「流鏑馬(やぶさめ)」は古来より、日本各地で行われてきた伝統芸能の一つ。馬術と弓術(きゅうじゅつ)を組み合わせた古式弓馬術で、馬で疾走しながら鏑矢(かぶらや)で的を射るものです。
この記事では「日本三大やぶさめ」をはじめ、各地で見られるやぶさめを紹介しています。やぶさめが体験できる施設も掲載しているので、やぶさめに興味を持った方はぜひ、現地を訪れてみてくださいね。
※本記事に掲載の情報は2023年8月時点の情報です。諸事情により変更となる場合があるので、お出かけの際はご自身で最新の情報をご確認ください
※2024年5月、一部情報を更新しました
日本三大やぶさめ
長野県の「若一王子神社例大祭」、神奈川県の「鶴岡八幡宮の例大祭」、京都府の「下鴨神社 鏑流馬神事」が日本三大やぶさめといわれています。
まずは、それぞれの「やぶさめ」について、特徴や見どころを説明していきますね。
(神奈川県)鶴岡八幡宮の例大祭
鎌倉市の鶴岡八幡宮では、毎年9月14日〜16日にかけて「鶴岡八幡宮例大祭」が開催されます。由比ヶ浜の海で神職が禊を行う「浜降式」、伝統的な衣装に身を包んだ神職一行が神前に参る「例大祭」、神輿が氏子地域を練り歩く「神幸式」が順に行われ、最終日の16日にやぶさめ神事を奉納します。
鶴岡八幡宮の例大祭でのやぶさめ神事の様子
やぶさめでは、武者姿の射手が境内を馬で駆け、馬場の三つの的を次々と射貫きます。その迫力は瞬きをする間もないほどと表され、まさに一瞬たりとも見逃せない芸当です。鶴岡八幡宮では、秋の例大祭のほか、春の鎌倉まつりでもやぶさめ神事を見ることができます。
【鶴岡八幡宮例大祭の基本情報】
●開催場所:鶴岡八幡宮(つるおかはちまんぐう)
●会場住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2丁目1-31
●開催日:2024年9月14日(土)~16日(月)※やぶさめ神事は16日(月)
●公式サイト:鶴岡八幡宮
(長野県)若一王子祭りのやぶさめ
長野県信濃大町の若一(にゃくいち)王子神社では、毎年7月の例大祭で「子ども流鏑馬(やぶさめ)」が行われます。長野県の無形民俗文化財にも指定されている歴史ある伝統行事で、やぶさめの射手をつとめるのは、小学生の男児です。
馬で地域を巡るやぶさめの射手(写真:大町市観光協会)
若一王子神社のやぶさめでは、化粧をし華やかな衣装を身に着けた10騎の少年射隊が、JR大糸線「信濃大町駅」前から中央通りを若一王子神社に向かって行進します。神社に到着すると、3か所の的場を約1時間かけて巡りながら、やぶさめが行われます。
2023年の若一王子祭りは7月22日(土)・23日(日)に開催されました。子ども流鏑馬は、例年7月の第4日曜日に開催しているので、気になる方は現地へ足を運んでみてください。神輿の巡行や稚児行列のほか、太鼓演奏なども行われる、賑やかなお祭りです。
【若一王子神社例大祭の基本情報】
●開催場所:JR大糸線「信濃大町駅」〜若一王子神社までの区間
●会場住所:長野県大町市大町
●開催日:毎年7月の第4日曜日
●公式サイト:若一王子神社
(京都府)下鴨神社のやぶさめ
世界遺産に登録されている京都市の下鴨(しもがも)神社では、毎年5月3日に流鏑馬神事が行われます。「雄略天皇即位の年(457年)に、騁射(うまゆみ)がおこなわれた」と日本書紀に書かれています。このことからも、昔からやぶさめが存在していたことがわかりますね。
また、下鴨神社の鏑流馬神事は、衣装にも注目してみてください。ほかではあまり見られない、束帯と呼ばれる公家装束が特徴的です。
この記事の他の写真と見比べてみると、衣装が他とは違うとわかりますね
【下鴨神社 鏑流馬神事の基本情報】
●開催場所:下鴨神社
●会場住所:京都府京都市左京区下鴨泉川町59
●開催日:毎年5月3日
●公式サイト:下鴨神社
やぶさめが見られる有名な祭り
上述のように、やぶさめは主に神社の例大祭や神事などで観覧することができます。ここからは、日本三大やぶさめ以外で、やぶさめが見られる全国の祭りを紹介します。
多くの場合、春か秋にやぶさめ神事が執り行われます。
(青森県)十和田の桜流鏑馬
青森県十和田市では、毎年桜の季節に女流騎士によるやぶさめが見られます。満開の桜の下を日本馬で疾走する女性たち。華やかで勇壮な、ほかでは見ることができないやぶさめを見るために、多くの人で賑わいます。
やぶさめ会場の公園が面するのは、十和田の名勝、駒街道です。「日本の道 百選」や「新 日本百景」にも選ばれていて、観光スポットとしても人気があります。
【桜流鏑馬の基本情報】
●開催場所:十和田市中央公園
●会場住所:青森県十和田市西三番町3
●開催日:2024年4月13日(土)・14日(日)
●公式サイト:十和田流鏑馬公式総合案内
(福島県)古殿八幡神社例大祭
福島県の古殿八幡神社で、毎年10月の第2土曜日と日曜日におこなわれます。祭りのみどころは、約800年の歴史を誇る「やぶさめ」です。
やぶさめの神事は、福島県の重要無形民俗文化財に指定されています。また、古殿八幡神社がある地域は、名馬の産地。やぶさめを見るときには、ぜひ馬にも注目してみてください。
これからやぶさめに臨む馬
【古殿八幡神社例大祭の基本情報】
●開催場所:古殿八幡神社
●会場住所:福島県石川郡古殿町大字山上字古殿
●開催日:2024年10月12日(土)〜13日(日)
●公式サイト:古殿八幡神社例大祭
(神奈川県)寒川神社の流鏑馬神事
神奈川県寒川町にある寒川(さむかわ)神社では、例年9月20日に開催される「秋の例祭」前日の14:00から、天下泰平と五穀豊穣を祈念してやぶさめ神事がおこなわれます。
矢が当たった的が大破していることから、その威力がうかがえます
歴史あるやぶさめ神事は、鎌倉時代から始ったもの。もともとは「馬太夫」と呼ばれる家筋の人たちがやぶさめを奉納していましたが、現在では武田流大日本弓馬会(たけだりゅうだいにほんきゅうばかい)と寒川神社神職で奉納しています。
【寒川神社の流鏑馬神事の基本情報】
●開催場所:寒川神社馬場
●会場住所:神奈川県高座郡寒川町宮山3916
●開催日:例年9月19日
●公式サイト:寒川神社
(熊本県)出水神社の秋季例大祭
熊本県の出水(いずみ)神社では、毎年春と秋の例大祭でやぶさめが披露されます。
秋晴れの下、豪華な衣装が映えます(写真:熊本県公式観光サイト)
神社拝殿での神事の後、射手は公園内の馬場(約160メートル)を走る馬の上から、等間隔に立てられた3つの五色の的を狙って次々に矢を放ちます。厳かな雰囲気の中、迫力満点のやぶさめを観覧できますよ。
【出水神社の秋季例大祭の基本情報】
●開催場所:出水神社
●会場住所:熊本県熊本市中央区水前寺公園8-1 水前寺成趣園
●開催日:
春季祭……例年4月22日~4月24日
※2024年春季祭の流鏑馬奉納は4月21日(日)
秋季例大祭……10月18日~10月20日
※2024年秋季例大祭の流鏑馬奉納は10月13日(日)
●公式サイト:出水神社
(鹿児島県)高山やぶさめ祭
鹿児島県の高山やぶさめ祭は、四十九所神社前で開催されます。神の使いとされるやぶさめの射手は、中学2年生の中から選ばれます。
このとき選抜される射手は、やぶさめ経験者ではなく、全員がやぶさめ初心者。8月にメンバーを決定し、秋の高山やぶさめ祭に向けて、馬の乗り方から練習が始まります。
矢を放つ姿勢をとるやぶさめの射手(写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟)
狩衣装束を身にまとった射手は、弓受けの儀によって神の使いとなります。射手は神馬とともに馬場を3回疾走。放った矢が的に命中した瞬間、会場は歓声に包まれます。
【高山やぶさめ祭の基本情報】
●開催場所:四十九所神社前(宮之馬場)
●会場住所:鹿児島県肝属郡肝付町新富5580
●開催日:2024年10月20日(日) ※毎年10月第3日曜
●公式サイト:肝属郡肝付町
やぶさめの体験スポット・服装・料金まとめ
やぶさめを体験できる施設を紹介します。年齢や服装など、施設ごとにルールが異なるので、申し込み前によく確認しておきましょう。中には、体験後に「もっと本格的にやぶさめを習得したい」と思った方のために、やぶさめを習うことができる施設もあります。
(茨城県)大和ホースパーク
弓道初心者は弓の練習から、乗馬初心者は軽トラックの荷台に鞍をのせて弓を打つところからスタートします。どのコースでも、最後には馬に乗って本格的なやぶさめ体験ができますよ。衣装に着替えて体験すれば、より印象深い思い出になるかも。
●場所:大和ホースパーク
●住所:茨城県桜川市大国玉4432-6
●時間:14:00〜(弓の練習が不要の場合は15:00〜)2〜3時間
●料金:1万7000円(現金支払いのみ)
●条件:6歳以上(経験の有無は問わない)
●公式サイト:大和ホースパーク
(山梨県)紅葉台木曽馬牧場
紅葉台木曽馬牧場の日本馬は小柄でおとなしく、未経験でも安心して乗ることができます。先導馬付きの常歩や速歩、単独での速歩や駆歩など、体験する方の経験値に合わせた指導を受けられます。
●場所:紅葉台木曽馬牧場(こうようだいきそうまぼくじょう)
●住所:山梨県南都留郡鳴沢村8529-86
●時間:1日
●料金:1万6000円
●条件:高校生以上(経験の有無は問わない)
●公式サイト:紅葉台木曽馬牧場
(山梨県・福岡県)カナディアンキャンプ乗馬クラブ
最初の30分間は弓の練習をし、そのあと馬場へ出て馬に乗ります。福岡県の施設(CCR九州)では、+4400円で衣装の貸し出しも利用できます。
●場所:カナディアンキャンプ乗馬クラブ
●住所:
山梨県北杜市小淵沢町10235(CCR八ヶ岳)
福岡県宗像市神湊44-1(CCR九州)
●時間:1時間30分
●料金:1万3400円
●条件:小学生以上〜(経験の有無は問わない)
●公式サイト:カナディアンキャンプ乗馬クラブ
(滋賀県)御猟野乃杜牧場
日本の在来馬の普及をめざす牧場で、普及活動の一環として、乗馬・やぶさめ体験を実施しています。コースがいくつかあるので自分に合ったものを選んで体験できます。当日は靴底が平らな靴を履いていきましょう。
●場所:日本の馬 御猟野乃杜牧場(みかりののもりぼくじょう)
●住所:滋賀県近江八幡市加茂町1780
●時間:1時間〜
●料金:小・中学生3000円〜、高校生以上 5000円〜
●条件:小学生以上〜(経験の有無は問わない)
●公式サイト:御猟野乃杜牧場
(佐賀県)武雄流鏑馬乗馬クラブ藤武会
馬を静止させた状態で体験するので、乗馬体験がない人も参加できます。服装はスカート不可。当日は馬に乗れる服装と運動靴で、香水なども控えましょう。
●場所:流鏑馬馬場(武雄市こども図書館前)
●住所:佐賀県武雄市武雄町武雄大字武雄5304−1
●時間:毎週日曜10:00~12:00の中で1時間
●料金:1万円(現金支払いのみ)
●条件:12歳以上(経験の有無は問わない)
●公式サイト:武雄流鏑馬乗馬クラブ
まとめ
やぶさめは、射手の衣装や勢いよく放たれる矢、目の前を駆け抜ける馬の姿など、見どころが多いのも魅力です。
歴史や宗教などの背景がある場合、興味がある方は詳しく調べてみるのも楽しいでしょう。やぶさめ祭りに足を運び、迫力や雰囲気などを、たっぷりと楽しんでください。
Text:kamegon / Sakura Takahashi
Edit:編集部
Photo:PIXTA(特記ないもの)
参考:
goo辞書/鶴岡八幡宮/若一王子神社/大町市観光協会/下鴨神社/十和田流鏑馬公式総合案内/古殿八幡神社例大祭/寒川神社/出水神社/熊本県公式観光サイト/肝属郡肝付町/鹿児島県公式サイト/大和ホースパーク/紅葉台木曽馬牧場/カナディアンキャンプ乗馬クラブ/御猟野乃杜牧場/武雄流鏑馬乗馬クラブ/ほか各種パンフレット