「鮎菓子普及協会」に聞く! 岐阜の銘菓「鮎菓子」とは?
お気に入りの「鮎菓子」見つけ方
鮎菓子の人気店舗3選
1. 100年以上の歴史を持つ「玉井屋本舗」
2.「緑水庵」の「飛あゆ」は種類豊富な味わいが魅力!
3. 岐阜最小鮎菓子に出会える「甘泉堂総本店」
鮎菓子をもっと楽しむサービスやグッズにも注目!
まとめ

旅の楽しい思い出にもなるご当地お土産。美味しいことはもちろん大切ですが、見た目がかわいいと喜ばれますよね。今回紹介するのは、岐阜県名物の「鮎菓子」。その名の通り、鮎(アユ)の形をしたお菓子のことで、岐阜県内のさまざまなお店で目にする、まさに名物菓子と呼べる存在です。

どれも同じと思われがちな鮎菓子ですが、実は店舗ごとに少しずつ鮎の顔や形が違っていて、味にもさまざまな種類があります。そもそも鮎菓子とはどうして誕生したのか、そしてお店ごとにどんな違いがあるのか。鮎菓子の魅力を探っていきます。

※営業時間や価格は一時的に変更になっている可能性があります。必ず事前にご確認ください。

「鮎菓子普及協会」に聞く! 岐阜の銘菓「鮎菓子」とは?

2つの鮎菓子

岐阜の銘菓「鮎菓子」

岐阜の人気土産「鮎菓子」は、清流長良川の若鮎をイメージして作られた鮎型のスイーツです。やわらかな求肥をカステラ生地でくるみ、鮎型に形成し、鮎の顔を焼き付けたものを「鮎菓子」と呼んでいます。

岐阜エリアで鮎菓子を販売している店舗は30店舗以上あり、お店ごとにこだわりの鮎菓子が売られています。

鮎菓子普及協会の藤吉さん

「岐阜鮎菓子普及協会」代表の藤吉里美さん

鮎菓子の認知をさらに広めていこうと、2010年には「岐阜県鮎菓子普及協会」が立ち上げられています。協会では、全国に岐阜の鮎菓子を普及するために「ひあゆ丸」というゆるキャラも作り、全国に向けてPRを行っています。

代表である伸光製菓株式会社の藤吉里美さんは、「鮎の形を模した和菓子は全国各地で作られているようですが、中身に求肥のみを入れているのは岐阜と京都に多いと言われています。多くの地域では鮎菓子は夏限定のお菓子であることが多いのですが、岐阜では一年中売っているのが特徴です」と教えてくれました。

ひあゆ丸

鮎菓子をPRするマスコットキャラクター「ひあゆ丸」

鮎菓子を作るそれぞれのお店によって、顔の焼き印が違うのも特徴。カステラの焼き具合や求肥のやわらかさ、もっちり度合いなども少しずつ違うため、お気に入りの一本を探し歩くのも岐阜観光の楽しみ方のひとつかもしれません。

「鮎菓子」はいつからあったの?

そもそも、鮎菓子はいつ誕生したものなのでしょうか?なんと、岐阜にゆかりのある織田信長も、甘い物が大好きだったことで知られています。

「当時は現在のような鮎菓子の形ではなかったと思いますが、ルーツはそのくらいまでさかのぼるのではないかと考えています」と藤吉さん。

緑水庵の鮎菓子

「緑水庵」の鮎菓子は岐阜市内マップが描かれたパッケージ

宣教師が日本に持ち込んだ、甘い「南蛮菓子」に興味を示した織田信長。客をもてなした献立の中に、「羊皮餅(ようひもち)」という、求肥のようなお菓子があったり、「ふの焼」という和風クレープのようなものがあったという記述があり、そのあたりが鮎菓子の起源ではないかと考えられているそうです。

岐阜城復元図

絢爛豪華であったと考えられている岐阜城の復元図

信長が城主を勤めたこともある岐阜城の麓では、近年発掘作業が行われています。発掘されているのは信長が客人をもてなしたり政務を執ったりするための「居館跡」。接待上手として知られた信長は、絢爛豪華だったのではないかと言われているこの場所で、客人に料理をふるまっていたといわれているのだそうです。そんな歴史を感じながら鮎菓子を楽しむのも一興ですね。

お気に入りの「鮎菓子」見つけ方

自分好みの鮎菓子を見つけるためには、その特徴ごとに選んでみるとよいでしょう。お店ごとに異なる特徴は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

餡で選ぶ

鮎菓子の求肥

さまざまなタイプがある「鮎菓子」の求肥餡

岐阜県の一般的な鮎菓子の餡は求肥ですが、求肥のみのものもあれば、求肥とあんこが一緒に入っているものもあります。最近では、はちみつやフルーツをブレンドしたものなど、店舗によってさまざまな工夫がなされています。

シンプルな味を楽しみたいなら求肥のみのものがおすすめですが、ほかの素材とミックスされた求肥も新しい発見があります。また、店によってその分量やモチモチ度合いなど特徴がありますので、色々食べ比べてお気に入りの餡を探してみてください。

大きさで選ぶ

さまざまなサイズの鮎菓子

手のひらサイズから5㎝サイズのものまで大きさも豊富

基本的には片手に乗るくらいの大きさの鮎菓子ですが、お店によって多少の大小があります。

なかには5㎝ほどの「ミニ鮎菓子」を作っているお店も。ご自身の好みに合わせてさまざまなサイズを選ぶことができるのもうれしいポイントのひとつです。

焼き印された鮎の表情で選ぶ

鮎菓子メイン

お店ごとに違った表情を浮かべる鮎菓子たち

岐阜の鮎菓子は顔やヒレが焼き印で付けられており、お店ごとに一つひとつその表情が異なるのが面白いポイントです。笑っているようなものや、ちょっとおとぼけ表情のものなど、かわいらしい表情に癒されます。

岐阜鮎菓子普及協会の藤吉さんによると、パッケージなしでもどの店の鮎菓子かを当てられるという、コアなファンも増えてきたのだとか。鮎の顔にもそれぞれ個性があることがわかります。

鮎菓子の人気店舗3選

さまざまな鮎菓子がありますが、岐阜に訪れたらぜひチェックしておきたい、人気のお店を3つ紹介します。

1. 100年以上の歴史を持つ「玉井屋本舗」

岐阜の鮎菓子を語る上で「玉井屋本舗」は外せません。創業100年を超える老舗で、長良川鵜飼乗り場のある川原町に店舗を構えています。

登り鮎

「登り鮎」(10個入り1,674円)(写真提供:玉井屋本舗)

看板商品は、初代店主が作りあげた「登り鮎」。その特徴は鮎のスラっと美しいフォルムと、カステラ生地の滑らかさです。飽きのこない上品な甘さに、虜になる人も多い逸品です。

やき鮎<
「やき鮎」(2個入り 648円)(写真提供:玉井屋本舗)

「やき鮎」も昔から人気のシリーズ。厳選された小麦粉、玉子、砂糖に山芋を混ぜ合わせ、水を一切使用せずに鮎の形に形成されて焼き上げられたお菓子です。

リトアニアの風

「リトアニアの風」(1本 275円)

2019年には「登り鮎」新商品である玉井屋クラッシックシリーズで「リトアニアの風」も登場。

第二次世界大戦中、リトアニアでユダヤ人を救った杉原千畝(すぎはら ちうね)が岐阜県八百津町出身であることから、リトアニアと岐阜の経済交流が始まり、その最初の事業として「純粋なリトアニアの蜂蜜」の輸入が始まりました。
新商品「リトアニアの風」の求肥には、リトアニア産のはちみつとベリーが加えられています。

他にも、3年間熟成させた本みりんを使用した「福来鮎」や、長良川でとれた天然鮎の魚しょうと「なれずし」でできた「極mi鮎」も人気。「極mi鮎」は白熟(しろじゅく)クリームと、玉井屋こだわりのつぶあんが見事にマッチした逸品です。

下剋上鮎

「下剋上鮎(大)」(1枚 540円)、「下剋上鮎(小)」(4枚入り 1,080円)(写真提供:玉井屋本舗)

2019年12月より販売の始まったのは新商品である「下剋上鮎」。

「やき鮎」と作り方は同じであるものの、材料が異なります。「やき鮎」が小麦粉を使っているのに対し、「下剋上鮎」の鵜の部分には大麦粉を、味として黒糖又は抹茶を、鮎の部分には岐阜産はつしもの米粉と和三盆を使用するというこだわりが。

伝統漁法である「鵜飼」では常に鵜に飲み込まれる鮎ですが、その鮎が「下剋上」を起こすというユーモラスなストーリーを持っています。岐阜が誇る知将である明智光秀にちなみ、手ごわい相手に立ち向かう時の「げん担ぎ」として手にしてほしいお菓子。

【御菓子司 玉井屋本舗 基本情報】
住所:岐阜県岐阜市湊町42
電話:058-262-0276
営業時間:8:00~20:00
定休日:水曜
公式サイト:御菓子司 玉井屋本舗

2.「緑水庵」の「飛あゆ」は種類豊富な味わいが魅力!

飛あゆ

さまざまなテイストの味がそろう「飛あゆ」(1個 110円)

岐阜で7店舗を展開する和菓子屋「緑水庵」では「飛あゆ」という商品が人気です。キャラクターのようなかわいい表情を浮かべた鮎の焼き印と、跳ねる鮎をイメージし、尻尾がきゅっと上がっているのが特徴。

カステラ生地はしっとりなめらかで、数種類の卵を季節に応じて使い分けるのがこだわり。緑水庵の「飛あゆ」は種類も豊富で、プレーン味のほか、大人気のいちご味、長良川温泉若女将会プロデュースのブルーベリー味、岐阜県立岐阜商業高等学校とコラボしたお茶味など、地元の人たちと趣向をこらした商品開発にも力を入れています。

イートインスペース

「緑水庵 鏡島店」のイートインスペース

鏡島店は清流 長良川をイメージした造りで、店内には鮎菓子の形をしたテーブルセットが設置されています。イートインでお抹茶をいただきながら一服するのもいいですね。

【緑水庵 鏡島店】
住所:岐阜県岐阜市西荘2-6
電話:058-255-3003
営業時間:9:00~19:00
公式サイト:緑水庵

3. 岐阜最小鮎菓子に出会える「甘泉堂総本店」

小さな小さな鮎菓子

甘泉堂総本店の「小さな小さな鮎菓子」(1箱 1,100円)

甘泉堂総本店も創業は明治12年の老舗和菓子屋です。こちらの「小さな小さな鮎菓子」はそのネーミング通り、岐阜随一の小ささの鮎菓子でサイズは5㎝ほど。大人の親指くらいのサイズです。一般的な鮎菓子と比較すると、その小ささが分かります。

季節で異なる求肥

オリジナリティがあり、季節ごとに変わる求肥も魅力

春はよもぎ、夏は紫蘇、秋、冬は柚子と、季節ごとに違った求肥を楽しむことができます。平成天皇が植樹祭にご臨席された際、献上されたことでも知られており、上品な甘さと一口で食べられる手軽さが魅力です。

【甘泉堂総本店】
住所:岐阜県岐阜市美殿町46
電話:058-262-2533
営業時間:9:00〜18:00(日曜、祝日は~12:00)
公式サイト:甘泉堂総本店

鮎菓子をもっと楽しむサービスやグッズにも注目!

鮎菓子をより多くの人に知ってもらおうと、岐阜ではさまざまな取り組みが行われています。

「鮎菓子タクシー」で気軽に鮎菓子巡り

岐阜市を拠点とする日本タクシーでは、2018年10月より「鮎菓子タクシー」を走らせています。

鮎菓子タクシー

オリジナルラッピングされた「鮎菓子タクシー」

「鮎菓子」をモチーフにデザインされた車体や、鮎菓子クッションなどが載った車内は県外のお客さんへのPRにも一役買っています。

鮎菓子のクッション

キュートな鮎菓子のクッションとともに走行

貸切りで予約すると、鮎菓子に詳しい女性ドライバーが観光案内と鮎菓子店巡りをしてくれるサービスも。市内で4軒ほどの店を回り、お店の方の話を聞きながら鮎菓子を食べることができます。鮎菓子の奥深い魅力を探りたい人はぜひ利用してみてください。

【鮎菓子タクシー 概要】
・日本タクシー
住所:岐阜県岐阜市鶴田町3-7-1
電話:058-246-4511

自分だけの一匹が作れる!「鮎菓子づくり体験」

鮎菓子作り

自分だけの鮎菓子作りに挑戦

「緑水庵 川原町店」では、1日2組限定で「鮎菓子づくり体験」を行っています。鮎菓子の生地を焼き、求肥を入れて、焼き印の代わりにチョコレートで顔を描いてできあがり。

完成した鮎菓子

チョコレートで好きな顔を描く

焼きたてはとても香ばしく、鮎菓子が一層おいしく感じられます。3匹の鮎菓子にワンドリンクがついて1名1,030円。リーズナブルさも魅力です。

【鮎菓子づくり体験 概要】
・緑水庵 川原町店
住所:岐阜県岐阜市湊町48
電話:058-215-5476
料金:1,030円 / 1名(2名より受付)
所要時間:約60分
※前日までに要予約

「鮎菓子」モチーフの小物もかわいい

鮎菓子をモチーフにした小物も注目を集めています。

鮎菓子ペンケース

「鮎菓子ペンケース」(8,580円)と「鮎菓子ペンキャップ」(880円)(写真提供:NPO法人ORGAN)

こちらは、鮎菓子の形を生かして作られた「鮎菓子ペンケース」。作家によって一つひとつ手作りされており、本物の質感にそっくりな牛ヌメ革を使っています。使うごとに手に馴染み、風合いが変わっていきます。

【長良川デパート湊町店 基本情報】
住所:岐阜市湊町45
電話:058-269-3858
営業時間:10:00~18:00
定休日:年末年始 ※臨時休業あり
WEBショップはこちら

色々な鮎菓子からお気に入りを見つけよう

岐阜の銘菓、鮎菓子を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

毎年、5月には「鮎菓子たべよー博」という、岐阜の鮎菓子が一同に会し、食べ比べなどを行う博覧会が岐阜市内で開催されています。地元を上げて鮎菓子を盛り上げようと取り組みが進み、2018年には約9,000人の参加者を記録しました。

岐阜市全域で力を入れている鮎菓子は、和菓子屋のほか、駅の売店やお土産物屋などでも購入できますよ。