真岡鐵道と「SLもおか」
8:00〜10:30 真岡鐵道へ向けて都心を出発
10:35 下館駅で「SLもおか」に乗車!栃木県益子へと向かう
11:40 益子駅前の観光案内所でマップをもらい街歩き!
12:00「城内坂通り」で益子名物のそばをいただく
13:00「益子陶芸美術館」で陶芸家たちの作品を鑑賞
14:00 お気に入りの益子焼を購入!「益子焼窯元共販センター」へ
15:01 益子駅から帰路へ。真岡駅までSLもおかに乗車
15:19 D51などのSLが展示されている「SLキューロク館」を見学
16:32 名残を惜しみつつ、都心への帰路につく
「SLもおか」の魅力をインタビュー
まとめ

都心から日帰りで足を伸ばせる北関東エリアで、SL(蒸気機関車)に乗車できることを知っていますか?「SLもおか」は栃木県の真岡(もおか)市を中心に、おもに週末と祝日に運行している臨時列車です。

春になると沿線を彩る桜や菜の花の中を走るSLの姿をとらえに、鉄道マニアだけでなく写真愛好家が集まってくることでも知られています。このSLが走る真岡鐵道の沿線には、益子焼で有名な益子町もあります。

今回は、日ごとに暖かくなってくる春先におすすめしたい、都心から日帰りで楽しめるSL乗車と焼き物の旅を紹介します。

栃木県 < 益子

益子陶器市の購入例

【益子陶器市2024秋】初心者ガイド&益子焼の基礎知識解説 毎年春と秋の年2回開催される「益子陶器市」は、「益子焼」をはじめ全国各地のさまざまなな陶器の作品が集うイベント。バスや鉄道でアクセス可能。お値打ち商品や作家ものの器を探せる、器付き必見の陶器市です。

伝統工芸

真岡鐵道と「SLもおか」

SLもおかと田園風景

沿線に田園風景が広がる真岡線(写真提供 : 真岡鐵道)

真岡鐵道が開設されたのは1912年のこと。戦後には利用客が減り、廃線が検討されますが、地域住民や自治体などが検討を重ね、1988年に第三セクターの鉄道会社として「真岡線」が開業しました。

真岡鐵道が運行しているのは、茨城県下館駅から栃木県の茂木駅までの約42km、17駅。乗車時間は全線乗っても70分ほど。有人駅は下館、真岡、益子、茂木の4駅で、残りは無人駅です。運行は1時間に1〜2本で、1日に片道20本あまりが運行しています。

観光列車として「SLもおか」の運行が始まったのは1994年で、以降、C12形蒸気機関車が客車を牽引して運行しています。SLもおかは土・日曜と祝日中心の臨時列車で、運行日は1日1便。下りが下館駅10:35発で茂木駅12:06着。上りは茂木駅14:26発で下館駅15:56着です。

沿線には、「SLキューロク館」やイチゴ狩りが楽しめる真岡市や、益子焼で有名な益子町があります。沿線はおおむねのどかな田園地帯で、初春には菜の花、3月下旬には桜が咲き、車窓からその姿を眺められます。鉄道路には架線がないため、SLと季節の花を写真に収められる絶好の撮影スポットとしても人気です。

SLもおかの乗り方

SLもおかに必要なチケット

乗車券とは別に必要なSLもおか券(画像提供 : 真岡鐵道)

SLもおか乗車には、乗車区間の普通乗車券と「SLもおか券」の2枚が必要。SuicaやPASMOといった交通系ICカードや、クレジットカードは利用できないため、現金を用意して旅を始めましょう。SLもおかは全席自由席で、当日券で乗車できます。事前予約の必要もありません。

【SLもおか 料金】
大人(中学生以上):500円 / 子ども(小学生):250円
※乗車券・SLもおか券は有人駅で購入できるほか、無人駅から乗車の場合は、SLもおか車内で車掌より購入可能
※詳細は公式サイト参照

8:00〜10:30 真岡鐵道へ向けて都心を出発

真岡鐵道の普通車両

普通の真岡鉄道の車両。ディーゼル車1両か2両で、単線を走る

SLもおかは通年土・日曜、祝日に1日1往復。走るSLの写真を撮りたい場合には、通常の路線も併用して乗車しましょう。

日帰り旅をするなら、下館駅10:35発の「SLもおか」に乗車するのがおすすめ。走るSLの姿を撮影したいなら、真岡鐵道の途中駅で待ち受けるのがおすすめです。ちなみに、菜の花と桜、SLの姿が一枚に収まった写真を撮ることができるのは、北真岡駅近くの線路沿いの道路からです。

例として、都心から下館駅に行く乗り換えプランを2つ紹介します。

【例1】秋葉原駅〜下館(IC優先 2,142円)
秋葉原駅 9:00発 つくばエクスプレス快速・つくば行

守谷駅 9:32着
守谷駅 9:43発 常総線快速・下館行き

下館駅 10:28着

【例2】新宿駅〜下館(IC優先 1,694円)
新宿駅 8:39発 JR湘南新宿ライン・小金井行き

小山駅 10:02着
小山駅 10:07発 JR水戸線・友部行き

下館駅 10:27着

下館駅までの道のりで見える筑波山

男体山と女体山の2つの峰がある筑波山

今回は新宿駅から乗車するルートで下館駅へ。小山駅でJR水戸線に乗り換えます。真岡線の始発駅である下館駅が近づいて来ると、遠くに筑波山が見えました。標高877mの関東の名山です。筑波山が見えたら、まもなく下館駅です。

下館駅ホームの様子

水戸線、常総線、真岡線が乗り入れる下館駅

下館駅に着いたら、1番線の真岡線ホームへ。真岡鐵道はSuicaやPASMOが利用できないので、1番線ホームに用意された、JR線からの出場用の精算機を利用します。

ICカードをタッチするホームの機械

ICカードをホームの機械にタッチして出場

10:35 下館駅で「SLもおか」に乗車!栃木県益子へと向かう

ホームお置かれた駅員が座る席

駅員の席。真岡線のホームに入る時は、ここで駅員から乗車券とSLもおか券を購入

1番ホームへ移動したら、駅員から乗車券とSLもおか券を購入します。乗車するSLもおかは、下館駅10:35発、益子駅11:34着。ゆっくりとSLの姿を見たい、または写真を撮りたいなら、早めに下館駅に訪れてSLの入れ替え作業を見学するのもおすすめです。

SLもおかの客車は全席自由席ですが、繁忙期以外であればそれほど混んでいません。この日もさほど混んでおらず、十分に座れるほど。座席はボックスシートが中心です。

SLもおかの車内

SLもおか車内の様子(写真提供 : 真岡鐵道)

10:35、いよいよ発車!

市街地をあっという間に通り過ぎ、車窓からの景色はすぐに田園風景に。観光用のSLのためのんびりしたものを想像していましたが思ったよりもスピードが速く、驚きました。時おりボォーッと汽笛もなり、SLらしさを感じられます。30分ほどSLに揺られると、途中駅の「真岡駅」に到着しました。

折本駅付近の様子

下館駅を出発して7、8分。SLは「折本駅」付近を通過
SLもおかは真岡駅で10分間停車するため、いったんホームに降りてSLの撮影も可能。SLは停車中にも、激しく煙を噴き出すことも。

真岡駅舎とSL

真岡駅を出発するSLもおか(写真提供 : 真岡鐵道)

満足いくまで写真を撮り終えたら再度SLに乗り込み、真岡駅を出発。市街地を進んでいきます。

次の北真岡駅を出てすぐ、「北真岡桜菜の花街道」と呼ばれる400〜500mの絶景ポイントが。春には菜の花と桜に囲まれ、その間を通過していきます。進行方向左側に菜の花、右側に桜の景色が広がります。ちなみに秋(10月ごろ)には、菜の花の代わりにコスモスの花が咲き乱れるそうです。

コスモスの花とSLもおか

秋には同じ場所で一斉にコスモスの花が咲く(写真提供 : 真岡鐵道)

益子駅に到着すると、乗客の半数ほどが下車。観光しやすい時間帯に合わせてSLもおかが発着していることもあり、益子駅で観光を楽しむ人も多いようです。

そのまま終点までSLもおかに乗ると、12:06に茂木駅に到着します。今回は茂木駅まで行きませんでしたが、茂木駅には車両の向きを変える転車台があり、それを見る鉄道ファンも多いそう。

茂木駅の転車台

茂木駅の転車台(写真提供 : 真岡鐵道)

11:40 益子駅前の観光案内所でマップをもらい街歩き!

益子駅の益子焼

益子駅前には大きな益子焼の壺が

さて、上りのSLもおかの発車時間までは時間があるので、ここからはゆったりと益子駅周辺の観光を。

木造で雰囲気のある益子駅舎を出ると、すぐ右側に益子町観光協会があります。街の地図や食事処、陶芸教室のパンフレットはここにそろっているので、立ち寄ってみては。駅には、レンタサイクル(1日800円)やコインロッカー(300円)もありました。

陶器店がある町の中心までは、駅から約1.5km。工房はさらに離れている場合もあるため、こで自転車を借りたり、重い荷物を預けたりするのがベター。

【益子町観光協会 基本情報】
住所:〒321-4217 栃木県芳賀郡益子町大字益子1539-2
電話:0285-70-1120
営業時間:8:30〜17:15
アクセス:益子駅より 徒歩(約1分)
公式サイトはこちら

12:00 「城内坂通り」で益子名物のそばをいただく

益子駅から徒歩15分。それまで道沿いに点々としかなかった陶器店ですが、城内坂を越えると店舗の数が増えてきました。ここは、益子の中心とも言える「城内坂通り」。緩い坂を登っていくと、観光客の姿も目立つように。

時刻はそろそろお昼どき。今回は、通り沿いに立つそば屋に入ってみることにしました。実は、益子はそばの生産地でもあり、そばの製粉場もあるんですよ。

手打ちそば「うえの」

今回訪れたのは、手打ちそば「うえの」。昭和41年創業

「うえの」の店内

昭和の面影を残す店内

注文したのは「そばセット」。ミニ天丼・カツ丼・親子丼のいずれかと、そばまたはうどん(もりorかけ)が付いて1,100円というおトクなセットです。そばは手打ちで、益子の水を使って作っているのだそう。大満足のボリュームです。

そばセット

そばセット。こちらはかけそばとミニ天丼

【手打ちそば うえの 基本情報】
住所:〒321-4217 栃木県芳賀郡益子町城内坂114
電話:0285-72-3355
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月曜(祝日の場合は営業)
アクセス:益子駅より 徒歩約25分

13:00 「益子陶芸美術館」で陶芸家たちの作品を鑑賞

焼き物や陶芸が好きなら足を運んでおきたい益子のスポットのひとつが「益子陶芸美術館」。「手打ちそば うえの」を出て目の前の坂道を登っていくと、徒歩5分ほどで丘上に立つ益子陶芸美術館に到着です。丘上は公園になっており、かつての城跡などもありました。

益子陶芸美術館外観

落ち着いた雰囲気の「益子陶芸美術館」

1993年に開館した益子陶芸美術館は、益子の街を見下ろす高台に位置しています。常設展では、益子を代表する濱田庄司や島岡達三といった陶芸家や、益子ゆかりの陶芸家の作品を展示しています。また年に数回の企画展では、国内外の現代陶芸家たちの作品が展示されます。

カフェの建物

蔵を模したモダンな建物

展示はもちろん、美術館併設のカフェにもぜひ足を運んでみてください。コーヒーなどホットドリンクを注文すると、使用カップを店内展示の陶器から選ぶことができます。

選んだ陶器でカフェタイム

お気に入りの陶器でカフェタイムを過ごす。ケーキセットは600円

【益子陶芸美術館 基本情報】
住所:〒321-4217 栃木県芳賀郡益子町大字益子3021
電話:0285-72-7555
開館時間:2〜10月 9:30〜17:00 / 11〜1月 9:30〜16:00(最終入館:閉館の30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月25日〜1月1日)、展示替期間の休館あり
料金:一般 600円 / 65歳以上、小・中学生 300円
アクセス:益子駅より 徒歩(約25分)
公式サイトはこちら

14:00 お気に入りの益子焼を購入!「益子焼窯元共販センター」へ

益子焼窯元共販センター

益子焼窯元共販センターの里山通り側

美術館のある丘を下り、徒歩約2分。道路沿いにある「益子焼窯元共販センター」のちょうど裏側に出ました。ここは益子の窯元の約7割の作品を展示しているという、益子焼最大のショッピングギャラリーです。とにかく種類も数も多いため、買い物に困ったらまずはここに来てみては。広々とした駐車場には、ツアーバスも停まっているようでした。

ちなみに、年に2回開かれる陶器市の時は、この益子焼窯元共販センターが会場の中心となります。

レストランは昼のみの営業で、絵付け体験ができる陶芸教室も行っています(水曜定休、焼き上げ後の配達は1.5〜2カ月後とのこと)。

【益子焼窯元共販センター 基本情報】
住所:〒321-4217 栃木県芳賀郡益子町大字益子706-2
電話:0285-72-4444
営業時間:9:00〜17:00
定休日:無休(12/31〜1/1を除く)
入館料:無料
アクセス:益子駅より 徒歩(約28分)
公式サイトはこちら

15:01 益子駅から帰路へ。真岡駅までSLもおかに乗車

SLとマーガレットの花

5〜6月は沿線にマーガレットが咲く時期も(写真提供 : 真岡鐵道)

益子焼窯元共販センターから益子駅までは徒歩だと30分弱かかるため、時間に余裕を持って駅へと戻るようにしましょう。益子駅15:01発のSLもおかに間に合うよう、歩いて駅まで向かいます。バスもありますが、駅まで行かないためご注意を。

行きに比べると、乗客はかなり減った印象です。今回は終点の下館駅ではなく、真岡駅で途中下車。SLの展示などが楽しめる「SLキューロク館」に寄りました。

15:19 D51などのSLが展示されている「SLキューロク館」を見学

真岡駅舎

「関東の駅百選」に選出されたSLの形を模した真岡駅舎

15:19、真岡駅に到着。真岡駅舎はSLを模したユニークな建物になっており、その隣に「SLキューロク館」があります。

SLキューロク館

真岡駅を東に出てすぐ右側に立つのが「SLキューロク館」

館内では、SLやディーゼル機関車を展示しています。館名「SLキューロク館」の由来は、館内に展示してある9600形蒸気機関車から。大正時代の代表的な機関車のひとつで、「キューロク」の愛称で人々に親しまれていたそうです。その他にもD51形蒸気機関車、ブルーの客車「スハフ4425号」などが展示されています。

D51蒸気機関車

憧れのD51系蒸気機関車

スハフ4425号

「スハフ4425号」は1950年代に製造され、1980年代まで使用されていた

【SLキューロク館 基本情報】
住所:〒321-4306 栃木県真岡市台町2474-6
電話:0285-83-9600
開館時間:10:00〜18:00
定休日:火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
入館料:無料
アクセス:真岡駅より 徒歩(約1分)
公式サイトはこちら

16:32 名残を惜しみつつ、都心への帰路につく

真岡駅に停車する普通列車

真岡駅からは普通列車に乗って下館駅へ

SLキューロク館でSLの魅力に触れたら、今回の旅は終了。真岡駅からは、普通列車で都心へと戻ります。今回は、16:32発の真岡鐵道の列車に乗り込みました。下館駅には、16:58着。下館駅から都心へは、下車駅にもよりますが2時間10分ほどを見ておきましょう。

日が長い時期なら、夕暮れの真岡の町を散策するのもおすすめです。桜が満開の4月の頃なら、真岡駅から徒歩約12分にある「行屋川水辺公園」が散策にぴったり。川沿いには、樹齢およそ80年のソメイヨシノの古木約200本が咲き誇ります。この時期の日没は18:00ごろ。暖かければ夜桜を少し見てから都心に帰るのもいいかもしれませんね。

「SLもおか」の魅力をインタビュー

最後に、真岡鐵道の広報、総務課の竹前直さんに真岡鐵道の魅力をうかがってみました。

「現在走っているSLもおかの機関車C12は、公園に展示されていたものを購入して動けるように整備し、1994年から真岡線を走るようになりました。国鉄時代には同じC12形が実際にこの路線を走っていたので、このSLもおかが走るような風景がいつも見られたのでしょう。

日本には他にもSLが走る区間がありますが、SLもおかの魅力は“観光SL”というよりも、現役感が感じられることでしょうか。車窓の風景も、市街地だったり田畑だったり。窓も開くので、汽笛の音や煙の匂いを感じることができます」と竹前さん。

実際に今回SLもおかに乗ってみて、SLの力強い走りや、息をするように噴き上げる煙の匂いや音に感動しました。この感動は、乗ってみなければ分からないものです。

SLもおかをもっと楽しむために、竹前さんおすすめの乗車区間も教えていただきました。

「まずは七井から益子の3kmあまりの上りの直線区間。ここはかなりスビードも出て、“本気”の走りを見せてくれます(笑)。あとは茂木から天矢場までの急勾配で、ここはシュッシュッポッポと音を立てながら、煙を噴き上げてSLが登っていきます。
季節としては、やはり桜や菜の花が咲く時期もいいのですが、鉄道写真ファンには冬も人気なんです。というのも、気温が低いので煙がきれいに見えやすいのですよね。ということで、できればいろいろな季節を楽しんでください」

SLもおかと雪景色

雪原を走るSLもおか。煙ののびる姿がきれいに写る(写真提供 : 真岡鐵道)

竹前さんの話を聞き、今回、益子でSLを折り返してしまったことを少し後悔。次回は終点の茂木まで乗車し、急勾配を登るSLを体感したいですね。

桜と菜の花のコラボを楽しみ、益子焼をお土産に!

真岡鐵道は、普段は観光客も少ないローカル線。しかしその分、生活感たっぷりの沿線の風景を楽しめます。都心からSLに乗るまでが2時間以上かかりますが、いったん乗ってしまえば、都心近くでは味わえない楽しみが得られますよ。

春の頃なら、桜と菜の花のコラボも最高!絶景も、益子焼も存分に楽しめるSLもおかの日帰り旅、ぜひ挑戦してみてください。