香川県丸亀市のシンボル「丸亀城」。標高約66mの亀山という丘陵地に築城された平山城で、「亀山城」という名前でも知られています。
迫力のある高さ60mの石垣に対し、天守の高さは現存12天守の中では最小の約15m。ほかの城にはないような独特な雰囲気が味わえます。
本記事では丸亀城の魅力、歴史などについて詳しく解説。また周辺の観光情報や丸亀の名産物についても紹介しますので、丸亀市への観光を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
協力:一般財団法人 丸亀市観光協会/丸亀市教育委員会
丸亀城の魅力とは?
高い石垣が象徴的な丸亀城
本記事では丸亀城の魅力や見どころとして、以下の6つをご紹介します。
●魅力1:国の重要文化財に指定された現存12天守のひとつ
●魅力2:日本最大級の石垣
●魅力3:国の重要文化財に指定された「大手一の門」「大手ニの門」
●魅力4:県指定文化財の「藩主玄関先御門」
●魅力5:日本一深い井戸のある二の丸
●魅力6:京極氏の家紋が描かれた御城印
魅力1:国の重要文化財に指定された現存12天守のひとつ
丸亀城の天守は3層3階
丸亀城は1660年に完成した高さ約15mの天守が残る、現存12天守のひとつです。はじめて丸亀城を見た人は石垣の大きさとは対照的に天守が非常に小さくて驚くかもしれません。
しかし丸亀城天守は、江戸時代に建てられた天守が現在も残っている「現存12天守」のひとつであり、非常に貴重です。かねてより歴史的な価値があると評価されており、1951年には国の重要文化財に指定されました。
天守の屋根は数々の破風(はふ ※)で美しく装飾されており、意匠性のある格式高い姿をしています。
豪壮な石垣に小さな天守が乗っている姿はどこか可愛らしさもあり、多くの城好きを魅了しています。
※破風:屋根の三角に見える部分のこと
魅力2:日本最大級の石垣
いかにも攻め落としにくそうな丸亀城は「要塞」という言葉がよく似合います(写真提供:[公社]香川県観光協会)
丸亀城の石垣は日本最大級の総高60m。石垣の規模と造形美から丸亀城は「石垣の城」とも呼ばれています。
丸亀城の石垣は、石垣を築く技術が最高水準であった江戸時代前期に造られており、隙間なく積まれた石ときれいな曲線が魅力的。石垣は美しい曲線を描いて立ち上がり、「扇の勾配」と称されています。
場所ごとに石垣の積み方が異なっているため、細部の違いを楽しみながら見ることができます。
丸亀城全域でよく見られる石垣
「打ち込みハギ」の石垣は四角に形を整えた割石を積むのが特徴。隙間には小さな石が詰められています
割石を用いて積み上げる「打ち込みハギ」の石垣。一段ずつきれいに横目地が通る「整層積み」の部分と、やや乱れた部分があります。
大手門正面玄関
「大手一の門」「大手二の門」の近くの石垣。大きな石が鏡石
表面を美しく加工した石を緻密に組み合わせる「切り込みハギ」という積み方を使用した石垣。見た目のアクセントとして配された鏡石という2m以上の大きな石も見られます。
本丸
二段になっている本丸の石垣
石垣の外側にさらに石垣を積んで崩れないよう保護している「ハバキ石垣」。当時の知恵と技術がうかがえます。
二の丸
長方形に整えられた石を交互に積んだ「算木積み」の隅角
三の丸
「算木積み」を活用した高さ20m以上の石垣
南東部
大きさや形の違う自然の石を組み合わせた「野面積み」の石垣
魅力3:国の重要文化財に指定された「大手一の門」「大手二の門」
写真左手の門が「大手一の門」、右手の門が「大手二の門」
丸亀城にある2つの正門「大手一の門」と「大手ニの門」。登城するとき最初に入る門を大手二の門、2つ目の門を大手一の門と呼びます。 大手一の門、大手二の門は1670年に建てられたもので、国の重要文化財に指定されています。
大手二の門は2本の親柱に屋根を載せた高麗門。一方で大手一の門は門扉の上に櫓(やぐら)が付いている2階建ての門です。木材として太いケヤキが使用されており威厳が感じられます。
大手一の門と大手二の門の間には石垣で囲んだ四角い広場がありますが、これは「枡形(ますがた)」と呼ばれ、敵を城郭に侵入させないための迎撃空間です。出陣する武者を一堂に集める時にも利用されていました。
また、大手一の門は藩士が太鼓を鳴らして時刻を知らせていたことから、「太鼓門」という別名も。現在も太鼓は毎日正午の時間に打ち鳴らされているので、タイミングが合えばぜひ耳を澄ませてみましょう。
魅力4:県指定文化財の「藩主玄関先御門」
京極氏の屋敷の表門にあたる「藩主玄関先御門」
山﨑氏の後に城主を務めた京極氏が建てた「藩主玄関先御門」。藩主が暮らし、生活を行う場となった屋敷の表門で、県指定文化財です。一対の親柱と控柱で門扉を支え、屋根が切妻造りである薬医門型を採用しているのが特徴です。
魅力5:日本一深い井戸のある「二の丸」
二の丸の井戸
城内で2番目に標高の高い「二の丸」。現在広場となっておりますが、真ん中に井戸が残されています。この井戸は日本一深い井戸と言われており、水面が三の丸の北石垣の中央部の高さに相当し、そこから水深が30m以上もあります。絵図によると井戸の深さは約65mあるそうです。
また、広場には桜が植えられており、春になるとお花見スポットとして多くの人が訪れる場所となっています。
魅力6:京極氏の家紋が描かれた御城印
京極氏の家紋・四つ目結 ※画像の二次使用禁止
丸亀城では最後の城主・京極氏の家紋である「四つ目結」が描かれた御城印を手に入れることができます。丸亀城の天守にある売店で購入でき、価格は1枚300円。同じく売店で販売しているオリジナルの御城印帳は、これから御城印を集めたい方にもぴったりですよ。
丸亀城の歴史
丸亀城の築城に関わる大きな出来事として、以下の3つがあります。
●生駒親正(いこま ちかまさ)・一正(かずまさ)父子による築城ののち廃城
●山﨑家治(やまざき いえはる)による再築
●京極氏が藩主に任命される
丸亀城の歴史を知ることで、より観光を楽しむことができますよ。
生駒親正・一正父子による築城ののち廃城
丸亀城は守護大名である細川勝元の家臣・奈良元安(なら もとやす)が、現在丸亀城が築城されている亀山に砦を築いたのが始まりと言われています。
1532~55年の間、砦は奈良氏の支配下にあったと言われていますが、土佐を統一した長宗我部元親(ちょうそかべ もとちか)によって讃岐が侵攻され、砦は長宗我部氏のものに。
しかし、豊臣秀吉の四国攻めによって長曽我部氏が降伏し、丸亀城のある讃岐は秀吉の支配下になりました。
1587年に豊臣秀吉の家臣である生駒親正が讃岐の地を治めることとなり、1597年に息子の一正とともに丸亀城の築城に着手します。
やがて丸亀城は完成しましたが、1615年に一つの大名家は一国に一つの城しか建設できない「一国一城令」が発令され、丸亀城は廃城となります。さらに、生駒氏はお家騒動が理由で1640年に土地が没収され、出羽国由利郡矢島(現・秋田県由利本荘市)に移ることになったのです。
山﨑家治による再築
生駒氏が出羽国へ移ったあとは、山﨑氏の時代になります。島原の乱後に天草の統治に努めた山﨑家治は、約5万石の土地を与えられ、西讃岐の領主となります。
一国一城令によって廃城となった丸亀城でしたが、「丸亀藩」が成立したことにより1643年に山﨑家冶が江戸幕府からの指令で丸亀城の再築に着手しました。
しかし、建設途中の1657年に山﨑氏は絶家してしまいます。
京極氏が藩主に任命される
山﨑氏の絶家後、京極高和という播磨龍野城(兵庫県)の城主が丸亀藩の藩主として赴任し、丸亀城の建設工事を引き継いで1660年に今の天守を完成させました。京極氏は7代にわたって城主を務めます。
明治時代に入り、1869年に版籍奉還が行われると京極氏の時代が終止符を迎え、丸亀城は陸軍省の所轄となりました。
現在の丸亀城は丸亀市が運営する「亀山公園」の一部として、一般に開放されています。
丸亀城の基本情報・アクセス・駐車場
●住所 :香川県丸亀市一番丁
●開館時間:9:00〜16:30
●休館 :無休
●入場料 :大人200円/小・中学生100円
●アクセス:JR予讃線「丸亀」駅から徒歩15分
●駐車場 :丸亀城内資料館南側(50台/無料)、市民ひろば駐車場(22台/無料)
※ほか有料駐車場あり。詳細は公式サイトをご確認ください。
●公式サイト:丸亀市公式ホームページ
※2023年12月時点の情報です。
丸亀城の石垣崩落と修復プロジェクト
崩落した丸亀城南西部の石垣(写真提供:丸亀市教育委員会)
2018年、台風や豪雨によって丸亀城南西部の石垣が崩落しました。石垣崩落による観光への影響はありませんが、2023年12月現在も修復作業が行われている状況です。
丸亀市は石垣修復プロジェクトとして、早く美しい状態に戻せるよう支援金を募っています。支援方法として以下の3つがありますので、ご興味のある方は丸亀城公式サイトの石垣修復情報ページをご参照ください。
●ふるさと丸亀応援寄附金(ふるさと納税)
●がんばれ! 丸亀城応援募金(募金箱による募金)
●がんばれ 丸亀城支援金(銀行振込)
丸亀城周辺のイベント情報
丸亀城周辺で定期的に開催されているイベント情報を簡単に紹介します。
桜祭り(4月1日〜4月中旬頃開催)
満開の桜と丸亀城
約700本のソメイヨシノが咲く亀山公園のお祭り。ライトアップもされ、夜桜を楽しむことができます。
■参考サイト:丸亀城桜まつり(2019年)
丸亀お城まつり(毎年5月3日・4日開催)
丸亀お城まつりはゴールデンウィーク恒例のイベント(写真提供:一般財団法人 丸亀市観光協会)
70年以上の歴史がある丸亀市最大のお祭りです。市民パレード、ステージイベント、丸亀の獅子舞競演などの大会が開催されています。
■公式サイト:丸亀お城まつり
丸亀城天守カラーライトアップ(不定期開催)
2022年のライトアップのようす
丸亀城では年に数回カラーライトアップが行われています。2022年(令和4年)はウクライナの平和支援啓発や認知症啓発などをモチーフにしたライトアップが行われました。
■公式サイト:令和4年度丸亀城天守カラーライトアップ予定表
周辺観光情報
丸亀城以外の丸亀市の観光地についてまとめていますので、旅行計画に悩んでいる方はご参考にしてみてくださいね。
中津万象園
園内の池には八つの島が配されていて、それらを橋がつないでいます
京極氏2代目の丸亀藩藩主・京極高豊(きょうごく たかとよ)侯が築庭した庭園。京極氏先祖の地である滋賀の琵琶湖をモチーフにした八景池が見どころです。
■住所:香川県丸亀市中津町25-1
■公式サイト:中津万象園・丸亀美術館
本島(ほんじま)
タイムスリップしたかのような本島の風景
丸亀港からフェリーで約35分で行くことができる塩飽(しわく)諸島の島。塩飽諸島が明治維新まで自治領であったことを伝える塩飽勤番所をはじめ、さまざまな文化財が現存しています。
■参考サイト:昔のままの街並みを残す島(本島)(香川県)
太助灯籠(たすけとうろう)
1838年に完成した太助灯籠(左奥)。夜になる明かりが灯されます
丸亀港のシンボルとなっている灯籠。かつて金毘羅山(こんぴらやま/こんぴらさん)に参詣する人々がこの灯籠を目印に入港したといわれています。
■住所:香川県丸亀市 西平山町270
■参考サイト:太助灯籠(一般財団法人 丸亀市観光協会)
ボートレースまるがめ
一般席のほか、指定席やグループシート、デッキで迫力のボートレースを観戦できます(写真提供:BOAT RACE まるがめ)
丸亀市にあるボートレース場。毎年重賞レースである京極賞が開催されています。ボートレース初心者の方はスマイル君のボートレース講座で楽しみ方をチェックしてみて。
■住所:香川県丸亀市富士見町4-1-1
■公式サイト:BOAT RACE まるがめ
MIMOCA 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
丸亀市にゆかりのある画家・猪熊弦一郎の協力のもとに創設した美術館。約2万点におよぶ猪熊作品が所蔵されており、企画展も定期的に開催されています。
■住所:香川県丸亀市浜町80-1
■公式サイト:MIMOCA 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
丸亀のご当地グルメと伝統工芸
丸亀にはグルメや伝統工芸品も多くあります。食事やお土産を選ぶヒントになるかもしれませんので、ぜひご覧ください。
ご当地グルメ
さぬきうどん
「純手打うどん よしや」のうどん(写真提供:一般財団法人 丸亀市観光協会)
全国的に有名なさぬきうどんは香川県が本場。基本はネギやしょうがなどでシンプルにいただきますが、お店や好みによってトッピングや食べ方はいろいろ。うどん県民が選ぶ「うどん総選挙」第1位に輝いたことのある「純手打うどん よしや」が丸亀市にあります。
骨付鶏
豪快にかぶりつきたい骨付鶏(写真提供:一般財団法人 丸亀市観光協会)
丸亀の代表的なご当地グルメ。ニンニクが調合されたスパイスで味つけをした骨付きの鶏もも肉をオーブンでじっくり焼き仕上げます。ジューシーで香ばしい一品。
しょうゆ豆
食感も楽しいしょうゆ豆(写真:一般財団法人 丸亀市観光協会)
煎ったそら豆に醤油や砂糖、唐辛子を混ぜた調味液に漬け込んだ香川県の郷土料理。お酒の肴としてよく食べられています。
おいり
おいりの可愛らしい見た目はお土産にもぴったり(写真提供:一般財団法人 丸亀市観光協会)
淡いピンクや黄色、緑色をした、もち米と砂糖が原材料の、ふわっとした軽い食感が特徴の餅菓子。西讃岐では嫁入り菓子として欠かせないものでしたが、現在はひな祭りや出産祝いなどのシーンでも食べられています。
伝統工芸品
丸亀うちわ
丸亀うちわは国の伝統的工芸品にも指定されています(写真提供:一般財団法人 丸亀市観光協会)
一本の竹から柄と骨が作られているうちわで、江戸時代に製造技術が確立した伝統工芸品のうちわです。プラスチックうちわも含めると年間約1億本以上を生産しています。
まとめ
丸亀城は江戸時代から現存している大変貴重なお城です。国内最大級の石垣を誇り、多くの観光客を魅了しています。桜の季節やゴールデンウィークには祭りもあるため、開催時期に合わせて観光しに行くのもいいでしょう。
丸亀市にはほかにもさまざまな観光名所があるので、歴史も観光も満喫したい方には特におすすめです。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
Text:Koki Noda/Ayano Enokido Edit:Erika Nagumo
写真:(特記ないもの)PIXTA
参考文献:『ビジュアル事典 日本の城』(三浦正幸監修/岩崎書店)、『これだけは知っておきたい 教科書に出てくる日本の城 西日本編』(これだけは知っておきたい 教科書に出てくる日本の城編集委員会/汐文社)、『城105!2巻』(日本城郭協会監修/フレーベル館)、各種パンフレット