栃木県の南東部、茨城県との県境にある小さな町・益子町(ましこまち)は、日本有数の陶器の町。
益子の一大イベントといえば、毎年ゴールデンウィークと11月に開催される「益子陶器市」。伝統的な益子焼をはじめ、全国の作家によるの作品が大集合し、来場者は春秋あわせて約60万人を数えます。
益子陶器市の魅力や楽しみ方、陶器市デビューする方向け情報もご紹介。
協力:益子町観光協会
TOP画像:tsumuz17さん
※この記事に掲載の情報は2023年4月時点のものです。諸事情により変更となる場合があります
※2024年10月、一部情報を更新しました
1. 益子陶器市ってどんなイベント?
益子陶器市には作家さんのテントも多く出展します
益子陶器市は、陶器販売店が立ち並ぶ「城内坂通り・里山通り」を中心に、数日間にわたり開催される陶器のイベントです。窯元・販売店・作家テントなどが出展し、益子の町全体がお祭りのような状態に。
全国の窯元や各地の陶芸作家も参加するので、伝統的な益子焼だけではなく、多種多様な焼き物が益子の町に集います。普段出合えないような器もたくさん。多様な焼き物を一度に楽しめるのが魅力です。
過去の益子陶器市での購入例(写真提供:Instafram shokudo_kamoneさん)
通常価格よりも2割から5割ほどお得に販売されている作品もあり、日常使いの器を大量購入したり、気になっていた人気作家の焼き物を手に入れるには絶好の機会です。
地元グルメや作家さんとの交流も楽しめる
益子陶器市では、焼き物だけではなくガラスや木工、地元農産物や特産品の販売も行なっています。グルメテントも出店しているので、食べ歩きをしながらぶらぶら散策するのもアリ。
地元の飲食店では益子焼の器を使って、料理を提供してくれるところもありますよ。
また、作家さんとの交流ができるのも陶器市の魅力のひとつです。器ができたストーリーや思いを聞くことで、買ったお皿をより一層大切にしたいと思えますよね。
益子陶器市は60年以上の歴史あり
益子焼窯元共販センターのそばに並ぶテント
益子陶器市は益子焼(ましこやき)の産地である栃木県益子町で、1966年(昭和41年)から開催されています。益子焼窯元共販センターで開かれたのがはじまりです。
陶器市は当初、益子町の主要な陶器販売店で分散して行われていましたが、1982年(昭和57年)に「益子大陶器市」として一本化され、現在のような大規模なイベントになりました。
現在の益子陶器市ではいろいろな色・形・質感の器が並びます
現在では、春はゴールデンウイーク、秋は11月3日前後の年2回開催されています。約50の販売店と約600のテントが立ち並び、春秋あわせて約60万人の観光客が全国から訪れています。
入門者向け【益子陶器市ガイド】
益子陶器市へ初めて遊びに行く人に向けて、楽しみ方・見どころをさっくり紹介します。
焼き物素人でも大丈夫!
さまざまな作品が並び、歩いているだけでも楽しい益子陶器市
「焼き物は好きだけれど、詳しいわけではない」という人も、お祭り感覚で参加OK。ぶらぶらしながら買い物が楽しめるから、気軽に楽しめます。
作家さんと直接話すこともできるので、焼き物についての疑問があれば聞いてみましょう。作品の特徴や作り手の思いを聞くことで、大切にしたいと思える焼き物に出合えるかもしれません。
まずはメインストリートへ
城内坂通りの街並み
益子陶器市は街全体が会場といってもいいくらい広範囲にわたって開催していますが、益子駅から東に進んだところにある「城内坂通り・里山通り」がメインストリートです。通称「やきもの本通り」とも呼ばれ、左右には窯元や販売店が並んでいます。
広場や小道、丘の上にある陶芸メッセなどにも多くの作家テントが出展。見逃してしまいそうな路地裏にもテントがあるので、地図を見ながら散策しましょう。
グルメテントや屋台もあるので、疲れたら休憩しながらゆっくりまわるのがおすすめです。
気軽に買える焼き物がたくさん
こちらは1000円〜2000円で購入できる器
陶器市では通常よりも低価格で販売されている焼き物も多いため、気軽に買えるお皿やカップがたくさんあります。モノによっては数百円で買える商品も。
益子焼ならではの丈夫で味わい深い焼き物がお得に買えるので、日常使いの器としてまとめ買いしてもいいですね。
作家さんの作品も普段の価格から値下げしていたりB品が販売されていたりするので、個性的な作家モノの焼き物を普段の生活に取り入れるチャンス。
見る・買うだけじゃない! 体験できるワークショップ
ろくろでの益子焼制作の様子(写真提供:[公社]栃木県観光物産協会)
益子陶器市では焼き物を見たり買ったりするだけではなく、陶芸体験や絵付け体験ができるワークショップに参加するのもおすすめ。
英語対応の場所もあるので、海外の方も気軽に体験できます。体験を通して、益子焼ならではの土の質感を楽しんだり、オンリーワンの作品作りを楽しんでみては。
所要時間の目安は1時間半程度。手びねりや電動ろくろで焼き物作りができます。ただし、陶器市期間中は体験を中止していたり混雑していたりする場合もあるので事前に各施設の公式サイト・公式SNS等でご確認を。また、益子陶器市マップでも陶芸体験を開催している工房を確認できます。
2. 益子陶器市と一緒に楽しみたい益子町のあれこれ
陶器市を楽しんだあとは益子の町を散策するのはいかがでしょう。ここではカフェ、お蕎麦屋、いちご農園、道の駅について触れていますが、このほかに素敵な雑貨屋さんもたくさんあります。
カフェめぐり
益子町のカフェ(写真提供:[公社]栃木県観光物産協会)
益子町には、素敵なカフェがたくさんあります。古民家カフェや益子焼の器で地元の食材が味わえるカフェなど、どのお店も個性豊か。カフェマップを参考にめぐるのもオススメです。
《益子町のカフェ情報》
まし子さんとめぐるましこのcafe(カフェマップ)2021版/益子町観光協会
そばを味わう
益子はそばも名産品のひとつ。益子産の地粉を使った十割蕎麦が楽しめるお店も人気です。
《益子町のそば情報》
益子のそば・うどんマップ/益子町観光協会 2021版
いちご狩り(12月〜5月中旬)
いちご狩りは例年12月から益子陶器市が終了する5月中旬頃まで楽しめます ※期間は施設により異なります(写真提供:[公社]栃木県観光物産協会)
陶器市のメインストリートから益子駅の反対側に向かうと、いちご狩り体験ができる農園がいくつもあります。栃木名産のとちおとめなど、真っ赤に熟した採れたていちごを味わってみてはいかがでしょうか。
益子駅のお隣・北山駅の近くには益子観光いちご団地
や吉村農園、「道の駅ましこ」の前には「MASHIKO STRAWBERRY FARM」、そのほかにも多くの農園があります。
道の駅ましこ
道の駅ましこは建築も必見。2020年には日本建築学会賞を受賞しています。設計を担当したのは、国内外のさまざまなアワードで受賞してきたマウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏氏(写真提供:[公社]栃木県観光物産協会)
陶器市会場から車で約10分のところにある「道の駅ましこ」では、新鮮な農産物やジャム、ピクルスなどの加工品が購入できます。「峠の釜めし」でおなじみ、益子焼の土釜のミニサイズバージョンに入ったクレームブリュレも人気です。
3. 益子焼はどんな焼き物?-陶器市に出かける前におさらい
器探しがもっと楽しくなる、益子焼きの歴史・特徴をご紹介します。キーワードは「日用品としての美しさ」「型にはまらない自由さ」です。
益子焼の歴史
益子では古くは奈良時代から焼き物作られてきましたが、今日の益子焼の始まりは約170年前。江戸時代末期の1852年(嘉永5年)に、笠間(現在の茨城県笠間市)で作陶を学んだ大塚啓三郎(おおつか けいさぶろう)が益子で窯を築いたのが始まりとされています。
以来、益子は鉢や水がめ、土瓶といった日用品の産地として発展し、益子焼は茨城県の笠間焼と並ぶ関東を代表する焼き物になりました。
過去の益子陶器市での購入例(写真提供:Instagram tsumuz17さん)
大正時代に入ると陶芸作家・濱田庄司(はまだ しょうじ)が益子に移り住み、哲学者・柳宗悦(やなぎ むねよし)らとともに民藝運動(※1)を推し進めます。益子焼は「用の美」を追求した芸術品として注目を集めました。
そして濱田庄司の自由な作風は多くの門下生を集め、個性的な陶芸をめざす若者が益子に集まるようになりました。
益子町で陶芸家として活動を続けた濱田庄司は1955年に、濱田の門下生であった島岡達三(しまおか たつぞう)は1998年に、人間国宝に認定されています。
※1 民藝運動(みんげいうんどう):職人の手仕事により生み出された日常の生活道具には、美術品に負けない美しさがある、という考えのもと行われた生活文化運動のこと(参考:日本民藝協会HP)
益子焼の特徴
益子焼は、土の質感が伝わる素朴さとぽってりとしたフォルムが特徴の焼き物で、国の伝統工芸品にも指定されています。
益子焼の作品例
益子の陶土は、粘り気が少なく気泡も入りやすいため、細かい細工に向いていないことから厚みのあるものが主流です。
また、益子でつくられる釉薬(※2)は土との相性が良く、仕上がる作品は温かみがあり味わい深いものになります。代表的な釉薬は、焼き上がりの黒っぽさをカバーする白色の糠白釉(ぬかじろゆう)、レトロ感のある飴色の飴釉(あめゆう)など。
「刷毛目(はけめ)」といった装飾技法や、登り窯で焼き上げる伝統的な工法があわさることで、より魅力的な焼き物が生み出されています。
※2 釉薬(ゆうやく/うわぐすり):焼き物の仕上げに使われる液体で、灰などの原料を水に溶かして作られます。焼くとガラス質に変わりツヤが出て、焼き物が水に強くなります(参考:とちぎふるさと学習/栃木県教育委員会)
火が入れられた登り窯(写真提供:[公社]栃木県観光物産協会)
益子焼の魅力
益子焼はおもに生活のなかで使う日用道具として作られているため、器であればどんな料理にもあわせやすいのが魅力。器のほかにコーヒーカップや急須など、さまざまな作品が作られています。
過去の益子陶器市での購入例(写真提供:Instagram tsumuz17さん)
和洋中問わず使えるシンプルな見た目と扱いやすさで、色味にもやわらかさがあり、食材の邪魔にならず脇役として引き立ててくれます。手になじむ質感は、家庭料理の温かさを増してくれる効果も。
また、ほかの産地の焼き物と比べると濱田庄司の民藝運動の影響もあり、型にはまらず自由な作品が多く見られ、バリエーションが豊富なのも魅力のひとつです。
過去の益子陶器市での購入例(写真提供:Instagram komatsuyuka_22さん)
4. 益子陶器市2024秋(第110回)の開催概要
2024年秋の開催で110回目の開催となる益子陶器市。例年同様に11月上旬の開催予定です。例年1日目が混雑するとのこと。混雑を避けるなら2日目以降の来場がおすすめです。
日時
2024年11月2日(土)〜11月5日(火)
9:00〜17:00(最終日のみ16:00)
※各店舗、テントにより異なります
会場
栃木県益子町の町内各所
※観光案内所は以下の3カ所があります。
●益子町観光協会(真岡鐵道「益子駅」内)
●総合案内所
●陶芸メッセ入口案内所
駐車場
「益子陶器市2024秋」期間中は、町内各所の駐車場が利用可能です。ただし混雑が予想されますので、茨城交通の「関東やきものライナー」や鉄道など、公共交通機関での移動も検討しておきましょう。
●益子駅西駐車場(90台)
●益子町役場(150台)
●益子焼窯元共販センター北側町営駐車場(320台)
●町民会館(140台)
●益子中学校(300台)※土日祝のみ利用可能
ほか
※益子陶器市開催期間中は駐車場が混雑することがあります
※有料駐車場と無料駐車場があります
益子陶器市のエリアマップ
益子陶器市の公式サイトで、第109回(2024年春)のエリアマップを確認できます。※第110回(2024年秋)のマップは決まり次第の公開
当日もすぐ開けるように、スマートフォンにダウンロードしたり、プリントアウトしておくと便利です。
5. アクセス
車・バス・電車どの交通機関を利用しても、東京から約2時間半あればアクセス可能です。
電車でのアクセス
①
「東京駅」ほかより東北新幹線またはJR東北本線(JR宇都宮線)に乗車。「小山駅」で下車し、JR水戸線に乗り換え。「下館駅」で下車し、真岡鐡道に乗り換え。「益子駅」で下車。
②
「秋葉原駅」ほかよりつくばエクスプレスに乗車。「守谷駅」で下車し、関東鉄道・常総線に乗り換え。「下館駅」で下車し、真岡鐡道に乗り換え。「益子駅」で下車。
バスでのアクセス
「秋葉原駅」ほかより関東やきものライナーに乗車。「益子駅」で下車。
時刻表・詳細は茨城交通 関東やきものライナーをご確認ください。
車でのアクセス
①
東北自動車道「栃木都賀(とちぎつが)JCT」から北関東自動車道へ。「真岡IC」を下り、国道294号または国道121号経由で益子町へ
②
常磐自動車道「友部JCT」から関東自動車道へ。「桜川筑西(さくらがわちくせい)IC」を下り、 県道41号で益子町へ
ナビに行き先を入れるなら、中心地にある益子焼共販センターがよいでしょう。
有料駐車場は中心地に近いほど早く満車になってしまうので9時前には着けるとスムーズです。陶器市の周辺の道は混雑しているので、時間に余裕を持って向かいましょう。
益子町観光協会公式HPのアクセスページも併せてご確認を。