谷中でクラフトビールを楽しむ「谷中ビアホール」
クラフトビールってどんなもの?
谷中ビアホールで谷中ビールを飲み比べ!
お気に入りのビールを探しに、いざ谷中へ

日本には今、クラフトビールブームが到来していることはご存知ですか?全国各地でさまざまなクラフトビールが誕生し、飲み比べができるスタンドなどもたくさん登場しています。

そんな中、今回は、多くの観光客が訪れる下町・谷中の名を冠した「谷中ビール」を提供しているお店「谷中ビアホール」にお邪魔してきました。谷中ビールはどんな特徴があるのか、そもそも、クラフトビールとはどういうものなのか。谷中ビアホールでクラフトビールに関するさまざまなお話を伺ってきました!

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商店街・屋台・市場

谷中でクラフトビールを楽しむ「谷中ビアホール」

谷中ビアホール看板

下町情緒が残る谷中に誕生した「谷中ビアホール」とは?

都内で下町の雰囲気を楽しめるとして人気の観光エリア「谷中」。木造の建物や小さな裏路地が多く残り、昭和時代の下町情緒を感じさせるこの地に、1938年の古民家を改装した複合施設「上野桜木あたり」が、2015年に誕生しました。古い民家のかつての姿はそのまま残しながらも、現代にマッチした、地元住民の暮らしを充実させてくれるアイデア満載のテナントが出店。そのなかのひとつに、今回取材する「谷中ビアホール」があります。

上野桜木あたり外観

JR日暮里駅から徒歩約10分。3つの古民家が並ぶ複合施設「上野桜木あたり」

谷中ビアホール外観

谷中ビアホールは一番手前の古民家

「谷中ビアホール」は、谷中のクラフトビール「谷中ビール」を提供するお店。古民家をリノベーションしたという店内は、深い飴色に経年変化を遂げた木材や、昭和時代を思い出させる窓枠につけられたネジ式の鍵、壁に貼られた古い新聞など、そこかしこに「レトロ」が散りばめられています。

谷中ビアホール 昭和時代の日本をそのままにした店内も魅力

谷中ビアホール外観全景

情緒あふれる谷中ビアホール外観

谷中ビアホールは、谷中のクラフトビールが楽しめるというだけでなく、お店の雰囲気やコンセプトも魅力のひとつ。
当時のままだというおしゃれなデザインの磨りガラスの戸を開け店内に足を踏み入れると、バーのようなカウンター席と、テーブル席、2階には和室の座敷を残した風情ある空間が広がります。

一枚板のカウンター

まだ新しいカウンターは存在感抜群。これから経年変化で色づいていく

2階の座敷

谷中ビアホール2階の座敷。床の間もそのまま残っている

谷中ビアホール2階の座敷には昭和の頃を思わせるレトロな扇風機や、ウォールナットのように深く色づいた桐タンスが置かれているのでぜひ見てみてください。タンスは開けて閉めるとオルゴールのような高く美しい音色が響くという、不思議な仕掛けが施されています。なんとも形容しがたい柔らかな音色は、昔の職人の粋な設計によるもので、盗難防止の役割も果たしているのだそう。

当時のものをそのまま利用して景観を残しつつ、レトロなアイテムを加えてさらに情緒を増していく。これらは全て「昭和時代の日本を残していきたい」という思いから、台東区の歴史を保全する「NPO法人 たいとう歴史都市研究会」協力のもと、古民家の扱い方や、保全の方法などを学び実践しているそうです。

ネジ式の鍵

今はもう作られていないネジ式の鍵

例えば、傷んだ壁を隠すために使われている新聞たちも、実はこの古民家から出てきたもの。記事内容を読めるほど保存状態がよかったこともあり、保存も兼ねインテリアのひとつとして壁を覆うことにしたのです。細部まで残る昭和時代の香りを見つけにいくのも、谷中ビアホールの楽しみ方のひとつといえるでしょう。

壁をおおう新聞

昭和時代の新聞が壁を覆っている

さて、今回「谷中ビール」についてご紹介いただくのは、有限会社イノーバー・ジャパンの代表取締役である吉田瞳さん。お店に立つ日は店内に馴染むよう、なるべく和装を纏うようにしているそう。まさに女将さんといった雰囲気の鮮やかな朱色の着物がとっても素敵で、店内の古き良き景観に溶け込み、華を添えてくれています。

谷中ビール作りをきっかけに、自身もビールについてさらに知識を深めていったという吉田さん。さっそく、谷中ビールについて教えてもらいましょう。

カウンターに立つ吉田さん

明るい笑顔がステキな吉田 瞳さん

クラフトビールってどんなもの?

「谷中ビール」は、日本を代表するクラフトビールのメーカー「アウグスビール(AUGUST BEEL)」とともに手がけたクラフトビールです。多くのビールファンが絶賛するこだわりのある本格クラフトビールをプロデュースするアウグスビールは、2004年に東京都文京区に誕生したビールメーカー。威厳があるという意味の「AUGUST」と冠しているように、伝統的な製法を大切にビール作りをしています。

もともとは自前の醸造場を持たないファントム・ブルワリーでしたが、現在は隅田川の近くに「アウグスビール清洲橋醸造場」を置き、自社のオリジナルクラフトビールを生み出しています。

クラフトビールとは?

ビールのイメージ

都内でも話題の「クラフトビール」とは

そもそも、今でこそよく耳にするようになった「クラフトビール」というワードですが、この言葉の意味はご存知でしょうか?アメリカから入ってきた「クラフトビール」という言葉が日本で使われるようになったのは、2001年ごろのこと。1990年代に盛り上がっていた「地ビール」に代わるように登場し、「ブルワリーがこだわりを持って作るビール」のことを総じて「クラフトビール」と呼ぶようになっていったのです。

クラフトビールと地ビールの違いは?

「クラフトビール」とは、ブルワリーがこだわりを持って手がけるビールのこと。使うホップにこだわったり、フレーバービールのようにフルーツなどで香り付けをしたりと、ビールごとに異なる味わいを楽しめるのが一番の特徴です。

ホップの実

ホップの実

クラフトビールという言葉が今のように浸透する前に使われていた「地ビール」というワードも、「こだわりを持っている」という点ではクラフトビールと大差はありません。地ビールのはじまりは、多くの日本人が愛してやまないビールに新たな革命をもたらそうと、1994年から全国各地で地ビールのブルワリーが登場していったこと。

大手メーカーが手がけるビールとは異なり、全国各地で立ち上がった「地元に根付いたビール」を作ろうとさまざまな地ビールが誕生しますが、素材や製法にこだわる分価格は高く、その上イマイチおいしくないという地ビールも多く、すぐにそのブームは去って行ってしまうのです。

つまり、地ビールはクラフトビールのひとつ、と考えていいでしょう。「谷中ビールも、谷中の地で誕生し育っていった点から地ビールとも言えますね」と吉田さんは話します。

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居酒屋・バー

谷中ビアホールで谷中ビールを飲み比べ!

アウグスビールの「アウグス ラガー」をベースに作られた谷中ビールは、基本の「谷中ビール」をはじめ、軽い飲み心地の「谷中ドライ」、芳醇な香りが楽しめる「谷中ゴールデン」、香ばしく深みのある「谷中ビター」の4種類をご用意。

ユーザーの要望に応える形で、飲み心地も味も異なる4つのビールが生まれていきました。谷中ビアホールではこの4種とアウグスラガーに加え、アウグスIPA、アウグス ホワイト、アウグス ブラックの全8種のビールを常時展開しています。

谷中ビール

谷中ビアホールのずらりと並ぶビールサーバー

谷中ビアホールで楽しめるビールは、これだけではありません。金物づくりがさかんで、「ものづくりのまち」としても名高い新潟県燕三条で作られたオリジナルの「フレーバーチューナー」を使い、ビールに生のフルーツやハーブを入れて店内で造るスペシャルビールを提供。

スペシャルフレーバービール

その場で作る生ビール。谷中ビアホールで新しいビールに出会える

季節に応じて食材を変えており、9月上旬のこの日は、土佐小夏をチューナーに入れ、ビールの香りや味をチューニングしていました。秋には柿や梨といった果物を使いフルーティーに仕上げたり、パクチーなどの香草でアクセントをつけたり。訪れるたびに新たなビールに出会える、粋なメニューです。

「ピルスナー」と「エール」、2つのビールの違い

谷中ビアホールで常時楽しめる8つのビールは、メニューを見るとビール名の下に「エール」もしくは「ピルスナー」と書かれています。実はビールには、作り方によって大きく2種類に分けられることをご存知でしたか?ひとつは「エール」、もうひとつは「ピルスナー」と呼ばれています。

ビールを注ぐ吉田さん

慣れた手つきでビールを注いでいく吉田さん

「ビールは酵母菌を発酵させ、炭酸ガスなどに変化させる『発酵』という工程があります。エールは、温度を高くし短期間で発酵させて作られるビールのことで、発酵が進むと酵母が上に浮いてくるんです。対してピルスナーは、長期間低い温度で発酵させます。こちらはタンクの下に酵母が現れます」と吉田さん。

エールは芳醇で飲みごたえがあり、ピルスナーはのどごしが良いのが特徴。日本のビールのほとんどはピルスナーの方法で作られているため、ピルスナーの方が日本人にとっては馴染み深いのです。谷中ビールでは、「谷中ビター」がエールで、そのほかの3つはピルスナー。2つのビールの違いを元に、谷中ビアホールで飲み比べをしてみるのも面白いかもしれません。

谷中ビアホールで4つの谷中ビールを飲み比べよう

谷中ビアホール初心者におすすめしたいのは、4つの谷中ビールを飲み比べできる「テイスティングセット 谷中シリーズ」。左から谷中ドライ、谷中ビール、谷中ゴールデン、谷中ビターと120mlの小さなグラスになみなみと注がれた谷中ビールたちは、見た目にもその違いがわかりますね。

谷中ビールテイスティングセット

「テイスティングセット 谷中シリーズ」(1,400円)

谷中ビール

それでは、まずは基本の「谷中ビール」からいただきます。

2種類のホップを使っている谷中ビールは、見た目以上にのどごしはすっきり爽やかで、一口飲むと、鼻から焙煎のいい香りが抜けていきます。これは、ホップだけでなく、焙煎させた麦芽も使用しているからだそう。苦味が少なく、ごくごくと飲めてしまいます。濃い赤褐色は、谷中の名スポットでもある「夕やけだんだん」をイメージしており、まさしく谷中を代表するビールです。

谷中ドライ

次にいただくのは「谷中ドライ」。

谷中ビールよりもずっと薄い色を携えた谷中ドライですが、見た目の通り、味はとにかく軽くすっきり!ビールの苦味が苦手という人にも挑戦してほしい、クリアな飲みごこちです。これまで味わってきたどのビールよりも飲みやすく、普段ビールをあまり飲まない私でもどんどん飲めてしまう透明感のある軽やかさ。

アルコール度数もほかのビールに比べて低いそうで、女性やお酒に弱いという人にもおすすめです。

4つの谷中ビール

左から、谷中ドライ、谷中ビール、谷中ゴールデン、谷中ビター

谷中ゴールデン

次は芳醇な香りが特徴だという「谷中ゴールデン」。

ゴールデンという名前は、見た目の黄金色はもちろん、味の華やかさにもかけてつけられたそう。こちらも飲みやすい軽やかさを感じられます。フルーティーさと苦味が程よく調和しつつ、喉ごしはすっきりしているのが印象的。ピルスナーが好きだという人にこそ、飲んで欲しい味です。

谷中ビター

最後にいただくのは「谷中ビター」。こちらはほかの3種と異なり、唯一のエールタイプのビールです。

古くからの製法であるエールビールは、実は日本人にとってはピルスナーに比べると馴染みのない味。イギリス生まれのエールビールは、口の中でコロコロと変わる複雑な味わいが特徴です。

谷中ビターも同様で、口に含むと渋さすら感じる深い苦味を感じられます。それでいながら、最後は麦の甘みが鼻を抜けていくという複雑さ。吉田さんが「ワインがお好きな人はきっと好きだと思います」と話すように、キレのある苦味とスパイシーさを感じられる大人な味です。

土鍋で作る枝豆

土鍋で作る枝豆はふっくらと仕上がる

ビール初心者の私でも味の違いがわかるほど、4種の谷中シリーズはどれも個性的。ビールと一緒に伊賀焼の窯元「長谷園」の土鍋で仕上げるというソーセージや枝豆をおつまみに頼めば、さらにお酒が進むことでしょう。古民家の雰囲気もあいまって、昭和時代にタイムスリップしたような、素朴で上質な時間に浸ることができます。

ベンチ席

谷中ビールはお店の前のベンチ席で飲むこともできる(外で飲む場合はワンサイズの提供)

谷中ビアホールはランチ営業もしているので、谷中の街歩きで乾いた喉を潤しに昼から一杯、なんて贅沢なこともできてしまいます。さらにお店の前にはベンチ席も用意されています。夕方の涼しい風にあたりながらビールを味わうのも風情があってオススメ。

お気に入りのビールを探しに、いざ谷中へ

谷中ビアホールで4つのビールを飲み比べてみましたが、私の好みはやはり、軽さのある谷中ドライでした。吉田さんをはじめ、スタッフに「こんなメニューに合うビールが飲みたい」「苦いのはあまり好きではない」など要望を伝えれば、きっと自分の好みのオススメビールを教えてくれるはず。

居酒屋で友人たちとわいわい楽しむのとも、レストランでグルメな時間を過ごすのともまた違う、「クラフトビールを楽しむ」という大人な過ごし方を谷中ビアホールで体験してみてはいかがでしょうか。