仙台と言えば、牛たんが有名ですが、ほかにもたくさんの名物グルメがあります。長年愛され続ける地元のソウルフードや、地域の人々の手で誕生した新名物などなど、この記事では11の仙台名物をピックアップ。
歴史ある冷やし中華、見た目も美しい青葉餃子、地元で愛されるおでん屋……etc。仙台に行ったら食べたい味をご紹介します。
※本記事では牛たんを紹介していませんが、牛たんのお店をお探しの方は「仙台牛たん振興会」の公式サイトにある店舗マップが便利です。
TOP画像:マーボー焼きそば(写真提供:[公財]仙台観光国際協会)
※本記事に掲載の情報は2023年6月時点のものです。諸事情により変更となる場合があります
仙台のご当地グルメ・ソウルフード
冷やし中華-仙台が元祖
暑い夏も食欲をそそる冷やし中華(写真提供:仙台市観光課)
冷やし中華は名前に『中華』が付くので、中国発祥だと思われますが、実は日本生まれの料理で、冷やし中華発祥の地とされる店は日本に2つあります。ひとつは仙台市青葉区錦町の「龍亭」。もうひとつは東京都千代田区神保町の「揚子江菜館」です。
仙台での冷やし中華の発祥は1937年(昭和12年)。当時は冷房設備が普及しておらず、暑い夏に中華料理は人気がありませんでした。
そこで「龍亭」の初代店主が、暑い季節に楽しむ麺として試行錯誤し考案したのが「凉拌麺(りゃんばんめん)」です。
「凉拌麺」の「拌」は、中国語で「和える」という意味。タレと麺、具を混ぜて食べる冷たい麺ということです。「⿓亭」公式サイトによると、創業者の資料に「昭和⼗⼆年、全国の業界に先駆けて、涼拌麺を開発し」という記録が残されているそうです。
現在冷やし中華は全国的に普及していますが、仙台発祥と言われる夏の風物詩なのです。
●参考サイト:龍亭
仙台マーボー焼きそば-クセになる美味さ
麺とマーボーをしっかり絡めていただきたいひと皿(写真提供:[公財]仙台観光国際協会)
1970年代前半、仙台市内の中華料理店「まんみ」のまかないとして食べられていたマーボー焼きそば。それを見た常連さんの要望で、正式なメニューとして取り入れるようになりました。
2013年、ご当地ネタを紹介する某テレビ番組で「仙台市民のソウルフード」として取り上げられたことをきっかけに、「仙台マーボー焼そば」は新たな仙台名物として定着しました。
マーボー焼きそばとはその名の通り、焼きそばの麺にまマーボーがかかった料理です。条件は次の通り。
1 麻婆を使い、具は豆腐に限定しない
2 麺は焼くか揚げたものとする
3 宮城県中華飲食生活衛生同業組合の認定人が認定したものとする
出典:[中国菜館まんみ公式ホームページ/仙台マーボー焼きそばとは?]より
元祖マーボー焼きそばの店「まんみ」では、使用する麺を一度せいろで蒸したあと、パリパリになるまで乾燥させ、お湯で戻してから焼きます。そうすることで外はパリパリ、中はもちもちとした食感になります。また「まんみ」のマーボーは辛すぎないので、子どもから大人まで楽しめます。
現在「仙台マーボー焼きそば推進委員会」が発足し、仙台市内では50以上のお店でマーボー焼きそばが味わえます。
●参考サイト:中国菜館まんみ
仙台あおば餃子-緑の皮が美しい新名物
仙台あおば餃子はお店でいただけるほか、販売店では自宅用のものも購入できます
仙台あおば餃子は2009年(平成21年)、市内で生産された「雪菜」を皮に練りこみ誕生した餃子。杜の都・仙台からイメージされる青葉を表現した緑色の餃子で、2010年(平成22年)5月の仙台・青葉まつりでデビューしました。2011年(平成23年)には商標登録もされています。
具材は仙台産のものを使い、野菜たっぷりでとてもヘルシー。地元のスーパーで販売されているほか、仙台市内30店舗以上の飲食店で楽しめます。
仙台市では、仙台あおば餃子の提供店や販売店を紹介する、仙台あおば餃子提供店MAPを発行しています。また、仙台あおば餃子はじめ、全国の有名餃子が出店するイベント「全国餃子まつりin仙台」も開催。なお2023年(令和5年)は、6月時点では「全国餃子まつりin仙台」の開催情報は公開されていません。
仙台づけ丼-近海の魚介がたっぷり
仙台づけ丼はお店によってネタ、見た目、価格はさまざま。お店ごとにオリジナルのものがが味わえます(写真提供:[公財]仙台観光国際協会)
「仙台づけ丼」は東北大学の堀切川教授のアイデアをもとに考案されたご当地グルメです。
宮城県仙台湾付近は、国内でも有数の好漁場。魚介類の種類が多く確認され、白身魚の代表である、ヒラメ・カレイ・スズキ・タイなどもたくさん獲れます。宮城の海で獲れた魚介類だけを使い、宮城県産の米を使い、宮城の寿司職人の技でつくりあげたのが「仙台づけ丼」です。
「仙台づけ丼」は白味魚をメインとした地元産の魚介類を使用し、隠し味に仙台味噌を効かせたタレを使うのが特徴。条件は次の通り。
1 地場産の魚を使う
2 宮城県産米のすし飯を使う
3 料金を明示する
4 各店、独自性を出す
5 づけ丼が真の宮城名物となるように日々精進する
出典:[仙台づけ丼 公式サイト/仙台づけ丼とは]より
ネタは季節や仕入れによって変わるため、訪れる時期でも、違った「仙台づけ丼」を味わえます。
●公式サイト:仙台づけ丼 公式サイト
せり鍋-身体が喜ぶヘルシー鍋
根ごといただくのが定番。具材の肉は鶏肉や鴨肉がよく使われます
せり鍋はせりが主役の鍋料理。出汁や具材はいろいろですが、共通の特徴はせりを根っこの部分まで食べることです。せり鍋のシーズンは「根せり」が流通する9月~翌年3月にかけて。4〜6月は「葉せり」の時期になります。
宮城県はせりの生産量日本一。昔から「せり鍋」が仙台近郊の郷土料理として親しまれてきたほか、お雑煮にせりを入れる地域もあります。特に仙台市のお隣・名取市で生産される「仙台せり」は特産野菜として知られており、「仙台せり」を使った鍋料理は「仙台せり鍋」と呼ばれています。
郷土料理だったせり鍋が広く知られるようになったのは、2004年(平成16年)頃からといわれています。仙台市にある居酒屋が提供をはじめたのを、全国放送のテレビ番組が取り上げ一気に知られるようになったとされています。
芋煮(仙台芋煮)-山形の芋煮とはひと味違います
ほくほくの里芋をたくさんの野菜ともにいただきます
芋煮というと山形のイメージがあるかもしれませんが、仙台の郷土料理でもあります。仙台(宮城)では、里芋を豚肉、大根、人参、白菜、ねぎ、こんにゃくなどの具材と一緒に鍋で煮込みます。
山形との違いは、豚肉を使い、味噌で味付けした豚汁に近いもの、という点。豚汁との違いは里芋を使うかどうかです。山形の芋煮は牛肉に醤油味。芋煮の時期になると、お互いに「それは芋煮じゃない」論争が巻き起こります。
仙台まはた山形で「芋煮会」を行うときは、開催地の味にしますが、東京などホームでない場所で芋煮会を開くときは、宮城風にするか山形風にするかで、だいたいひと悶着あり。それぐらい地元に愛されている郷土料理です。
仙台では、9〜10月になると河原などで、鍋を囲む芋煮会が行われます。親睦を深める行事として地域や学校、職場で行われ、秋の風物詩となっています。最盛期は10月。特に週末は河原で芋煮会を楽しんでいる人たちを多く見かけます。
●参考サイト:芋煮(旅東北)
せんぎゅう丼-仙台牛を1000円台で!
2021年7月、宮城県の村井知事が会長を務める仙台牛銘柄推進協議会などが、仙台牛を使った新名物として「せんぎゅう丼」の提供を始めました。
「せんぎゅう丼」は最高級牛肉の仙台牛をメインとしつつ、1000円台(1000~1999円)で食べられるメニューのこと。「1000(せん)円台で仙(せん)台牛(ぎゅう)を気軽にトライアル!」がキャッチコピーです。
調理方法はお店によってさまざま。焼肉、すき焼き、牛丼、ローストビーフなど。2021年当初は8店でせんぎゅう丼を提供していましたが、2023年現在は10店となっています。
ちなみに、「仙台牛」とは以下の条件を満たすもののこと。
1 黒毛和種であること
2 仙台牛生産登録農家が個体に合った適正管理を行い、宮城県内で肥育された肉牛であること
3 仙台牛銘柄推進協議会が認めた市場並びに共進会等に出品されたもの
4 (公社)日本食肉格付協会枝肉取引規格が、A5またはB5に評価されたもの
出典:[仙台牛銘柄推進協議会/仙台牛とは]より
宮城県では年間2万頭が食肉牛として出荷されていますが、「仙台牛」の名前で出荷されるものはそのうち約4割です。
●公式サイト:みやぎのご馳走 せんぎゅう丼(仙台牛銘柄推進協議会)
地元に愛されるお店
おでん三吉(さんきち)
定番ネタ・大根はじっくり10時間かけて柔らかく焚き上げています(写真提供:おでん三吉)
1949年(昭和24年)、仙台でおでん屋台として始まった「三吉」。現在は仙台市国分町の稲荷小路にお店を構えており、地元の人にはお馴染みのお店です。女性1人でも入れるようなアットホームさがあり、レトロなたたずまいは観光客にも人気。
お店の看板ネタはかんぴょうの鉢巻きをした「イイダコ」や、手間暇かけて作るふわふわの「にら玉」など。おでん出汁は創業以来変わらない味。陸奥湾(むつわん)で水揚げされるイワシの焼き干しと昆布だけで出汁を取っています。
現在は三代目の田村さんが初代である祖父からの味を守っています。
●公式サイト:おでん三吉
●住所:宮城県仙台市青葉区一番町4-10-8 稲荷小路(定禅寺通側)
「ひょうたん揚げ」の阿部蒲鉾店
アメリカンドッグのようにほんのりと甘みがあります
仙台を代表する食べ歩きグルメがひょうたん揚げです。1985年(昭和60年)の、第1回「仙台・青葉まつり」で提供するために考案されました。
大きな丸いかまぼこに衣をつけ、2つ串に刺してからりとあ揚げればできあがり。できたての温かいものは格別です。地元の方はもちろん観光客にも大人気。
ひょうたん揚げを提供する「阿部蒲鉾店」は仙台名物「笹かま」で有名なお店。本店では改装に合わせ、ひょうたん揚げの売り場がリニューアルされました。阿部蒲鉾店本店でのみケチャップを「普通」「辛口」の2種類から選べます。
「楽天モバイルパーク宮城店」では、限定の黒いひょうたん揚げも販売されています。黒い理由は衣に竹炭を混ぜているから。中の蒲鉾は紫芋が練りこまれています。
●公式サイト:阿部蒲鉾店
●販売店舗:
阿部蒲鉾店 本店
(宮城県仙台市青葉区中央2-3-18)
阿部蒲鉾店 楽天モバイルパーク宮城
(仙台市宮城野区宮城野2-11-6 楽天モバイルパーク宮城バックネット裏2階)※プロ野球試合開催日のみの販売
ほか
「三角あぶら揚げ」の定義とうふ店
表面はカリッと、中はふっくらとした食感が美味しい三角あぶら揚げ。表面のカリカリ感は、二度揚げすることによって生まれています
仙台の中心部から車で約1時間のところにある定義如来西方寺(じょうぎにょらい さいほうじ)。縁結びにご利益があるとされていて年間約100万人の観光客が訪れる人気のスポットです。定義如来西方寺の門前町に、1890年(明治23年)、「定義とうふ店」が開業しました。
定義とうふ店で参拝客に油揚げの販売を始めたところ大人気に。今では1日で1万枚が売れるのだとか。
いたくだときは、醤油とニンニク七味をかけて。サイズは大きめですが、油のしつこさはまったくなく、女性や子どもでも1人1枚は、余裕で食べられます。おみやげ・お持ち帰り用も販売されていますよ。
●公式サイト:定義とうふ店
●住所:宮城県仙台市青葉区大倉字下道1-2
大衆食堂 半田屋
セルフサービス形式の店舗が多く、メニューも豊富なため、自分の適量を、自由な組み合わせで食べられるのが半田屋(写真提供:Instagram @kazimetalさん)
1954年(昭和29年)に仙台駅前のジャンジャン横丁に「めしのはんだや」が開店しました。現在は「大衆食堂 半田屋」と名称が変わっていますが、開店当初からの「毎日でも食べたくなる ほっとする味」は変わっていません。
仙台近郊を中心にチェーン展開していますが、21店舗中14店舗は宮城県外にあります。半田屋のメニューは、昔ながらの「おふくろの味」なので老若男女、あらゆる世代の人に地域の食堂として親しまれています。
●公式サイト:大衆食堂 半田屋
まとめ
気になるグルメは見つかりましたか? 仙台牛、魚介を使ったメニューはもちろんのこと、中華メニューや、郷土料理もさまざまあります。
宿は素泊まりにして、夕食は仙台の街中で楽しむというのも、仙台の旅のひとつの楽しみ方。ランチやディナー、はたまたおやつとして、仙台の名物グルメを楽しんでみてください。
Text:hougaku_omori Edit:Erika Nagumo
Photo(特記ないもの):PIXTA 写真AC