香川県でのんびりと旅行をするなら、ぜひ県内に点在するさまざまなオリジナリティ溢れるカフェに足を運んでみて。
今回は、ここでしか過ごせないスペシャルな空間を提供する香川のカフェや喫茶店、厳選4店を紹介します。観光の合間に、デートに、おひとりさまでも気軽に足を運ぶのにぴったりなお店ばかりです。
【多度津町】喫茶店 × 大衆浴場「藝術喫茶 清水温泉」
歴史を感じる佇まい
古い町並みが残る多度津町。瓦屋根の古民家が点在し、ノスタルジックな雰囲気の本通を歩いていくと見える「ゆ」ののれん。それが「藝術喫茶 清水温泉」です。
藝術喫茶 清水温泉は、昭和50年代半ばまで営業していた大衆浴場をリノベーションして誕生した喫茶店です。歴史を感じる土壁に立派な瓦屋根、軒先に残されている色あせた当時の看板は、長年地元の人に愛されていた面影を残します。
銭湯の名残が残るインテリアが面白い
かつて使われていたロッカーもインテリアのひとつ
店内に入ると目に飛び込んでくるのは、番台で出迎える猫の置物と高い格子天井。漢数字がふられた木製のロッカーが、昭和レトロな雰囲気を醸し出しています。ここはかつて脱衣所だった場所。深みを増し色づいた柱や、壁に設置された扇風機が当時の様子を思わせます。
タイルに描かれたダイナミックなアート
奥に進むと、タイル貼りの壁に描かれたカラフルでダイナミックなアートがお出迎え。大きな桜の木と、かわいい龍のイラストがゲストの目を楽しませます。店内のイラストや猫の置物はアーティスト・ヒダカナオトの作品です。
浴槽もボックス席に
ここは当時浴室だったエリア。湯船をそのまま利用したボックス席が、このお店の人気席です。愛らしいタイル張りの浴槽や、石材で造った湯船など、見た目も深さもバラバラなのがとってもユニーク。靴を脱いで腰掛けると、お風呂に浸かっているような不思議な感覚を楽しめます。
メニューはテーブルの上の木桶に入っている
地元の食材を使った愛情たっぷりメニュー
インテリアやコンセプトだけで十分に楽しめますが、同店は喫茶店。もちろんメニューにもこだわっています。
「オリーブ牛 豆腐ハンバーグ(1,000円)」
こちらはランチにぴったりな「オリーブ牛 豆腐ハンバーグ」。オリーブ牛とは、香川県小豆島の特産品であるオリーブを飼料にすることで旨み・柔らかさが増した、香川を代表するブランド和牛です。オリーブ牛のひき肉に豆腐を練り込み、ふわふわとした軽い食感に。こってりとした特製デミグラスソースと相まって、ご飯が進みます。
「二ノ宮金時かき氷(800円)」
カフェタイムの利用なら、ぜひ濃厚なかき氷を堪能してみてください。清水温泉では、一年を通してかき氷が食べられます。
いくつか種類はありますが、なかでもオーナーおすすめの「二ノ宮金時かき氷」は、濃厚な茶葉の苦味と風味が感じられる奥深い味わいが特長。もっちりとした白玉は豆腐を使用。水を一切使わず、豆腐の水分だけで作られているそうです。
二ノ宮金時のシロップには、お茶の産地として有名な香川県高瀬町の「高瀬茶葉」を使用しています。高瀬茶葉は県内では有名ですが、まだまだ知名度は低いため、もっと広めたいというオーナーの願いから考案されたのだとか。
芸術によって人が集まる場所へ
銭湯の名残が残る看板
同店は「町おこしを兼ねて、人が集まる場所を作りたい」というオーナーの思いから誕生しました。
オーナーの日高明道(ともみち)さん
「喫茶店に芸術というコンセプトをプラスすることによって、色んな人の芸術が集まり、そこに人も集まると思ったんです。ここに訪れた人が、ここに住みたいと思い、旅人が村人へ変わる、そんな場所になればいいですよね」
ノスタルジックな空間で芸術に浸りながら、こだわりのメニューを楽しみゆったりとくつろぐ。そんな贅沢なひとときを過ごせば、いつの間にか多度津町のファンになっているはず。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【観音寺市】カフェ × 職人 × ネコ「おかし工房Botan」
水色の扉が目印
高松駅から車で約1時間。のどかな山道を登った先に、「おかし工房Botan(ボタン)」はあります。
ネコと職人による緑に包まれたカフェ
フレンドリーなネコたち
お店の入り口では、ここに住むたくさんのネコたちがお出迎えしてくれます。同店は周囲を畑に囲まれた静かなエリアに立っているにも関わらず、毎日オープンからクローズまで多くの客足の絶えない人気店。豊かな自然と甘くおいしい匂いに、ネコもたくさん集まるのです。
運が良ければ看板犬のもちこちゃんにも出会えるかも
同店は、お菓子職人であるオーナーと木工職人であるご主人のご夫婦で営んでいるカフェ。ご主人はオーダー家具をメインとして造っていることから、店内はシンプルながらもセンス溢れるおしゃれな空間となっています。店内で使用している家具は購入できるのだそう。
お菓子職人による香川産果物を使ったスイーツ
「きまぐれスイーツプレート(1,600円+税)」
オーナーが手がけるスイーツプレートは、フルーツをふんだんに使った味も見た目もおいしい一品。フルーツは季節により変わり、この日は赤く熟したイチゴがたっぷり使われていました。香川県三豊市の農家から仕入れているブランドイチゴ「さぬきひめ」です。
イチゴマフィンやイチゴのジェラートは、口に運ぶとイチゴの芳醇な香りが鼻から抜け、イチゴの甘味と酸味をしっかりと感じられます。プリンやスコーンなどもプレートに並び、さまざまな味を楽しめる飽きのこない一品です。
「瀬戸内レモンスカッシュ(520円+税)」
こちらは、同店近くに立つ「フジカワ果樹園」のレモンを使用したレモンスカッシュです。薄くスライスしたレモンから爽やかな酸味が溶け出し、すっきりとした喉ごしに。暑い日のリフレッシュにもぴったりです。
ほろほろ食感のスノーボール(200円+税〜)
趣向を凝らしたここでしか味わえないメニューがたくさん。時間がないという人は、テイクアウト用の焼き菓子もおすすめです。
お土産に喜ばれそうなギフトボックスも
お菓子職人と木工職人の夢が詰まった空間
店内の一角には木工雑貨と焼き菓子の販売スペースが
元々はケーキ屋でパティシエとして働いていたというオーナーの平口さん。
この地でカフェを開くきっかけとなったのが、かつて建設事務所だったというこの建物をご主人が買い取り、木工所を始めたこと。
「山奥の木工所だったので、お茶でも飲めるスペースがあれば人も来やすいかなと思ったんです。10年前、この辺りにはカフェはほぼなかったですね。ならいっそ自分のお店をつくろうという思いもありました」
木目がきれいなカッティングボード
店内には焼き菓子のほかにも、ご主人が手がける木製の雑貨やキッチン用具などを販売しています。お店で実際に使用しているカッティングボードなども購入できます。
【多度津町】カフェ × 哲学「Tetugakuya」
ビルのようなモダンな建物
1962年建設の信用金庫をリノベーションした「Tetugakuya」。大通りから外れた通りにひっそりと佇み、店外には大きな看板などもありません。店内に高価な品があることから高校生未満は入店禁止としている、まさに知る人ぞ知る「大人の隠れ家カフェ」です。
アンティーク雑貨にうっとりする博物館のような店内
アンティーク雑貨が並ぶ店内
重い扉をそっと開けると、昔の喫茶店を思わせるドアベルの音色とコーヒーの香りがゲストを不思議な空間へと誘います。店内には、アンティーク家具がそこかしこに。オーナーがひとつずつ選んだという雑貨や家具が心地好さそうに並んでいます。雑貨や家具は購入できるため、ぜひお気に入りのひとつを探してみては。
万年筆立ての種類も豊富
ユニークなインテリア
なかにはちょっと壊れた人形や、アンティークならではのユニークな置物も。海外では珍品や奇妙なものを集めた博物館を 「恐怖の部屋」「不思議の部屋」というそうで、同店はそういった博物館的要素もプラスしているのだそう。異世界に訪れたような不思議な空間ですが、インテリアに統一感があるためか、居心地の良さを感じます。
常連客も多いカウンター席
おひとりさまで来店するゲストも多く、店内は長いカウンター席がメイン。お客さん同士で仲良くなることもしばしばあるのだそう。自分の時間をゆったりと過ごしに訪れるのにぴったりです。
信用金庫で使われていた金庫室が残っている
一つの物語を読んでいるかのようなこだわりのコーヒー
Tetugakuyaでは、注文を受けてから1杯ずつハンドドリップで丁寧に淹れるオリジナルブレンドコーヒーが味わえます。このこだわりのメニューに、Tetugakuyaという名前の理由が隠されていました。
「ハンナ・アーレントの朝(800円)」
こちらはブレンドコーヒーのひとつ、「ハンナ・アーレントの朝」。ハンナ・アーレントはドイツの女性哲学者で、毎朝2杯のコーヒーを飲むのが日課だったそう。学生時代でもその習慣を貫くため朝の授業を放棄し、特別にレポートの提出で許されることになったほどのコーヒー好き。そういった背景を踏まえて誕生した「ハンナ・アーレントの朝」は、深煎りで力強い味です。
同店のメニューには、こういった哲学者や本の名前が付けられています。こだわりのメニューから哲学に触れられるのが、同店の魅力のひとつ。メニューを決める際には、哲学者の人生や本の内容を踏まえ、それに合った一品を作っていくそう。
コーヒードリップに使われるビーカー
コーヒーだけではなく、オリジナルブレンドの紅茶やノンカフェインのフルーツティーもあるので、コーヒーが苦手という人にもおすすめです。
人とのつながりで進化していくカフェ
カウンターは芸術家であるお客さんの作品
オーナーである杉原あやのさんが抱く「ずっと哲学に関わっていきたい」という思いのもとTetugakuyaは誕生しました。同店はゆったりとくつろぐカフェとしてだけでなく、新たな人との出会いを生む場所でもあります。
オーナーの杉原あやのさん
「このお店はまだ未完成。さまざまな人との出会いを重ねていくことで、お店も自分自身も拡張し精製されていく、そんな空間にしていきたいと思っています」と杉原さん。
上質なコーヒーや紅茶を飲みながらオーナーやほかのゲストと話したり、読書にふけったりと、思い思いの時を過ごせるカフェです。
定期的に「哲学読書会」も開催しています。ぜひお店のホームページで確認してみてください。
【丸亀市】カフェ × 材木屋 「KITOKURAS」
木々に囲まれたカフェ
高松駅から車で約40分。生い茂る木々に囲まれた「KITOKURAS(キトクラス)」は、道を挟んだ向かいにある「山一木材」という材木屋が経営する木の温もりあふれるカフェです。
まるで森の中!木漏れ日が降り注ぐ店内
窓から豊かな自然を眺められる
壁も床も天井も無垢材を使い、木の柔らかな香りに包まれた店内。正面の大きな窓からはカフェの外の杉林を望め、まるで森の中にいるような癒やしの空間が広がります。屋内席のほかテラス席や、竹林の奥に据えられたベンチなど、屋外で森林浴をしながらカフェメニューを楽しめます。
さらに店内の奥にはたくさんの本が並ぶ図書室などを設けており、注文したメニューの持ち込みOK。木々に囲まれた空間で、思い思いのカフェタイムを過ごすことができます。
屋外には木製の遊具が
外は子供が遊べる木製の滑り台やブランコがあり、小さな公園のよう。家族連れでの来店にもぴったりです。
散策しながら食べられるケーキとマニア直伝コーヒー
「きとの小枝(300円)」と「コーヒー(400円)」
豊かな自然に囲まれた地に立つ同店。こちらは、店外をのんびりと散策しながら食べられるようにと誕生したスティックケーキ「きとの小枝」です。この日いただいたのは、アールグレイとくるみ。やさしい甘さとしっとりとした食感で、ぺろりと完食してしまいました。
コーヒーマニアから仕入れた豆を使いマニア直伝のネルドリップで淹れるコーヒーは、コクのある奥深い味わい。コーヒー豆は、生豆の仕入れからハンドピック(生豆を手作業で1つずつ選別すること)まで行い、焙煎具合もその日の気温によって調整し作られているそう。
世代を越えて「木と暮らす」ことを伝えるカフェ
同店には、木材で作られた雑貨を販売しているスペースも。器はもちろん、インテリアにぴったりな一輪挿しなど、ずっと使い続けられる心地の良いアイテムが並びます。
「KITOKURAS」=「木と暮らす」。同店は、このコンセプトのもと誕生しました。
「材木屋って、一生に一度来るか来ないか、っていう場所だと思うんですが、もっと木に触れて、木の気持ち良さを知ってほしいというところから、このカフェが誕生したんです」とオーナーの丸尾さんは話します。
KITOKURASオーナーの丸尾有記さん
店内一角に設けられた日用品店では、どんなインテリアにも映える、シンプルで上品な木製のアイテムを取り扱っています。
どんな風に家に飾るか想像が膨らむ日用品店
木と試験管を使った一輪挿し
壁に飾ることもできる木製の一輪挿し。道端で摘んだ草花もなじみ、引き立ててくれます。すべて無垢材を使用しているため、どれも木目や色が異なり木本来の味わいを楽しめます。
ほか、カフェで使われているカップや、香川県のアーティストによるアクセサリーや小物なども揃います。
工場内にある「KITOKURAS FACTORY SHOP(ファクトリーショップ)」
カフェでのんびりと過ごしたあとは、ぜひ向かいに立つ材木屋「山一木材」にも立ち寄ってみてください。こちらでも木製の雑貨や家具などを取り扱っていますので、素敵な一品に出会えるかもしれません。
吠えない番犬ムクちゃん
KITOKURASは食事をする場所だけでなく、自然に触れながら大人から子供まで楽しめるカフェ。そのためか、家族連れやカップルなど、世代を越えて幅広い年齢層の方が来店されるそう。
香川県のオリジナリティ溢れるカフェを楽しもう!
今回ご紹介した4店舗は、その中でも特にコンセプトが際立ったユニークなお店。それぞれのオーナーさんの思いが詰まった、ちょっとマニアックなステキなカフェで、一味違った香川県の旅の思い出を作ってみてはいかがでしょうか。