この記事では、発酵食品の中でも人気の「納豆」の中から、納豆大好きライターが厳選したご当地商品を7つ紹介します。
いつものスーパーで購入する納豆とは一味違う、各地域で愛される伝統的な変わり種納豆を知り、実際に食べてみませんか?
店舗限定商品もあるので、観光の際にはぜひ各店を訪れてみてください。
<<関連記事>>
■【茨城県で納豆三昧】納豆大好きライターがおすすめの観光モデルコースを紹介!
■【納豆アレンジ】全国各地の郷土料理やおすすめレシピを納豆大好きライターが紹介
ご当地変わり種納豆にはどんなものがある?
全国には様々な変わり種のご当地納豆がありますが、おおまかに3つに分けられます。
①塩や麹を加えて保存性をよくした納豆
②納豆をより美味しく食べるために加工した納豆
③地元で伝統的に食べられている糸引き納豆
ここからは、順番におすすめのご当地変わり種納豆を紹介します。
【ご当地変わり種納豆】塩や麹を加え保存食に
塩や麹などを加えることで保存性を高めた納豆は全国的にかなり存在します。
その理由は、日本には昔から塩や麹を使って味噌や醤油などの発酵食品をつくる文化があったからです。
塩や麹などを加えた納豆は、塩辛納豆や五斗納豆、干し納豆などに分類され、それぞれの地域で名前や製法が異なるものが伝承されています。
青森県ではおかず納豆、岩手県では干し納豆、山形県では雪割納豆、栃木県ではひしお納豆、静岡県では浜納豆、京都では大徳寺納豆…など、地域によって名称はさまざまですが、基本的にはほぼ同じものです。
それでは、代表的な商品をいくつか紹介していきます。
(京都)大徳寺納豆本家磯田「大徳寺納豆」
「大徳寺納豆」は、京都市北区紫野の大徳寺門前で生産されてきた納豆。
粘り気のない塩辛納豆に分類される納豆で、遣隋使により中国から日本へ持ち込まれました。日本の塩辛納豆の元祖といわれています。
大徳寺は京都市北区紫野にある臨済宗大徳寺派の大本山。大徳寺へ仕えた磯田家の先祖が、寺の保存食として食べられていた大徳寺納豆の製法を継承し、昭和に入ってから大徳寺納豆 本家 磯田(以下、磯田)を創業しました。
大徳寺納豆本家磯田のお店は、大徳寺総門のすぐそば
磯田の大徳寺納豆は、室の中に棲みついている自然の麹菌で発酵させる、昔ながらの製法で作られています。とても手間暇がかかる作り方ですが、その分上質な一品に仕上がるのです。
大徳寺納豆は一般的には調味料として使いますが、お茶漬けにもよく合います。食べなれている人は大徳寺納豆をおつまみにして、お茶やお酒を楽しむそうです。
器に盛られた大徳寺納豆(写真:大徳寺納豆本家磯田)
私が実際に食べた際には、強い塩気が印象的でした。ごはんと一緒に食べてみたところ、滋養ある味わいが口の中に広がり、美味しさを堪能できました。
ちなみに、大徳寺納豆単体をアイスクリームに入れても美味しいですよ。大徳寺納豆の塩味や風味によって、菓子の甘さが引き立ちます。
また、パスタやピザにアクセントとして加えると料理のうま味が増します。京都観光の際にはぜひお店へお立ち寄りください。
大徳寺納豆本家磯田
販売店住所:京都市北区紫野下門前町41(大徳寺東門前)
紹介商品:
大徳寺納豆(100g袋入り、760円)
大徳寺納豆(80g箱入り760円ほか)
公式サイト:大徳寺納豆本家磯田
(山形)株式会社ゆきんこ「雪割納豆」
「雪割納豆」の原型は、山形県置賜(おきたま)地方の農家に伝わる伝統食「五斗納豆」。五斗納豆は、春の農繁期に食べるために冬の間に仕込む保存食で、納豆入りのもろみのようなご当地納豆です。
そんな伝統的な納豆の製法を継承するため、2014年に設立されたのが「株式会社ゆきんこ」です。
「雪割納豆」のパッケージ。かわいらしいゆきんこが目印(写真:株式会社ゆきんこ)
雪割納豆は、納豆菌で1次発酵させた煮大豆に、米糀(こうじ)と塩を加えて2次発酵させて作ります。この工程により、大豆のタンパク質が分解され熟成し、深いこくとうま味をもった塩糀納豆になるのです。
発酵由来のアミノ酸たっぷりの塩糀納豆は、ぜひ醤油をかけずにお召し上がりください
ごはんにのせればおかわりがとまらなくなる美味しさで、雪国の伝統食の奥深さと生活の知恵を感じます。中でも私のおすすめは、みそ汁に入れること。ほかにも、おにぎりの具やお茶漬けのトッピングなど幅広く活用できます。
また、大根おろしやねぎといった薬味との相性もよく、薬味に少量の雪割納豆を添えるだけで簡単なおつまみにもなります。要冷蔵品なので、現地で購入の内には保冷グッズをお忘れなく。
株式会社 ゆきんこ
販売店:山形県内の道の駅やアンテナショップなど
紹介商品:雪割納豆各種(150g袋入り、432円ほか)
公式サイト:株式会社 ゆきんこ
(茨城)水戸元祖 天狗納豆「ほし納豆」
ほし納豆は茨城の伝統食で、かなり硬い納豆です。ガリガリとかみ砕きながらお茶をすすると、納豆の滋味深い味を楽しめます。
水戸元祖 天狗納豆(天狗納豆株式会社)は、1910(明治43)年創業の水戸納豆の伝統を継承する老舗の納豆メーカー。
天狗納豆のほし納豆は塩を加えて乾燥させたシンプルなほし納豆で、乾燥によって納豆のうま味が凝縮されています。
ほし納豆は塩味の乾燥納豆。ご当地納豆の中でも食べやすい納豆かもしれません
私も茨城を訪れた際に食べてみましたが、納豆の風味が濃縮されていたのを覚えています。単品で味わうのはもちろん、塩味が強いので、サラダに入れたりクラッカーのトッピングにしたりしても良いでしょう。
個人的には、おにぎりの具にするのもおすすめです。ほし納豆がほどよく柔らかくなり、塩味や納豆のうま味を感じられます。一度食べればあなたも病みつきになるかも?
天狗納豆株式会社
販売店住所:茨城県水戸市柳町1-13-13
紹介商品:ほし納豆(60g袋入り、270円ほか)
公式サイト:天狗納豆株式会社
【ご当地変わり種納豆】プラスアルファでより美味しく
納豆に他の食材を加えることで、納豆単品とはまた違った美味しさを引き出すことができます。
また形状を工夫することで、食べ方の幅も広がります。
ここからは、納豆に一工夫加えた形のご当地変わり種納豆を紹介します。
(茨城)水戸元祖 天狗納豆「そぼろ納豆」
水戸市の伝統的な保存食「そぼろ納豆」。納豆に切干大根を合わせて、塩としょうゆベースの調味料に漬け込んで作る塩気の効いた総菜です。
納豆づくりが盛んな水戸市で、余った納豆を長期間食べられるようにと作られたのがそぼろ納豆の始まり。
一般的なそぼろ納豆イメージ(写真:農林水産省Webサイトより)
昔から各家庭で作られており、それぞれの家庭の味を楽しめますが、水戸元祖 天狗納豆でも独自の味付けで製造販売しており、人気を博しています。
そぼろ納豆はおかずとしてのみならず、お酒のおつまみやお茶漬けのトッピングとしても美味しく食べられます。ごはんのおかずにすれば、茶碗何杯でも食べられてしまいそう。
水戸市を訪れた際にはぜひお買い求めを。冷蔵保存で2週間ほどの賞味期限です。
天狗納豆株式会社
販売店住所:茨城県水戸市柳町1-13-13
紹介商品:そぼろ納豆(1パック150g入り、378円ほか)
公式サイト:天狗納豆株式会社
(秋田)有限会社ふく屋「納豆汁の素」
すり潰した納豆を混ぜたみそ汁「納豆汁」は、秋田県南部に伝わる郷土料理。現地ではハレの日の料理として親しまれており、現在でも正月にはお雑煮ではなく納豆汁を食べる習慣があるのだとか。
秋田の伝統食、納豆汁(写真:農林水産省Webサイトより)
そんな秋田の伝統食である納豆汁の素を製造・販売するのが、秋田の手作り納豆専門店「ふく屋」。
1959(昭和34)年の創業以来、材料と製法にこだわって作るふく屋の高級納豆は、ふんわりと柔らかく、豆の味がしっかりしていると評判です。
ふく屋の「納豆汁の素」は、粒納豆と引き割り納豆を独自比率で混ぜ合わせ、納豆汁用にすりつぶした手間のかかった一品。
ふく屋の「納豆汁の素」はこのパッケージが目印(写真:有限会社ふく屋)
みそ汁に入れて飲めば、消化性と栄養吸収性が高まり、美味しく健康的に納豆を食べることができます。また、ふく屋の「納豆汁の素」は納豆だけで作られているため、塩分を取りすぎる心配もありません。
紹介した「納豆汁の素」以外にも、納豆商品を多く取り扱うふく屋。「最高級の大豆を使って最高級の納豆を作り、届けたい」という思いで作られる納豆はどれも絶品で、現在も多くの人々から愛されています。
有限会社ふく屋
販売店住所:秋田県秋田市大町1-3-3
紹介商品:
納豆汁の素(すりつぶし納豆)(100g×10個、2980円)
公式サイト:二代目福治郎
【ご当地変わり種納豆】天然素材にこだわる
大豆や水、納豆菌、藁など納豆を作るために必要な材料にこだわった納豆専門店や納豆メーカーは日本全国に多々あります。
記事内では全てを紹介できないため、今回は特にユニークなご当地納豆を厳選して紹介します。
(北海道)豆の文志郎「くま納豆 北海道のわら納豆 小粒」
「くま納豆」は高級納豆で有名な「豆の文志郎」の納豆ブランドの一つです。
豆の文志郎の特徴の一つは、大きな工場ではなく小さな工房で納豆作りを行っていること。材料や製法はもちろん、梱包までこだわった納豆は、全国で高い評価を得ています。
中でも「くま納豆」は、G8主要国首脳会議「北海道洞爺湖サミット」の朝食メニューに選ばれたほか、全国納豆鑑評会においても、2015年から2018年まで4年連続で受賞するという快挙を成し遂げています。
この記事で紹介する「くま納豆 北海道のわら納豆 小粒タイプ」は、「ゆきしずか」という品種の大豆を使った納豆で、全国納豆鑑評会にて2度受賞した実績がある一品です。
私も実食した際、ほんのり香る藁と発泡スチロール容器にはない独特の風味を持つ藁つと納豆に、感激したのを覚えています。
かつての日本の納豆は、稲わらにもともと付着している納豆菌で大豆を発酵させる製法が主流でした。しかし次第に、納豆菌以外の雑菌が大豆発酵に影響を及ぼすことが危惧されるようになり、現在の純粋培養した納豆菌で大豆を発酵させる製法が一般化していきました。
しかしそうした流れの中で、豆の文志郎はあえて地元・北海道生まれの納豆菌で大豆を発酵させることに強くこだわり、独自研究を重ねました。
その結果、北海道産の稲わらから天然の納豆菌採取に成功。現在もその菌を自家培養させた「文志郎菌」を用い、澄んだ空気の中、ヒーリングサウンドが流れる「文志郎蔵」で納豆作りを行っています。
こうした技術研さんにより、くさみや渋みの少ない、やさしい風味の納豆が出来上がるのですね。商品購入はオンラインショップのほか、北海道登別市にある豆の文志郎本店や百貨店などで。鮭節納豆や黒豆納豆といったユニークな納豆商品もおすすめですよ。
豆の文志郎 登別本店
販売店住所:北海道登別市幌別町4-12-1
紹介商品:
北海道のわら納豆 小粒(6本入り3300円)
公式サイト:豆の文志郎
(茨城)横島醤油納豆有限会社「こも納豆」
こも納豆は、かつて日本の納豆作りの主流だった、稲わらにもともと付着している納豆菌で大豆を発酵させる方法で作られる納豆。
ふっくらと柔らかくゆでた粒の大きい大豆には、必要最低限の納豆菌を与え、あとは稲わらに付着した天然の納豆菌で発酵させます。
こうしてできた納豆は、食べると豆の甘さをよく感じられるうえ、やわらかい食感で糸を引きすぎないという特徴を持ちます。昔からこの納豆に親しんできた地元の人々にとっては、まさに「地域の味」といえるでしょう。
かあちゃん納豆のこも納豆は、稲わら「こも」に包まれた1kg前後もある巨大な納豆(写真提供:instagram 【公式】anzai.tv 🕊️さん)
そんなこも納豆で人気を博すのが、地域に約90年の歴史がある横島醤油(しょうゆ)納豆有限会社。創業時から現在まで、国産原料にこだわり、地元の食文化に根付いた風味の大豆発酵食品などを作り続けています。
横島醤油納豆有限会社の売れ筋、「かあちゃん納豆」ブランドの「こも納豆」の特徴はその大きさ。なんと1kg前後もある巨大な納豆なのです。会社そばの直売所「とりたて野菜かあちゃん」などで販売しています。
人気ですぐに売り切れてしまうため、購入を希望する際には事前に電話で取り置きをお願いするのがおすすめです。土日も購入できますが、売り切れ次第閉店するのでご注意を。
店舗では冷蔵便での配送も受け付けています。こも納豆の賞味期限は冷蔵で14日間。一度に食べきれない場合も、小分けして冷凍すれば1カ月はもちます。ぜひ自宅で茨城伝統の納豆をご賞味あれ。
横島醤油納豆有限会社
販売店住所:
茨城県つくば市今鹿島5997(とりたて野菜かあちゃん)
紹介商品:
こも納豆(大)(約1300g、1350円)
こも納豆(小)(約900g、980円)
【ご当地変わり種納豆】を楽しもう!
この記事では、様々なこだわりや地域の伝統によって生み出された、変わり種のご当地納豆を紹介しました。
この記事を機に、自分が住んでいる地域のご当地納豆について調べてみるのも面白いかもしれませんね。
これから寒い冬がやってきますが、納豆を食べることで血流改善・免疫力維持などの健康効果が期待できます。
通販でのお取り寄せもできるので、この機会にぜひご当地の変わり種納豆を食べてみませんか?
Text:額田善之(ぬかだ・よしゆき)
北海道と東北以外の県はすべて旅行した旅ライター。オートバイでツーリングをして名物や銘菓を食べるのが趣味のアウトドア派。岡山県出身。納豆の健康効果を紹介する個人ブログ「納豆人甚Gene」を運営中。健康や旅行、武道、キャンプなどのSEOライティング執筆を受託。少林寺拳法有段者で「武道・道場ナビ」でも執筆中。
Edit:Sakura Takahashi
Photo:PIXTA(特記ないもの)
参考文献:
全国納豆協同組合連合会『納豆近代五十年史』(全国納豆協同組合連合会/2004年)
木内幹・永井利郎・木村啓太郎『納豆の科学』(建帛社/2008年)
参考:
うちの郷土料理|農林水産省/天狗納豆株式会社公式サイト/大徳寺納豆本家磯田公式サイト/株式会社ゆきんこ公式サイト/有限会社ふく屋公式サイト/豆の文志郎公式サイト/のう地|一般社団法人 農山漁村文化協会/とれたて野菜かあちゃん|茨城を食べよう/横島醤油|ふるなび/納豆人甚Gene