自分で温泉が掘れる?和歌山県の「川湯温泉」とは
川湯温泉でオリジナル露天風呂をつくってみよう!
日本最大級の露天風呂「仙人風呂」
土曜限定イベント!幻想的な「湯けむり灯篭」
1月開催!かるたを奪い合う「仙人風呂かるた大会」
川湯温泉の旅館おすすめ3選
山水館 川湯みどりや
川湯温泉 亀屋旅館
川湯温泉冨士屋
まとめ
川湯温泉のアクセス

日々を忙しなく過ごす私たちにとって、温泉でのんびりとした時間を過ごすぜいたくな時間はたまらないものです。その癒しの温泉を、自分自身の手で掘り当て浸かることのできる場所が、和歌山県にあることをご存知ですか?

今回は、世界遺産にも登録された「熊野古道」の近くに位置する、自分自身で温泉を掘り当てられる「川湯温泉」をご案内。癒しのスポットとしてではなく、アクティビティのような体験をできるユニークな温泉スポット川湯温泉で、オリジナル露天風呂を作り、子どもの頃に戻ったかのようなワクワク感を味わってきました!

自分で温泉が掘れる?和歌山県の「川湯温泉」とは

2004年、和歌山県・奈良県・三重県の3県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」が、世界遺産に登録されました。訪日観光客からの人気も高い「熊野古道」は、「熊野三山」へと向かう参詣道の総称。そのなかでも聖地と呼ばれる「熊野本宮大社」からバスに揺られること約20分、その先に、今回紹介する「川湯温泉」はあります。

川湯温泉の温泉街

のんびりとした雰囲気が漂う川湯温泉の温泉街

川湯温泉とはその名の通り、川底から源泉が沸く和歌山県の温泉のこと。熊野川の支流である大塔川の冷たい水と、川底から絶えず湧き出す70℃以上の源泉が混ざり合い、入浴に適したちょうど良い温度の温泉となるのです。泉質は単純温泉(ナトリウムー炭酸水素塩・塩化物温泉)で、神経痛・糖尿病といった効能が期待できます。

大塔川の様子

水の透き通った美しい大塔川

この川湯温泉、中心となる大塔川の周辺に温泉旅館や入浴施設があるだけでなく、「実際に自分で川を掘って温泉を作ることができる」という日本全国を見渡しても珍しい温泉なのです。毎年3月〜11月の間は、誰でも、いつでも川を掘ってオリジナル温泉を作れるという、とってもユニークなスポットとして人気を集めています。

今回は、実際に筆者が川湯温泉を楽しめる和歌山県の「大塔川」へと訪れ、自分だけの露天風呂作りに挑戦してきました!

大塔川へと行ってみよう

訪れたのは11月の後半。川湯温泉では、毎年12月〜2月の間は川をせき止めて作る、大きな露天風呂「仙人風呂」が登場するため、12月〜2月には川を掘ってオリジナル露天風呂を作ることができません。

バスの通る川湯温泉街には、多くの旅館が立ち並びます。道路から見えるのは、遠くからでも底が透けているのが分かるほど、美しい大塔川。一見するだけではここで温泉が湧いているようには見えません。

湯気の上がる様子

川から多くの湯気が上がっている

早速、大塔川の川原に降りてみましょう。川の近くまで来ると、湯気が立ち上っているのが見えてきました。湯気の中を、鴨が優雅に泳いでいく。なんとも不思議な光景です。

大塔川を泳ぐカモ

大塔川の湯気の中を泳ぐカモ

手を川の中に入れてみると、11月末とは思えないあたたかさ。決して熱くはありませんが、川遊びも思い切りできてしまいそうなぬるさです。川を掘る前から温泉の気配を感じられて、なんだかワクワクしてきました。

川湯温泉でオリジナル露天風呂をつくってみよう!

「自分で温泉を掘れる」という体験は、全国を見渡してもなかなかない貴重なもの。ここ川湯温泉では、毎年子どもから大人まで多くの人たちが川を堀り起こし、オリジナル露天風呂作りに奮闘しているのだそう。自身で温泉を掘り起こす魅力とはなんなのか…、それを探るべく、筆者自身もオリジナル露天風呂作りに挑戦してみます!

掘るポイントを探す

熊手とストップウォッチ

持参してきた熊手とストップウォッチ

今回用意した道具は、潮干狩り用の網付き熊手。水を掬わず純粋に川の石や砂のみをかき分けることができ、園芸用スコップよりもおすすめです。時間を計測できるよう、ストップウォッチも用意しました。

まずは、温泉を掘る場所を探します。周りには、いくつもの温泉の掘られた痕跡が。時間があまりない場合は、誰かが掘った穴を利用するのがおすすめです。

ほかの人が掘った温泉の穴

何人もの人が露天風呂作りに挑戦した痕跡

今回完成させるのは、足湯程度の小さなサイズのお風呂。肩までしっかりと浸かれる露天風呂を作るためには、5時間以上の時間が必要なのだそう。11月下旬は日が暮れるのも早いため、30分程度で作れる足湯に挑戦することにしました。

ただ、どうせ掘るなら、最初から最後まで自分で足湯を完成させたいもの。そのため、今回は実際に川沿いを歩き、新しく掘るポイントを探していくことに。水の中へ手を入れてみると、どこの場所でもほんのり温かさを感じられます。しかし、少し掘ってみると、滞留していた源泉がなくなってしまうのか、温度が少し下がります。

まずは、温度の下がらない源泉の湧いているポイント探し。最初に川へ降りた位置から、少しずつ川上へ移動していきます。軽く掘っては水の中に手を入れ温度をチェック。温度の下がらない、源泉の沸いているポイントを探すため、掘っては移動を繰り返します。

川底から上がる温泉

川底から源泉が湧きだしている

川の中腹辺りでは、時折ぶくぶくと泡が湧き、温泉が湧いているのが見て取れます。そのような場所を川際でも探しますが、なかなか見つかりません。

源泉が湧きだしている川際

10カ所程度掘ってみると、ようやく、なんとなく温度の下がらない場所を発見しました。

掘ると決めたポイント

掘ると決めたポイント

そこは、周囲より川幅が広がっており、川の中腹側を石で囲めば、すぐ温泉の形になりそうな場所。オリジナルの足湯を作るのにぴったりかもしれません。

自力で足湯を掘ってみる

濁り始めた川の水

にごり始めた川の水

自身で見つけた源泉の湧くポイントで、足湯作りスタートです。熊手を握る手にも、力が入ります。

最初は深さを確保するため、下へ下へと掘っていきます。しかし、川から流れてきた水が掘った周りの砂利を崩し、堀った穴が砂利で埋まってしまいました。掘った際に出てきた砂利は、川縁側でなく、川の中腹側へ置くのがよさそうです。掘るポイントよりもなるべく外側へ砂利を置くことで、掘っている穴周辺の砂利が崩れにくくなりました。

14cmの深さ

すぐに14cmの深さに

少しの時間掘るだけで、足湯の深さは14cmに。掘っては砂利を捨て、掘っては砂利を捨て。同じ作業の繰り返しです。

筆者が掘る様子

一心不乱に掘る筆者

石で川の流れを堰き止める

石で川の流れをせき止める

源泉を滞留させてお湯を確保するため、大きめの石で川の水をせき止めます。足湯が完成した後にこの大きな石を外すことで、濁ったお湯も流れていく、という計算です。

掘り始めて35分経過

掘り始めて35分経過

しばらくの時間掘り続けますが、一定の深さからそれ以上足湯が深くなりません。お湯の温かさもそれほど変わらず、完成予定の30分が経過。なぜでしょうか。

掘っていた場所

掘っていた場所。周りの水もはけてしまい、一向にお湯がたまらない

あたりを見渡してみると、川下にショベルカーの姿が。掘るのに夢中で気がつきませんでしたが、12月〜2月に川湯温泉で開催される「仙人風呂」という巨大浴場の準備のため、ショベルカーによって川幅が広げられているようです。

それによって川の水がどんどん周りへと流れていき、私の足湯の場所を流れていた水も、どんどん流れていってしまったのです。

ショベルカー

川下でショベルカーが「仙人風呂」造りの作業をしている

水も深さもなくなった

筆者の足湯の水は消え、堀った穴もなくなった

再挑戦!別のスポットを新たに探す

ただ、これで終わるわけにはいきません。ショベルカーの影響を受けながらも、足湯に丁度いい深さになりそうなところを探します。3mほど離れたところに、ほどよい深さの場所を見つけました。

30分以上無心に砂利を掘り続けてきたため、体の疲労も蓄積してきました。熊手での足湯作りは諦め、近くにいた方にお借りした、大きなシャベルでザクザクと川を掘っていくことに。

ぬるい足湯

ぬるめの足湯の出来上がり

10分程度掘ると、深さは読み通り足湯に丁度いい深さになりました。見た目は完全に足湯用のプチ露天風呂。源泉は湧いているものの、量が足らないようで全然温かくありません。見た目としてはパーフェクトですが、温泉としては悔しい結果に。体が悲鳴を上げ始めているので、ここで足湯作りは断念です。

近くの方が掘った露天風呂にお邪魔しました

少し赤くなった足

近くの方の露天風呂は熱くて最高

せっかくなので、足湯に浸かって帰りたい。近くの方が掘っていたオリジナル露天風呂にお邪魔させていただきました。温かさを超えて熱いくらいの温度で、川の水を混ぜたら、ちょうど良い足湯ができあがります。

湯気の漂う大塔川

湯気の漂う大塔川を背に川湯温泉にリベンジを誓う

疲れた足に、足湯がじんわり染み渡ります。次こそ川湯温泉で絶対に熱い足湯を掘ってみせるとリベンジを誓いました。

ちなみに、しゃがみながら夢中で掘っていると、知らない間にズボンがとっても汚れることがわかりました。オリジナル露天風呂を作る時には、着替えを持っていった方がいいかもしれません。

どろだらけのズボン

どろだらけになったズボン。夢中になって頑張った証

日本最大級の露天風呂「仙人風呂」

仙人風呂

約15m×40mの川湯温泉の天然露天風呂「仙人風呂」(写真提供:熊野本宮観光協会)

今回の足湯作りの際にショベルカーが造っていたのが、毎年11月20日頃から準備が始まる大浴場「仙人風呂」。川湯温泉に12月から2月末までの冬季限定で登場し、無料で入浴できる日本最大級の露天風呂です。

仙人風呂という名前は「『仙人』のお告げによって発見されたと言われているから」「『千人』の人が入れる大きさがあるから」の2つの理由からつけられています。

開放時間は6:30〜22:00。大雨など天候によっては中止となる場合もあります。年に1~2度は大雨で流されてしまうそうで、修復まで10日ほどかかる場合もあるのだそう。

仙人風呂の様子

大自然の中、解放感たっぷり(写真提供:熊野本宮観光協会)

冬の川湯温泉の冷たい空気に当たりながらも、体は芯まで温まる。大きく足を伸ばしても誰にもぶつからないほど、解放感たっぷりの仙人風呂は、自然を全身で感じられる温泉です。入浴方法も決められていません。タオルを巻いての入浴でも、水着を着ての入浴でもOK。なかには上からTシャツを羽織って入浴をする人も。無料の更衣室が利用できます。

土曜限定イベント!幻想的な「湯けむり灯篭」

湯けむり灯篭

ロウソクの明かりが美しい川湯温泉湯けむり灯篭(写真提供:熊野本宮観光協会)

昼間解放感に溢れる仙人風呂は、土曜の夜限定で灯篭がともるロマンチックな露天風呂に変わります。「湯けむり灯篭」と呼ばれるこのイベントでは、手づくりの灯篭一つ一つをライトアップ。仙人風呂の湯面に優しく温かい揺らめきを写します。

お正月などの特別な日に土曜が被っていても開催されます。ただし、小雨でも雨が降れば中止に。20:00〜22:00の2時間だけ見られるロマンチックな夜を楽しんでみてください。

かるたを奪い合い!「仙人風呂かるた大会」

かるたが浮く様子

たくさんのかるたが仙人風呂に浮いている(写真提供:熊野本宮観光協会)

1月に行われる川湯温泉の一大イベント「仙人風呂かるた大会」。仙人風呂の中に浮く、杉の木が使われたかるたを取って獲得枚数を競います。

かるた大会の様子

大人も子どもも真剣になってかるたを取り合う(写真提供:熊野本宮観光協会)

使うのは「熊野地かるた」という民話や説話に沿って作られたかるた。4人1組でチームを組み、仙人風呂に浮かんだ杉板のかるたを取り合っていきます。参加は1カ月前から受け付けている事前予約制(定員に達し次第受付終了 / 参加費:1組1,000円)。県内はもちろん県外からも多数の人々が集い、大人も子どもも夢中になって楽しめますよ。

川湯温泉の旅館おすすめ3選

大塔川でオリジナル露天風呂を作ったり仙人風呂を満喫したりするのもいいですが、川湯温泉には、温泉街が広がります。ここには、川湯温泉や近くの熊野古道を存分に満喫できる旅館がたくさん立ち並んでいます。
最後に、宿泊して川湯温泉を全力で楽しみたいという人にぴったりなお宿を3館紹介します。

山水館 川湯みどりや

川湯みどりや外観

川湯温泉の入り口に立つ「山水館 川湯みどりや」

客室90室、駐車場の最大収容数は60台(無料)という規模を誇る「山水館 川湯みどりや」。

みどりや露天風呂

川湯温泉川湯みどりやの開放感たっぷりの露天風呂

一番の魅力は、なんといっても自然と一体になれる露天風呂。源泉にもこだわり、川湯温泉の温泉施設で唯一、館内から直接川をボーリング(掘削)しています。露天風呂は男女混浴ですが、 男性はタオル着用・女性は脱衣場に露天風呂専用の浴衣(湯着)があるので安心して利用できます。

飲用温泉

飲用の温泉

お宿の前には、飲用の温泉(無料)が。温泉は浸かるだけでなく飲むことで効能が期待できるというものも多くありますが、ほとんどの旅館の温泉は飲用NG。なかなかお目にかかれない飲用の温泉にも、ぜひ挑戦してみてください。

川湯温泉 亀屋旅館

亀屋旅館外観

国の有形文化財に登録されている「川湯温泉 亀屋旅館」

和の風情ある外観が魅力的な「川湯温泉 亀屋旅館」。川湯温泉に古くからある本館は、昭和時代初期に建てられた木造2階建ての和風建築で、国の有形文化財にも登録されています。カエデが使用された階段の踏み板など、今では珍しい木材を使用しているのが特徴のひとつ。10室設けられた客室はすべて和室で、どれも川に面した造になっており、川湯温泉の美しい川の流れと自然豊かな景観を客室から存分に眺められます。

趣深い玄関

川湯温泉 亀屋旅館の上品さとともに、どこかなつかしさも漂う玄関

玄関から陽が射す様子や、軒先の縁側の景色など、ふるさとのような懐かしさを感じられます。和の情緒たっぷりの館内で、「何もしないというぜいたく」を味わってみるのもいいですね。

玄関土間の様子

ほっとする玄関がお出迎え

川湯温泉冨士屋

川湯温泉富士屋外観

全客室大塔川に面している「川湯温泉冨士屋」

川湯温泉から熊野古道への無料送迎サービスも行っている旅館「川湯温泉冨士屋」。

レンタルできるアイテムたち

水着や釣り道具など貸し出しサービスが充実

大塔川でオリジナル露天風呂を作る際に必要な大きなシャベルや、仙人風呂入浴時にあるとうれしい水着も、同旅館で借りることができます。

大塔川に生息する「ウグイ」や「ハヤ」などの釣りにも挑戦できるよう、竿と餌の貸し出しまで行っているサービスの良さ。釣れた魚は、夕食時に唐揚げにしてそのままいただけるという、まさに川湯温泉を思う存分満喫できるお宿といえるでしょう。

富士屋館内温泉

かけ流しの館内温泉(写真提供:川湯温泉富士屋)

半露天風呂の美しい館内温泉もおすすめ。源泉かけ流しでリラックスできます。

子ども大人も本気で遊べる川湯温泉のオリジナル露天風呂づくり

今回オリジナルの足湯を掘ってみて、川湯温泉にはただオリジナルの温泉を作るだけではない、大きな魅力があると感じました。
大人になって、本気で遊ぶ機会はなかなかありません。大人が、子どものようにスコップを持ちひたすらに川を掘る。

そして、砂のトンネルを作るように、慎重に川と温泉をつなげていく。子どもに戻ったかのような時間が、オリジナル露天風呂づくりの一番の楽しさでした。

和歌山県の川湯温泉で、ぜひみなさんも本気の大人遊びを楽しんでみてください。

川湯温泉のアクセス

JR紀勢本線 新宮駅からのアクセス

熊野御坊南海バス / 本宮大社前行
→【川湯温泉】
奈良交通 / 大和八木駅(南)行
→【川湯温泉】

JR紀勢本線 紀伊田辺駅からのアクセス

龍神バス 熊野本宮線 / 発心門王子行
→【川湯温泉】