納豆に代表される「無塩大豆発酵食品」とは?
大豆と発酵
無塩大豆発酵食品「テンペ」とは?
テンペの食べ方
テンペの作り方
全国で作られるテンペ
(東京都)日本人向けテンペを開発「登喜和食品」
(長野県)手作りテンペ専門店「OneFace」
(滋賀県)インドネシアの職人による「Rusto」
(岡山県)黒豆グラッセの「日東酵素」
(岡山県)生テンペを味わえる「テンペ料理 発酵亭」
無塩大豆発酵食品「テンペ」を食べてみましょう

みなさんは、テンペをご存じでしょうか?テンペとは、インドネシアのジャワ島で古くから作られている大豆発酵食品です。

たんぱく質が豊富でヘルシーな大豆を使うため、実は日本でも、納豆・味噌・醤油以外の大豆発酵食品として製造されています。

この記事では、納豆大好きライターが、テンペの詳細や主要メーカー、テンペ料理を食べられるお店を紹介。ぜひ観光がてら、各店を訪れてみてはいかがでしょうか?

※記載している商品の価格(税込)は2024年3月時点のものです。今後、価格が変更される場合があることをあらかじめご了承ください

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納豆に代表される「無塩大豆発酵食品」とは?

日本の代表的な大豆発酵食品

日本の代表的な大豆発酵食品
無塩大豆発酵食品とは、大豆に塩を加えずに発酵させた食品のこと。身近な食品でいえば、納豆や豆乳ヨーグルトなどがあります。

今回紹介するテンペも、無塩大豆発酵食品の一つ。

反対に、大豆に塩を加えて発酵させた有塩大豆発酵食品の代表的な食品には、味噌や醤油などがあります。

大豆と発酵

豆類、特に日本で昔からよく食べられている大豆は育てやすく、たんぱく質などの栄養が豊富ですが、生で食べると消化不良を引き起こします。

そのため、大豆は加熱調理して食べる必要性がありますが、煮豆にすると保存できる期間が短くなってしまうのが難点。

そこで日本を含むアジア諸国では、「煮豆の保存」のため、古くから「発酵」という手段が用いられてきました。

日本の糸引き納豆のように、現在でも国民食として人々に親しまれている多くの大豆発酵食品は、それぞれの地域に適した形に進化したものであり、各地の特色を反映しています。

無塩大豆発酵食品「テンペ」とは?

ヘルシー食材「テンペ」

ヘルシー食材「テンペ」
テンペは、インドネシアのジャワ島で500年以上前から作られている、伝統的な大豆発酵食品です。

チーズのような見た目から「東洋のチーズ」とも呼ばれるテンペ。アメリカではそのヘルシーさと栄養価の高さが評価され、45年ほど前からヴィーガンやベジタリアンの人々の間でブームになっています。

戦後まもなく、アメリカから日本にもテンペが伝わり、国内でもテンペ製造の機運が高まりました。当時は、特に岡山県で製造が盛んだったようですが、現在は全国で作られています。
さまざまな料理に使いやすい点もポイント

さまざまな料理に使いやすい点もポイント
近年、大豆が良質なたんぱく質源や栄養源として見直される動きのなかで、日本でもテンペが再注目されつつあります。

納豆と同じく、テンペは健康成分も豊富。代謝や肌の維持を担う「ビタミンB群」などの栄養成分や、血圧低下作用のあるペプチド、整腸効果のある食物繊維など、うれしい作用が満載です。

テンペの食べ方

焼いたり揚げたり煮たり……。もちろんスイーツにも使えます

焼いたり揚げたり煮たり……。もちろんスイーツにも使えます
基本的に、テンペそのものにはあまり味がありません。とはいえ発酵食品らしく、少し酸っぱい香りがするため、薄くスライスして揚げ物や炒め物にして食べるのが一般的です。

煮物やカレーなど、味の濃い料理に入れても良いでしょう。また、炊飯時にお米の上にひとかけらテンペを入れると、大豆のうまみが溶けだし、ごはんがおいしく炊きあがります。

テンペの作り方

テンペは、酢を加えて煮た大豆に、クモノスカビの一種であるテンペ菌を加えて発酵させて作ります。

[1]洗浄…………大豆をよく洗って汚れを落とします
[2]浸漬…………大豆を水に漬け、水を吸わせます
[3]剥皮…………大豆の皮を剥きます
[4]加熱…………酢を加えた水に大豆を入れて煮ます
[5]水切…………水気を切った大豆を40C°程度まで冷まします
[6]播種…………大豆にテンペ菌をふりかけよく混ぜます
[7]充填…………小さな穴を開けた容器につめます
[6]発酵…………約31℃の室(むろ)に入れ発酵させます
[7]保存…………冷蔵庫等で冷やします
[8]完成!

全国で作られるテンペ

テンペ作りや販売を行う企業やお店は、実は日本全国にたくさんあります。ここからは、ライターおすすめのテンペ商品やテンペ料理店を紹介します。

ぜひご自身でも購入したり現地を訪れたりして、テンペに親しみを持ってもらえたらうれしいです。

(東京都)日本人向けテンペを開発「登喜和食品」

左「丸大豆テンペ(356円)」右「黒大豆テンペ(475円)」

左「丸大豆テンペ(356円)」右「黒大豆テンペ(475円)」(写真:株式会社登喜和食品)
無塩大豆発酵食品の製造と卸し業を営む株式会社登喜和食品。「食べものは命をすこやかに育むもの」を信条に、日々丁寧に発酵微生物と向き合いながら、原材料はもちろん梱包にまでこだわった商品をつくり届けています。

登喜和食品は、1949(昭和24)年の創業時は納豆づくりを行っており、その後2004(平成16)年から大豆テンペづくりを始めました。

登喜和食品のテンペの大きな特徴は、その味わい。テンペを作る際、登喜和食品では大豆とテンペ菌に加え米酢と米粉を使用しており、本場インドネシアのテンペとは一味違った美味しさに仕上がるのです。

登喜和食品の看板商品「生てんぺ(100g、356円)」は、加熱せずそのまま食べても、調理に使っても美味しい点がポイント。より食べやすい「黒生てんぺ(100g、475円)」もおすすめです。購入は公式サイトや工場直売店「大豆の里」で。日持ちのする「丸大豆テンペ」シリーズも好評です。
テンペを使ったサラダやお弁当、サーターアンダギー

テンペを使ったサラダやお弁当、サーターアンダギー(写真:株式会社登喜和食品)
大豆の発酵食品で、ヘルシーかつ美味しい食生活を始めてみませんか?テンペ料理のレシピは公式インスタグラムで紹介中。自宅で作れるものばかりなので、この機会にぜひお試しあれ。

【株式会社登喜和食品】
●住所:東京都府中市西原町1丁目10番地の1
●問い合わせ:042-361-3171
●公式サイト:株式会社登喜和食品
●公式インスタグラム:㈱登喜和食品

(長野県)手作りテンペ専門店「OneFace」

テイクアウト専門のお弁当屋「テンペキッチン」外観

テイクアウト専門のお弁当屋「テンペキッチン」外観(写真:ビジネスフロー合同会社)
複合サービス事業を提供するビジネスフロー合同会社の食品ブランド「OneFace」。OneFaceは現在、肉や魚など動物性食材の代わりにテンペを使用したテイクアウト弁当販売店「テンペキッチン」の運営と、テンペの手作りキット販売を行っています。

テンペキッチンで使用しているテンペは自家製のため、リーズナブルにテンペ料理を味わえるのがうれしいですね。「テイクアウトの弁当」という販売形式も、テンペ初心者の方にとっては手が出しやすいのではないでしょうか。

定番の「テンペ照焼丼」​「テンペルーローハン風弁当」「テンペ麻婆豆腐弁当」「テンペ豆腐ハンバーグ弁当」に加え、2024年春からは手作りのピタパンを使った「ジューシーナステンペピタパン(590円)」「ルーローピタパン(590円)」が登場しました。
テンペキッチンの定番弁当各種

テンペキッチンの定番弁当各種(写真:ビジネスフロー合同会社)
水・木・金曜日の11:00〜13:30の営業ですが、売り切れ次第閉店となります。購入の際は、事前に電話や専用フォームからの予約をお忘れなく。

また、より多くの人にテンペを身近に感じてもらおうと、テンペを一から自分で作る「手作りキット」も用意。少量から作り始められるキットなので、テンペ初心者の方にもおすすめの商品です。オンライン通販でお買い求めください。
簡単テンペ作りセット(1100円+送料〜)の内容

簡単テンペ作りセット(1100円+送料〜)の内容(写真:ビジネスフロー合同会社)
【OneFace】
●住所:長野県茅野市宮川4303-1-2
●問い合わせ:050-3743-9803
●公式サイト:OneFace
●公式インスタグラム:テンペ専門店 OneFace
●弁当専用フォーム:テンペキッチン予約注文決済

(滋賀県)インドネシアの職人による「Rusto」

ルストノさんをはじめ家族一丸となってテンペ作りを行っています

ルストノさんをはじめ家族一丸となってテンペ作りを行っています(写真:Rusto 株式会社)
代表を務めるインドネシア出身のルストノさんは、日本で20年以上もテンペ作りを続けており、その名は日本在住のインドネシア人たちの間でも有名。母国・インドネシアでは「日本のテンペ王」と呼ばれるほどです。

結婚を機に来日したルストノさんは、テンペ発酵のため不純物の少ない天然水を求めて京都から滋賀の山中に移り住み、以来家族とともにひたむきにテンペと向き合ってきました。
テンペづくりの様子

テンペづくりの様子(写真:Rusto 株式会社)
厳選した国産大豆と、滋賀県比良山系の天然水を使用することにこだわり、最大限テンペ菌の発酵作用を高めるため徹底した温湿度管理を行っているRusto(ルスト)。

特に国産大豆のテンペ「ルストテンペ(240g、480円)」と滋賀県産大豆のテンペ「滋賀県産特別栽培大豆テンペ(690円)」は、ほんのり甘く美味しいと評判です。
左「ルストテンペ(240g、480円)」と右「滋賀県産特別栽培大豆テンペ(690円)」

左「ルストテンペ(240g、480円)」と右「滋賀県産特別栽培大豆テンペ(690円)」(写真:Rusto 株式会社)
そんなRustoのテンペは、通常のテンペよりも大豆同士の結びつきが強く形を保ちやすいため、特に料理しやすく仕上がります。

そのため日本の東南アジア食材店や料理店にもファンが多いそう。お店で見かけたらぜひ手に取ってみてくださいね。テンペを使ったレシピは公式サイトのほか、公式インスタグラムで紹介しています。
(左上から時計回りに)おつまみにもおすすめのテンペの揚げ物「テンペゴレン」、テンペをパン代わりにした「あんバターサンド」、食パンに野菜やテンペを挟んだ「サンドイッチ」、肉の代わりにテンペを使った「ドライカレー」

(左上から時計回りに)おつまみにもおすすめのテンペの揚げ物「テンペゴレン」、テンペをパン代わりにした「あんバターサンド」、食パンに野菜やテンペを挟んだ「サンドイッチ」、肉の代わりにテンペを使った「ドライカレー」(写真:Rusto 株式会社)
【Rusto 株式会社】
●住所:滋賀県大津市八屋戸2217番地の90
●問い合わせ:077-535-0286
●公式サイト:Rusto 株式会社
●公式インスタグラム:ルストテンペ(Rusto’s Tempeh)

(岡山県)黒豆グラッセの「日東酵素」

看板商品の「黒豆グラッセ(50g、580円)」。甘納豆のような見た目でにおいはなく、テンペ初心者にもおすすめ

看板商品の「黒豆グラッセ(50g、580円)」。甘納豆のような見た目でにおいはなく、テンペ初心者にもおすすめ(写真:日東酵素株式会社)
「発酵文化の創造」をコンセプトに、テンペや豆腐よう、発酵生ラーメンなどを開発販売する日東酵素。

1945(昭和20)年の創業当時は、戦後の食糧不足を補うため、大豆をはじめとしたマメ科植物の生育を助ける「根粒菌」づくりに取り組んでいました。

以降は微生物研究や食品加工など、培った技術を生かし、現在まで栄養補助食品や醗酵食品の開発と販売を続けています。
料理に使いやすいと人気の「テンペ(50g×2、300円)」

料理に使いやすいと人気の「テンペ(50g×2、300円)」(写真:日東酵素株式会社)
看板商品は、全国的にも有名な岡山の黒豆(作州黒)をテンペ菌で発酵させ、甘く加工した「黒豆グラッセ(50g、580円)」。サクサクとした三温糖のやさしい甘さと、しっとりとした黒豆の豊かな風味が特徴の商品です。

レトルト風に仕上げた「テンペ(50g×2、300円)」も人気を集めます。淡白な味わいと滑らかな食感が特徴で、さまざまな料理に使えるところがうれしいポイント。50gと少量ずつ包装されており、衛生的に使用できそうです。

【ふぁーめんの贈り物 日東酵素株式会社】
●住所:岡山県備前市坂根96-1
●公式サイト:日東酵素株式会社

(岡山県)生テンペを味わえる「テンペ料理 発酵亭」

店内のメニュー表

店内のメニュー表(写真:テンペ料理 発酵亭)
矢掛(やがけ)商店街の一角にあるテンペ料理 発酵亭。1964(昭和39)年の創業当時は家具販売店をメインで営んでおり、テンペ料理は店内の一角で作り始めたものでした。

「ヘルシーで栄養価の高いテンペで町おこしができたら」との思いで、当時からテンペの普及に努めてきた店主の試行錯誤により、現在では家族連れや観光客でにぎわうアットホームなお店です。

提供する全ての料理は、粉末状の自家製テンペ入り。一番人気の「おすすめ定食(1100円〜)」では、名物のテンペコロッケをはじめ、濃厚なテンペ豆腐、香ばしいテンペの素揚げ、近隣農家から届く有機野菜の小鉢などをいただけます。

また「テンペ入りラーメン(700円)」や、珍しい生テンペなども提供。テンペ料理と生のテンペを食べ比べてみるのも面白そうですね。
左「大豆テンペ(500円)」、右「ハトムギテンペ(600円)」。ぜひ家庭で料理に使ってみて

左「大豆テンペ(500円)」、右「ハトムギテンペ(600円)」。ぜひ家庭で料理に使ってみて(写真:テンペ料理 発酵亭)
店内では町内外の企業とともに開発したかりんとうや豆腐などの商品も販売中。テンペ料理 発酵亭のオリジナル商品「粉末テンペ(50g、1700円)」や、冷凍の「大豆テンペ(500円)」「ハトムギテンペ(600円)」もお見逃しなく。

矢掛町は、矢掛宿として江戸文化を感じる町並み(伝統的建造物群保存地区)が人気を博します。矢掛テンペ発酵亭を訪れる際には、ぜひ近隣の高梁市の町並みも見学し、タイムスリップ気分を味わってみては。
アットホームな店内の様子

アットホームな店内の様子(写真:テンペ料理 発酵亭)
ちなみに2024年1月には、テンペ料理 発酵亭店主の娘さんが店長を勤めるテンペ料理店「HAKKOUTEI/はっこうてい」が山口県宇部市にオープン。モダンな雰囲気の店内で、お昼はテンペランチ、夜はお酒とともにおばんざいを楽しめます。こちらもぜひお立ち寄りを。

【テンペ料理 発酵亭】
●住所:岡山県小田郡矢掛町矢掛2570-8
●公式サイト:テンペ料理 発酵亭

【HAKKOUTEI/はっこうてい】
●住所:山口県宇部市西岐波4579-9
●公式インスタグラム:HAKKOUTEI/はっこうてい

無塩大豆発酵食品「テンペ」を食べてみましょう

大豆に塩を加えずに発酵させる無塩大豆発酵食品は、菌のはたらきで栄養成分や健康成分を豊富に含みます。

テンペはアメリカでは50年以上も前から製造販売されていますが、日本ではまだなじみが薄いのが現状です。

この記事をきっかけにして、テンペ料理を食べに行ったりテンペ商品を購入したりして、まずはテンペに触れてみませんか?



Text:額田善之(ぬかだ・よしゆき)

北海道と東北以外の県はすべて旅行した旅ライター。オートバイでツーリングをして名物や銘菓を食べるのが趣味のアウトドア派。岡山県出身。納豆の健康効果を紹介する個人ブログ「納豆人甚Gene」を運営中。健康や旅行、武道、キャンプなどのSEOライティング執筆を受託。少林寺拳法有段者で「武道・道場ナビ」でも執筆中。


Edit:Sakura Takahashi
Photo:PIXTA(特記ないもの)

参考文献:
太田美穂『無塩発酵大豆テンペ摂取による若年健常女性の排便状況の改善について
第59回日本栄養改善学会学術総会 講演要旨集』(大阪大学臨床栄養研究会/2012年)
主婦の友社 『主婦の友シリーズ「テンペが効く!」』(主婦の友社/2003年)
農山漁村文化協会『地域食材大百科 第10巻「こうじ,味噌,醤油,納豆,テンペ」』(農山漁村文化協会/2013年)
農山漁村文化協会『こまった、教えて 能さん加工便利帳1「こうじ、味噌、納豆、テンペ、甘酒」』(農山漁村文化協会/2011年)

参考:
食糧研究所研究報告「テンペに関する研究」テンペ水抽出液の血栓溶解活性テンペの機能性大豆発酵食品のアンジオテンシンⅠ変換酵素阻害作用大豆の栄養と機能性「テンペ」日本初!(当社調べ) 手作りテンペ専門のお弁当屋さんが長野県茅野市にオープン!|PR TIMESNAGANO SDGs BUSINESS PORTAL 長野県公式 長野県SDGs推進企業情報サイト/各社公式サイト