生活している中でも時々耳にする「地酒」。居酒屋や日本酒のお店に行くと「地酒置いてあります!」なんて声を聞いたり、文字を見たことがある人も多いのではないでしょうか?
しかし地酒の文字や言葉は見るものの、地酒とは一体何なのでしょうか?日本酒との違いや定義を改めて聞かれると分からない場合も多くある様子。
今回はそんな地酒の意味や日本酒・清酒との違い、オススメや定番の地酒などをたっぷりと紹介していきます。
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地酒とは
注がれる地酒
そもそも地酒とはなにか紹介していきます。
地酒といえば日本酒。と認識されるように地酒は日本酒の仲間です。「地酒」と呼ばれているものの、実は「これが地酒!」というようなはっきりとした定義は決まっていません。日本酒と地酒の境界線は非常に曖昧なものなのです。
地酒の意味
伏見の醸造所
一般的に認識されている地酒とは、江戸時代から日本酒の名醸地として知られる「伏見(京都)」や「灘(兵庫)」以外の特定の地域で造られた酒のこと。また大手メーカーの日本酒のように全国で流通するような酒以外のことを指すと言われています。つまり地酒とは大手ではなく、酒造りが有名ではない土地で作られたお酒。
俗にまとめて日本酒と呼ばれているものの、同じ日本酒というジャンルの中にいながら別のグループとして成り立っているのが地酒なのです。
地酒は日本酒の下位概念?
有名な酒蔵や大手メーカー以外の造ったお酒が地酒。つまり地酒は全国にあまり流通しないため、生産地域周辺でしか消費されず、知名度はあまりありませんでした。そのため、地酒は日本酒の下位概念と言われていたのです。
知名度も低ければあまり売れることもないため、地酒を造る酒蔵は小さいところが多く、愛されていたのは有名な日本酒だけでした。
地酒ブームの到来
美味しい米作りは美味しい地酒にも繋がる
あまり売れておらず人気もあまりないと言われていた地酒がなぜ現代でよく名前を聞くようになったのか?それは1970年代に空前の地酒ブームがやってきたため。
大手の日本酒が出回っていたこの頃に、「蔵元たちの本当に造りたい日本酒を造る。」という試みが流行り出します。地酒は全国に流通してはいませんが、逆にそこが人気のきっかけに。
流通が少ないということは、生産数が少ないということですが、そんな入手困難な地酒は「流通しているお酒よりも価値が高い!幻の酒だ!」と言われるようになります。
さらに有名ではないといっても、良い土地で作られる地酒も数多くありました。特に日本酒や地酒はその土地の風土がそのまま反映され、香りや味に大きな影響を与えます。そのため、美味しいお米を作っている地方の地酒は味の品質も保証され、個性がはっきりしているのです。
個性的で味も良く、さらには希少価値が高いと言われるのですから、人気になるまで時間はかかりませんでした。
日本酒と清酒の違いとは?
居酒屋などで日本酒という文字を見かける際、同時に「清酒」という文字を見かける人も多いと思います。日本酒と清酒は何が違うのか?改めて聞かれても分からないという人の方が多いです。ここで改めて日本酒と清酒の違いを紹介します。
条件によって呼び名は変わる
清酒の原料である米こうじ
清酒と呼ばれるものと日本酒の違いは、主に法律によって定められている部分にあります。基本的に清酒は日本酒の仲間ですが、その中でも一定の条件を満たすものが清酒と呼ばれているのです。
清酒の定義は「原料に米、米こうじ、水、その他政令で定める物品を使用し、発酵させた醪(もろみ)をこす製法で造られた酒である」と酒税法で定められているもの。
つまりこの条件を満たしているものは全て清酒になり、逆に条件を満たしてないみりんなどは日本酒という大きな枠に入ります。
にごり酒と呼ばれる地酒
よく「にごり酒」「どぶろく」というお酒の名前をを耳にすることも多いと思います。清酒は「名前の通り澄んだお酒が清酒じゃないの?」と思うかもしれませんが、にごり酒であっても酒税法を満たしていれば清酒に。しかしどぶろくは、発酵させた醪をこす工程は行わないので清酒ではなく日本酒と呼ばれます。
地酒は3パターン?
日本酒と清酒の違いを紹介しましたが、地酒には3つのパターンがあるのです。
清酒である地酒
清酒
まずは清酒である地酒。日本酒である地酒のほとんどが、ここに分類されることが多いです。特定の地域で造られ生産量の少ない地酒は、そのほとんどが酒税法の条件を満たすので清酒であり、地酒という扱いになります。
世の中に溢れている地酒の多くがここに分類されています。
清酒ではない地酒
清酒ではない地酒のどぶろく
2つ目は清酒ではない地酒。特定の地域で造られ生産量の少ない地酒ではあるけれど、清酒ではないため酒税法の条件を満たしていない地酒になります。
清酒であるための、発酵された醪をこす工程がないどぶろくなどはこの分類に。
そもそも日本酒ではない地酒
クラフトビールなども地酒と呼ばれる
一般的に認知されている地酒は、日本酒であることが多いです。しかし元々の地酒の意味は、特定の地域で造られ全国的に流通していない「酒」。つまり日本酒と特定されているわけではありません。
日本酒ではない地酒には一体なにがあるのか?と言いますと、国内で造られたワインやビール、ウイスキーなどが挙げられます。地ビールなどと呼ばれるもの、つまりクラフトビールも地酒になるのです。
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地酒は日本酒だけのことを指すものでもない
既に説明したように地酒の中にも、日本酒ではない地酒が存在するのです。やはり認知度的にも地酒といえば日本酒!と繋がってしまうことも多いですが、日本のお酒造りの製法はまさにたくみの技。日本酒やクラフトビール、日本ワインなど世界から大きな評価を得ています。
特に日本ワインは世界からも大人気。特徴である味の繊細さが人気の秘訣だと言われています。伝統的な和食と同じような繊細な特徴を持つ日本ワインは、和食にもピッタリと言われるほど。寿司や天ぷらなどと相性が良いとされています。
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地酒の価値
しっかりとした製法が確立し、日本酒が造られ始めたのが奈良時代と言われています。そして鎌倉時代から民間でも京都を中心としたところから日本酒が造られるようになったので、地酒が広まってきたのは鎌倉時代かもしれません。
そんな地酒が最初はあまり注目されず、陽の目を浴びることもありませんでしたが、一度注目されてからは瞬く間に大人気なお酒へ。今では価値が高い日本酒としてその地位に定着しています。
日本酒の起源
お酒を飲む八岐大蛇
日本酒の起源はなんと弥生時代まで遡ることに。弥生時代には既に稲作が行われていたと言われています。
また人間の唾液に含まれている酵素で糖化させ、野生酵母によって発酵を進める「口噛みノ酒」。そして古事記に登場するスサノオノミコトが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を倒すために酒を使用するので、日本酒の起源はかなり昔になるよう。
さらには縄文時代の土器から山葡萄の種が見つかったことにより、日本酒ではないものの、お酒の概念はこの頃から存在していたと思われます。
日本酒ブランドを支えた地酒
有名だと思っていた日本酒が実は地酒かも?
今でこそ人気になり多くの人に認知されることになった地酒。人気になったからこそ地酒という言葉が曖昧になり、現代では日本酒という大きなくくりについついなりがち。
この日本酒の名前知ってる!と思っていても、実は元々それは地酒だったなんてことも。地酒ではないと間違われるほど、地酒はそれぞれのブランドがその名を日本中に轟かせ、現在の日本酒のブランドを大きく支えたのです。
実はあれも地酒?!
名前が有名でまさか地酒とは思わなかった!となるような日本酒の地酒を紹介していきます。
十四代
名前は有名なのになかなか現物にお目にかかれない!そんな地酒が「十四代」です。山形の高木酒造で造られている日本酒ですが、その入手困難な様子から「幻の酒」と言われるほど。
発酵させた醪を酒袋に入れ、圧力をかけて出てきた日本酒が十四代になります。醪を搾る工程では「あらばしり」「中取り」「責め」の3種類がありますが、十四代は中取りの工程を踏んでおり、最も品質のよい部分からお酒を造っているため旨みもたくさん。
十四代は一言で言っても「十四代 秘伝玉返し本丸」であったり「十四代純米大吟醸 七垂二十貫」などありますが、流通も少なく値段はかなり高め。
そんな十四代の味はフルーティーな甘口。かつて日本酒は辛口が一番と言われていた中で出てきた地酒になります。特に雑味が少なく誰でも飲みやすく、美味しいと感じられる十四代は、日本酒があまり好きではないと言う人からも愛されるほど。
八海山
八海山を含む多くの日本酒
新潟県の南魚沼市で造られている「八海山」。今でこそ全国にその名が知れ渡っていますが、これも立派な地酒。日本酒を調べた際や多くの居酒屋でも見かける大人気の日本酒です。
南魚沼市は日本屈指の豪雪地帯。低温多湿な冬の気候と南魚沼市の生み出す極軟水が、美味しい日本酒を造るのに絶好の土地となっています。
今でこそ八海山は流通し、全国どこにいても飲めることが増えてきましたが、その味と品質は衰えない一級品の日本酒です。八海山の特徴として挙げられるのは、「淡麗辛口」。口当たりが滑らかで酸度が低いため飲みやすく、多くの料理と相性がいいと言われています。
天狗舞
石川県の白山市で造られた「天狗舞」。手造りのこだわりが強いということで世界各国から注目されている日本酒です。天狗舞は株式会社車多酒造が造っており、日本の中でとても品質が高い日本酒として、評価を受けるほど。
水と米、米麹だけを原料とし、一から酵母を作るのでとても手間がかけられた日本酒なのです。そんな天狗舞の味の特徴は、切れのいい喉越しと酸味の効いたフルーティーな味わい。
天狗舞は超辛口純米とも言われ、繊細な味わいを出すために冷酒(5℃〜15℃)や熱燗(45℃〜55℃)でも味の濃い食事のお供にピッタリです。
地酒は大人気
現在名前が有名な日本酒は、元々地酒だったのか分からないほどの人気っぷり。全国流通していなかった地酒も現在はその人気ぶりから、多くの箇所で販売を開始しました。全国に通販も行うようになる酒蔵も増加し、以前より手にしやすくなった地酒ですが、人気が衰えることはありません。
現在も多くの美味しい地酒がどんどん世に出てきています。
地酒のサブスクも!
毎月地酒が届くようになる
今でこそ人気な地酒が多いですが、そんな地酒に加え今後人気になると言われている地酒がサブスクになっていることも!月額制で毎月1、2本届き、その日本酒に合わせたおつまみや造り手の情熱のこもった雑誌、初めての人でも分かりやすいようにガイドが同封されることもあります。
また会員制のサブスクもあり、そこでは限定醸造が届きます。これを機に今まで日本酒・地酒にあまり手が出せなかったという人も挑戦してみてはいかがでしょうか。
またサブスクでなくとも、まだ世に出ていない秘蔵の地酒をたくさん飲み比べできるお店「クランドサケマーケット」も。ぜひ一度足を運んでみてください。
地酒の飲み方・合わせ方
地酒の魅力が分かっても、どうやって飲めばいいか、どんな料理と相性がいいのか分からないという人も多いかもしれません。そこで地酒の美味しい飲み方や、料理との相性など紹介します。
日本酒の温度
日本酒には他のお酒にはあまりないような常温、熱燗など特殊な飲み方があります。
■冷酒(5℃〜15℃)
すっきりとした口当たりの冷酒
口あたりすっきり爽やかに飲みたい時には冷酒が最もおすすめです。特に日本酒らしさがよく出る、香りや雑味などが苦手な人でも飲みやすいと評判。
主に生酒や吟醸酒と言われる日本酒はこの温度がよく合うと言われています。
■常温(15℃〜30℃)
日本酒の旨味が最もわかりやすいのが常温。旨味と言ったものがよく出ていると同時に雑味も最も出やすい温度になります。そのため常温でも美味しい日本酒は、本当に美味しいお酒だと言われています。
地酒本来の味を楽しみたい。という通な人におすすめ。純米酒や本醸造酒などが合います。
■熱燗(30℃〜55℃)
米の旨味が感じられる熱燗
温めて飲むという他のお酒にはあまり見られない飲み方。熱燗にすることで米の存在感が引き立ち、コクが出ると言われています。また温めると若干アルコールが強く感じられますが、ここでも雑味を消してくれるので飲み慣れない方でも安心です。
ただし人肌に近い温度であると体に吸収されやすくなるので、あっという間に酔ってしまうことも。飲む量に気をつけ楽しく飲みましょう。また、純米酒や天狗舞のような山廃純米酒が熱燗にはおすすめ。
日本酒と合うもの
地酒には白身がよく合うとも言われる
地酒はその土地の風土がそのまま反映されており、その味の個性はさまざま。そんな地酒に合う料理は、新潟の地酒であれば新潟の素材を生かした料理というように同じ土地の料理が最も合うと言われています。
また、フルーティーな香りが特徴的なお酒は、飲み口はすっきりしていることが多いので、素材の味を生かしたおつまみなどと相性抜群。お刺身などもおすすめです。
また味わいが爽やかなお酒には、素材に甘みがあるような茶碗蒸しのような優しい味わいのものがいいと言われています。
純米酒のような米の旨味を全面的に出しているお酒は、ガッツリとしたものや濃い味の料理を食べても負けることはありません。お肉料理やクリーム系の食事でも美味しく味わうことができます。
家飲みのお供に
家で飲んでも楽しめる!
外になかなか出ることが出来ない!そんな状況でも家で楽しむことができるのがお酒です。特に現在は地酒のサブスクなども多くあるので、少しずついろんな地酒を試していきたい!お酒を思う存分楽しみたいという人におすすめ。
日本酒が合うのは和食だけではありません。洋食でも中華でも、その日本酒の特徴によってピッタリ合わせることも可能です。地酒を少し身近な存在にしてみてはいかがでしょうか。
お気に入りの地酒を見つけよう!
今回は地酒について種類や日本酒との違いなど紹介してきました。造られた土地の風土が出ている日本酒はどれも個性豊か。色々な土地を訪れて、その土地のお気に入りの地酒を探してみるのも楽しいかもしれません。
旅行に行く際は、ぜひその土地の地酒と郷土料理を存分に味わってみてはいかがでしょうか。