竹林と楓に囲まれた草庵です。

祇王寺は平清盛に都を追われた祇王という人物が母、妹と共に出家した尼寺として知られています。そんな祇王寺の庭園は深緑で満たされている落ち着く空間。もちろん床一面には苔が生えており、美しい景観をつくりだしています。

苔寺(西芳寺)周辺のスポット

鈴虫寺(華厳寺)


一年中鈴虫の音を聞くことができる鈴虫寺(華厳寺)
西芳寺からほど近いところに位置する鈴虫寺。正式名称を華厳寺(けごんじ)という西芳寺と同じ禅宗の寺院です。

鈴虫寺といえば一年中聞くことができるという鈴虫の音が有名。田舎の風景や昔の雰囲気を想起させる「リィーン」という心地よい鳴き声は聞く人の心を落ち着かせてくれます。

願いを一つだけ叶えてくれるという「幸福地蔵菩薩」でも知られており、多くの人が願いを叶えに参拝しています。

金閣寺


日に照らされてキラキラと輝く金閣寺
西芳寺と同じ洛西エリアに位置する「金閣寺」。豪華絢爛な舎利殿で知られる京都随一の人気観光スポットです。

金色に輝く楼閣が世界的な知名度を誇っており、池に反射した金閣は言葉にできないほどの絶景。庭園は西芳寺をモデルとしているため、それぞれの共通点や相違点を探してみると違った角度から金閣寺を楽しめます。

嵐山


紅葉が美しい秋の渡月橋
京都市右京区と西京区にまたがる京都を代表する観光スポットである「嵐山」。世界遺産である天龍寺などの寺院が多く存在しています。

桂川にかかる渡月橋(とげつきょう)は桜、紅葉の名所として有名。初冬に開催される「嵐山花灯路」ではライトアップされた渡月橋や竹林を見ることができ、昼間とは違う美しさに目を奪われます。

歴史が生み出す文化の混ざり合いと破壊が生み出した奇跡の庭園

今回は苔寺(西芳寺)を紹介しました。約1,300年という歴史の中で幾度となく宗派が変わり、衰退しては再興してきた苔寺。いつの時代も多くの偉人をはじめとする人々に愛されてきました。

代名詞ともいえる苔の庭園は洪水や戦争が生み出した絶景。負の歴史から生み出された神秘的な光景は日本人の心をくすぐる魅力に溢れています。

久々にはがきを使ってのやりとりを楽しみながら、訪れてみてはいかがでしょうか。