納豆は日本全国で愛される伝統発酵食品です。栄養価も高く、健康効果も期待できることから、スーパーフードとして人気を博します。
しかし一方で「関西では納豆をあまり食べない」という通説があるのをご存知でしょうか。
この記事では納豆好きライターがそんな通説を覆すべく、関西地方の中心都市・大阪の人気納豆専門店を紹介しながら、関東と関西の納豆事情について考察していきます。
納豆に興味がある人は、ぜひ最後までお読みください。
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大阪のおすすめ納豆専門店3選
かつて大阪は「納豆不毛の地」と称されていました。しかしそんな呼称を覆すように、大阪では現在多くの納豆専門店が営業しています。
まずは大阪での納豆人気の高まりの一端を担う専門店を3軒ご紹介。大阪を訪れた際にはぜひ訪れてみてくださいね。
(大阪市)稲ワラの天然納豆菌で仕込む「らくだ坂納豆工房」
看板商品の谷町納豆(500g入り、1200円)(写真:谷町納豆)
らくだ坂納豆工房は、大阪城近くの昔の町並みが残る谷町にあり、20年近く大阪で愛される天然納豆を製造しています。
日本酒をメインとした居酒屋「味酒(うまざけ)かむなび」を営む伊戸川氏がお店で提供する納豆料理が評判となり、「家でも食べたい」という声に応えて誕生しました。
らくだ坂納豆工房の納豆は、稲ワラの天然納豆菌だけで発酵させるため、培養された一般的な納豆菌による発酵よりも時間を要します。
「納豆は苦手だけど、ここの納豆だけは食べられる」というお客さんの声もあったようです(写真:谷町納豆)
納豆に使用する主な大豆は、大粒でうま味の強い北海道産の「トヨマドカ」。限定品として、有機栽培の黒豆などを用いた商品もときおり販売しています。
1パック500g入りと、一般的な納豆に比べて大容量な点もポイント。一般的なパック納豆とは異なり、毎回好きな量を食べられるのは嬉しいですね。
出来立ては大豆の甘さが感じられるため、何もつけずにそのまま、あるいは塩を少し振ってお召し上がりください。
冷蔵保管などで時間が経過した場合も、納豆らしい風味とうま味が増して美味しく食べることができますよ。
らくだ坂納豆工房のスタッフの皆さん(写真:谷町納豆)
【らくだ坂納豆工房(谷町納豆)】
●住所:大阪府大阪市中央区谷町4-8-29
●販売時間:火~日曜12:00~17:00(月曜定休)
●公式サイト:谷町納豆(らくだ坂納豆工房)
(大阪市)斬新な納豆かけごはんが人気「※710」
ランチの納豆かけごはんは18種類、トッピングは30種類から選べます(写真:TENTOMUSHI株式会社)
「※710(コメナナイチゼロ)」は納豆料理専門店として、2019(令和1)年に大阪市でスタートしました。
ランチに納豆かけご飯が食べられるお店として有名ですが、ディナーでは、「納豆まみれの納豆三昧コース」や5食限定の「ふわトロ納豆カルボナーラ」などの納豆創作料理を味わえます。
オープンから2023(令和5)年3月までの約4年間で納豆かけごはんを10万9700食以上提供した実績があり、人気のテレビ番組『秘密のケンミンSHOW極』(読売テレビ)でも取り上げられました。
(写真左上から時計回りに)好きな納豆かけごはんに小鉢2種やデザートなどが付いた「ランチセット」、オクラ・とろろ・自家製なめたけがトッピングされた「ねばねば(750円)」、「ふわトロクリーミー納豆カルボナーラ(1100円)」、マグロのたたき、刻み海苔、ネギがトッピングされた「ネギトロ(930円)」(写真:TENTOMUSHI株式会社)
2023(令和5)年10月からはオンラインストア限定で「発酵」にこだわった新しい納豆「SOYRESS(ソイレス)」を開発し、販売開始。
「SOYRESS」は発酵が浅い納豆と深い納豆の2個セットの商品で、ガラス容器に200gずつ入って販売されています。タレは付属せず、納豆のおいしさの原点である「発酵」を味わうというコンセプトの商品です。
地元の納豆メーカーとの協業により誕生したこだわりの「SOYRESS(200g×2個、3740円」はやや高価に思えるかもしれませんが、食べればきっと納得するはず。
納豆好きな方への贈り物や、ちょっとしたご褒美に自分へのプレゼントとして、気になる方はぜひお買い求めを。
(写真左)SOYRESS、(写真右)店舗外観と内観(写真:TENTOMUSHI株式会社)
【※710】
●住所:大阪府大阪市西区靱本町1-13-4 金丸ビル 1階
●公式サイト:納豆料理の専門店 ※710
(大東市)こだわりの納豆×豊富なトッピング「小金屋食品株式会社」
豊富な種類をそろえ見た目にもきれいな納豆BAR小金庵の納豆(写真:小金屋食品株式会社)
小金屋食品株式会社は、大東市にある1962(昭和37)年創業の老舗の納豆専門店。「納豆不毛の地」と言われていた大阪で、半世紀以上にわたり納豆作りに励んできたそうです。
そして、長年の経験と熟練の技によりクセのないまろやかな納豆に仕上げることで、納豆が苦手な人にも好まれやすい商品を生み出しました。
現在は、大豆の種類とトッピングを選び自分好みの納豆を購入できる「納豆BAR小金庵」という直営店を、大阪と東京の2ヵ所で運営。
納豆BAR小金庵、大阪店の内観(写真:小金屋食品株式会社)
大豆は大粒・小粒・ひきわりの3種から、トッピングは玉ねぎ・ととろ昆布・うずら卵など11種類から選べます。
小金屋食品株式会社の納豆は国産大豆のみを使用し、化学調味料不使用の一品。オリジナルの白しょうゆタレは、大豆や納豆のうま味を引き出します。
名物の「納豆BARなにわら納豆(40g×3個、594円)」は、稲ワラに自生する天然納豆菌を使った納豆で、濃厚な味わいとワラの香りが楽しめます。
ほかにはない「竹姫納豆」はぜひ食べてみたいもの。「納豆BARなにわら納豆」は納豆好きからの熱い支持を受け、人気No.1だそう(写真:小金屋食品株式会社)
間伐材の竹を容器にした「竹姫納豆(90g入り、648円)」は、強い糸引きとモチモチ食感、すっきりとした味わいが特徴。
限定生産のため、購入個数は1人1個までと制限されています(購入は会員のみ可能)。ギフトとしても人気が高い、大阪の納豆を試してみてはいかかでしょうか?
【小金屋食品株式会社】
●住所:大阪府大東市御領3-10-8
●公式サイト:納豆BAR小金庵
【直営店:納豆BAR小金庵 大阪土佐堀店】
●住所:大阪府大阪市西区土佐堀2-3-12-102
●営業時間:10:00~19:00(木曜定休、祝日の場合は営業)
【直営店:納豆BAR小金庵 東京蔵前店】
●住所:東京都台東区蔵前3-18-4 ライフコア蔵前10
●営業時間:10:00~19:00(水曜定休、祝日の場合は営業)
いま納豆にお金をかける人が増えている!
ここからは納豆好きライターによる考察です。国の機関による統計や関西在住であるライター自身の肌感覚から、関西の納豆事情について考えていきます。
納豆はこの20年で全国的に消費が拡大しています。健康志向の高まりに加え、多種多様な納豆が開発・販売されていることが理由でしょうか。
実際に身の回りでは「蒲焼き風味のタレ」「青じそ風味のタレ」など、同じ納豆のタレでもユニークなものが以前よりも多く目につくように感じられます。
常温保管できるうえ持ち運びやすいフリーズドライ納豆(※1)や粉納豆(※2)も、高い利便性で人気を集めているようです。
※1:フリーズドライ納豆とは冷凍した納豆を真空中で40℃くらいの温度をかけて水分を除去したもの。栄養素の劣化や損失がほとんどないうえ、冷蔵保管が不要(納豆菌が再発酵できないため)
※2:乾燥納豆をすりつぶして粉末状態にしたもの。調理に使いやすい
納豆にお金を使うのはどんな人?
参考:総務省統計局「家計調査年報2002-23年」(図:ライター作成)
総務省統計局がまとめた「家計調査年報」によると、全国の1世帯あたりの納豆年間購入額は2002年度よりも2023年度の方が増加しています。
「単身世帯」「二人以上世帯」「総世帯」で区分すると、特に「単身者」で購入額に大きな増加が認められました。これはコロナ禍が始まった2020年度も同様です。
2023年度の納豆購入額は2002年度と比べて、総世帯では1.05倍、二人以上世帯では1.07倍、単身世帯では1.45倍もの増加になっています。
地域別の納豆購入額の差は?
参考:総務省統計局「家計調査年報2002-23年」(図:ライター作成)
次に、「世帯別の納豆購入額」を地域別に分けて見てみましょう。すると、特に2002年度〜2023年度の間に「沖縄」で大きく増加しているのが分かります。
一方、東北と関東ではわずかに減少しましたが、減少の割合は非常に少なくほぼ同じと考えてよいでしょう。
沖縄や四中国、近畿などの納豆をあまり食べない地域で納豆が食事に出る回数が増えた結果、全国的な納豆購入額の底上げにつながったのかもしれませんね。
都市ごとの納豆購入額に差はある?
参考:総務省統計局「家計調査年報2002-23年」(図:ライター作成)
それではもっと細分化して、主要都市ごとの納豆購入額を見てみましょう。
2002年度に年間の納豆購入額が2500円未満であった都市は、2023年度に全て増加しました。2002年当時は納豆購入額が少なかった都市では、この20年間で納豆購入額が増加したといえそうですね。
香川県のとあるスーパーにて。納豆コーナーがまるでセレクトショップのよう(写真:ライター撮影)
先日立ち寄った香川県のとあるスーパーの納豆コーナーは岡山より充実しており、約22種類もの納豆が陳列されていました。
香川では定番のにおいが少ない「なっとういち」など地元のローカル商品のみならず、茨城の「生板納豆」まで置いてあるのは驚きでした。
現在、納豆の高い栄養価と機能性が改めて評価されてきています。岡山や香川のスーパーでも納豆の品数が以前よりも格段に増えている現状は、全国的に納豆へ注目が集まっていることを示す一端かもしれません。
全国的にも有名な大手納豆メーカーは、消費量が少ない関西圏や西日本に積極的に進出中。また前述のように品ぞろえを充実させるスーパーも増えてきました。
関西圏で納豆を広めようと、関西納豆工業協同組合が「納豆の日」を制定したのは1981年のこと。制定から40年あまり、もはや「関西ではあまり納豆を食べない」という通説は過去のものになってきているのではないでしょうか。
各地で人気の納豆を食べに行きましょう
この記事では「関西ではあまり納豆を食べない」という通説をもとに、かつて「納豆不毛の地」と呼ばれた大阪のおすすめ納豆専門店や、通説自体について紹介・考察してきました。いかがだったでしょうか?
納豆は比較的手に取りやすい価格ながら、栄養価も高くバリエーション豊富な点が魅力。納豆が苦手な人でも食べやすい納豆や加工品は全国各地で作られているので、きっと好みの納豆が見つかるはず。
これからも関西のみならず、日本全国で納豆食が盛り上がっていくと良いですね。
Text:額田善之(ぬかだ・よしゆき)
北海道と東北以外の県はすべて旅行した旅ライター。オートバイでツーリングをして名物や銘菓を食べるのが趣味のアウトドア派。岡山県出身。納豆の健康効果を紹介する個人ブログ「納豆人甚Gene」を運営中。健康や旅行、武道、キャンプなどのSEOライティング執筆を受託。少林寺拳法有段者で「武道・道場ナビ」でも執筆中。
Edit:Sakura Takahashi
写真:PIXTA(特記ないもの)
参考:総務省統計局|家計調査年報(家計収支編)/全国納豆協同組合納豆連合会 納豆PRセンター/プレスリリース「発酵”を味わう「SOYRESS」の誕生秘話/岡山の納豆専門店「経木納豆まめいち」で納豆巻きと甘酒を堪能!おいしくておすすめです。|納豆人甚Gene/【納豆のすごい効果のまとめ】健康維持に役立つ理由を徹底解説!|納豆人甚Gene/【健康維持に役立つスーパーフード】である納豆のルーツと正体を徹底解説!|納豆人甚Gene