愛媛県松山市の中心部に建つ「松山城」。天守、櫓、門、塀を含め21棟の建造物が国の重要文化財に指定されており、日本の100名城、美しい日本の歴史的風土100選にも選ばれた江戸時代を代表する城のひとつです。
2020(令和2)年にはトリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!日本人に人気の日本の城ランキング 2020 第3位」にも選定されました。また、愛媛県には、今治城、湯築城、大洲城、宇和島城と日本100名城に選ばれたお城がいくつも存在しています。
松山城周辺では地域のイベント開催されることも多く、街のシンボルとして市民に愛されています。この記事は、松山城の歴史と見どころ、イベント情報やアクセス情報をご紹介します。
TOP写真:M・H/PIXTA
松山城の基本情報
住所:愛媛県松山市丸之内1
時間:<天守>
●12〜1月 9:00〜16:30
●2〜7・9〜11月 9:00〜17:00
●8月 9:00〜17:30
定休:12月第3水曜
料金:大人 520円
子ども 160円
公式サイト:松山城
※2022年11月時点の情報です。
1. 松山城の歴史-江戸時代に築かれた天守が現存!
1-①初代城主・加藤嘉明の時代(築城)
愛媛県のシンボル・松山城が築城されたのは、400年ほど前の1627(寛永4)年。安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した、加藤嘉明(かとう よしあき)という戦国武将が築きました。
加藤嘉明は幼少の頃から優れた素質があり、成長後は羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)の家臣となりました。20歳のときに起こった、秀吉VS柴田勝家の合戦「賤ヶ岳の戦い(しずがたけのたたかい)」では大活躍。ほかにも武功をあげた6人の兵と並んで「賤ヶ岳の七本槍」と呼ばれるようになります。
やがて関ヶ原の戦いでも武功も納めた加藤嘉明は、20万石の武将となり、1602(慶長7)年に松山城の築城を開始します。そうして25年後に完成したのが松山城です。
松山城は標高132mの「勝山」に築城されました(写真:kazukiatuko/PIXTA)
1-②2代城主・蒲生忠知の時代(二之丸完成)
1602(慶長7)年に完成した松山城ですが、実は完成の直前、築城を命じた当の本人である加藤嘉明が幕府の命令で会津に移ってしまっていました。代わりに松山の地を治めることになったのは、蒲生忠知(がもう ただとも)という大名。忠知の時代に松山城の二之丸まで完成します。しかし忠知は参勤交代の途中で病気により逝去。その後は松平定行が松山城が城主となりました。
二之丸の跡地は「二之丸史跡庭園」として整備されています(写真:いよ観ネット)
1-③3代城主・松平定行の時代(改築)
松平定行が城主となってからは、本壇(天守など重要は建造物が集合するエリアのこと)の改築が始まります。3年かけて三重の連立式天守が完成しました。連立式天守とは、メインとなる天守の周囲に小天守(こてんしゅ)や櫓(やぐら)を配置した形式のこと。防衛力が高いのが特徴です。
松山城はその後、天災や戦火の影響で幾度か再建されています。しかし現在建つ天守は1854(安政元)年に完成したもので、150年以上の歴史があります。江戸時代以前に築城され、現代まで残っている天守は、全国に12カ所しかなく「現存十二天守」と呼ばれていますが、松山城もそのひとつです。
現代なで残る松山城の連立式天守(写真:いよ観ネット)
2.松山城の見どころ
松山城は、天守、三ノ門南櫓、二ノ門南櫓、一ノ門南櫓、乾櫓、野原櫓、仕切門、三ノ門、二ノ門、一ノ門、紫竹門、隠門、隠門続櫓、戸無門、仕切門内塀、三ノ門東塀、筋鉄門東塀、二ノ門東塀、一ノ門東塀、紫竹門東塀、紫竹門西塀と実に21棟もの建造物が国の重要文化財に指定されています。
天守
松山城の「天守」は黒船来航の翌年に完成した、江戸時代最後の城郭建築とされています。城郭建築とは敵の侵攻を阻み、要塞のように城を建築する様式のことで主に安土桃山時代に発展しました。「現存12天守」の中で唯一、瓦に徳川家の家紋「葵の御紋」が記されています。現存12天守には松山城のほかに、姫路城や松江城などが含まれ、江戸時代以前に建造された天守を有する城郭の一つです。
松山城天守閣
天守・小天守・隅櫓(すみやぐら)の構成は連立式天守と呼ばれ、松山城はその様式を用いた平山城の代表的な城としても知られています。高さは、しゃちほこを含めると21mを超え、天守の標高は160mを超えます。
登り石垣
日本の城ではよく見られる石垣ですが、松山城のものは全国的にもめずらしく貴重なものとされています。「登り石垣」と呼ばれ、ふもとから山頂の天守まで2本の石垣が連なって作られており、この方法によって山腹から迫る敵の侵攻を防いでいます。松山城では南側の石垣は残っていますが、北側は一部分を除いて壊されてしまっています。12天守の中でも登り石垣を見られるのは、松山城と滋賀県にある彦根城だけです。
松山城の登り石垣
松山城二之丸史跡庭園
「二之丸史跡庭園」は天守の南西部に位置する日本庭園です。園内は大きく「表御殿跡」と「奥御殿跡」に分けられます。
表御殿跡は「柑橘・草花園」で、日本全国のカンキツ類や植物を用いて昔の部屋の間取りを表現しており、庭園の北に位置しています。
一方、奥御殿跡では西側に水や芝生で昔の部屋の間取りを表す「流水園」、東側に岩や滝などで侘び寂びを表現した「林泉庭」があります。
松山城二之丸史跡庭園の流水園
そのほかにも、当時実際に使われていた井戸跡や、櫓、大書院の跡地を見ることができます。また、園内には「勝山亭」「聚楽亭」「観恒亭」の3つの茶室も設けられています。
二之丸史跡庭園には四季折々の花々が植えられているほか、「恋人の聖地」としても人気で、年間500件近くの結婚式の前撮りが行われています。
城山公園堀之内地区
堀之内地区は本丸広場(城の前の広場)と同様、慶長10年ごろに完成したと言われていて、「三之丸」とも呼ばれています。現在も南と西側は堀に囲まれています。当時は1つの街として機能しており、約60名の大名が住む御殿や米蔵、会所などが設けられていました。明治以降は軍が所有し、兵舎が建てられていました。
戦後は野球場や競輪場などスポーツ施設を中心に開発が進められましたが、現在は都市公園として整備され、3つの広場や市民会館、愛媛美術館、NHKの放送局などが存在します。
城山公園
ロープウェイ・リフト
左がリフト、右がロープウェイ
松山城には東雲口登城道など4つの徒歩での登城道がありますが、ふもとから天守へつながる長者ヶ平までロープウェイとリフトが運行されています。
ロープウェイは定員47名で所要時間は約3分。10分間隔で運行されています。
リフトは1人乗りで所要時間は約6分。
それぞれ天守へ登る見事な景観を楽しむことができます。標高が高い松山城ならではのアトラクションです。
【ロープウェイ・リフト基本情報】
時間:<ロープウェイ>
●12〜1月 8:30〜17:00
●2〜7・9〜11月 8:30〜17:30
●8月 8:30〜18:00
<リフト>
●通年 8:30〜17:00(12〜1月)
料金:大人 片道270円、往復520円
子ども 片道140円、往復260円
※松山城天守観覧券は別途購入の必要あり
定休:無休
※松山城天守は12月第3水曜休
公式サイト:松山城 ロープウェイ・リフト
※2022年11月時点の情報です。
松山城マスコット「よしあきくん」のお散歩
松山城築城400年を祝うべく誕生した、松山城公式キャラクターの「よしあきくん」。松山城建築に大いに貢献した加藤嘉明にちなみ、名付けられました。ちょびひげがチャームポイントで散歩が趣味と可愛い一面がある一方、特技はやり投げと男らしく、将軍らしい一面も。夏休みや年末年始などの週末を中心に本丸広場周辺をお散歩しているので、見かけたらぜひ、一緒に写真を撮ってもらいましょう。
タイムスケジュール:よしあきくんお散歩スケジュール
3.松山城周辺のイベント
4月:松山春まつり(お城祭り)
松山春まつりの大名武者行列
毎年4月上旬の週末を中心に開催される「松山春まつり」。本丸広場と堀之内公園が主な会場となり、歌謡大賞、野球拳全国大会、お茶会、生花展、グルメフェスタなどが開催されます。また、大名武者行列が街を練り歩き、大いに盛り上がります。
公式サイト:松山市 松山春まつり(お城まつり)/2023
5月:二之丸薪能(にのまるたきぎのう)
毎年5月に、二之丸史跡庭園内の特設能舞台で開催されるイベント(※雨天時は松山市民会館中ホールでの開催)。松山城の石垣をバックにして薪能(たきぎのう)が催されます。薪能とは、野外に設置された舞台で、かがり火を灯りに演じられる能のこと。二之丸薪能では過去、「清経(きよつね)」、「玉葛(たまかずら)」などの演目が上演されました。
公式サイト:二之丸薪能
8月:松山野球拳おどり(旧・松山まつり)
55年以上の歴史がある松山野球拳おどり。写真は松山まつりの頃(写真:いよ観ネット)
8月に開催される「松山野球拳おどり」は街全体で行われるお祭りです。松山に名物のおどりを作りたい、という思いから1966(昭和41)年より開催されており、2022年に「松山まつり」から「松山野球拳おどり」に改称。さまざまなチーム(=「連」)がそれぞれオリジナルの野球拳おどりを披露する2日間は、松山市内が熱気に包まれます。
公式サイト:松山野球拳おどり 公式サイト
11月:二之丸光の庭園(ライトアップ・イルミネーションイベント)
恋人の聖地・松山城二之丸史跡庭園では、紅葉の時期にライトアップイベントを開催。紅葉がライトアップされるほか、園内の通路が光で装飾されます。期間限定の幻想的な夜の庭園散歩を楽しんでみてはいかがでしょうか。
4.松山城へのアクセス
最寄駅:伊予鉄道 大街道駅
JR松山駅からのアクセス
【松山駅】ー 徒歩(3分)
→【松山駅前駅】ー伊予鉄道市内線5系統 / 道後温泉方面
→ 【大街道駅】 → 徒歩(約5分)で松山城ロープウェイ乗り場到着
松山市駅からのアクセス
【松山市駅】ー 伊予鉄道市内線3系統 / 道後温泉方面
→ 【大街道駅】 → 徒歩(約5分)で松山城ロープウェイ乗り場到着
松山空港からのアクセス
【松山空港】 ー リムジンバス/道後温泉駅前方面
→ 【大街道駅】 → 徒歩(約5分)で松山城ロープウェイ乗り場到着
車でのアクセス
最寄りIC:松山自動車道 松山IC
松山城周辺の駐車場:松山城駐車場(喜与町駐車場)
松山の街を見守る江戸時代の城
松山城は標高160mの場所に建っていることもあり、素晴らしい景色を楽しむことができる城。夜景はもちろん、よく晴れた日には西日本最高峰の石鎚山(1,982m)や瀬戸内海に浮かぶ島々なども見えます。松山城まで訪れた際は、ぜひ天守の中まで見学してみてはいかがでしょうか。
松山城天守閣からの絶景