瓦の上でそばを焼く?「瓦そば」とは
瓦そば発祥の名店「元祖 瓦そば たかせ」でルーツを探る
茶そばの香ばしさがたまらない!瓦そばを食べてみよう
自宅でも瓦そばが楽しめる
まとめ

山口県の名物料理のひとつである「瓦そば」。近年ではテレビ番組などでも何度も取り上げられ、全国的にもその名前が知られるようになってきました。しかし、インパクトのある見た目とは裏腹に、ネットでのレビューや実際に食べたという話は意外にも少ないようです。


そこで、今回は瓦そば発祥の地である瓦そばの専門店「元祖 瓦そば たかせ」に足を運び、その誕生の秘密や食べ方をうかがってきました。

瓦の上でそばを焼く?「瓦そば」とは

瓦そばとは、山口県下関市のご当地料理のひとつで、熱々の瓦の上に茶そばと具材を盛り付けた料理です。上層のモチモチとコシのある麺と、下層の瓦で焼けてパリパリとした麺。味わい深い茶そばの2種類の食感を楽しめます。

元々は下関川棚温泉の名物として考案された料理だということですが、その美味しさから瞬く間に広がり、今では山口県のソウルフードになっています。

瓦そば発祥の名店「元祖 瓦そば たかせ」でルーツを探る

元祖 瓦そば たかせ

瓦そば発祥の名店へ

発祥の地で瓦そば誕生の秘密を探る


瓦そばのルーツを探るべく訪ねたのは「元祖 瓦そば たかせ」。元祖という名の通り、瓦そば発祥の地として知られる瓦そば専門店です。今回訪ねた下関市豊浦町に立つ川棚本館は、築100年の建物を改装した歴史を感じる古風な佇まい。

統括部長の山本さん

取材に応じてくれた統括部長の山本さん

取材に応じてくれたのは、瓦そばたかせ統括部長の山本さん。早速、瓦そばの成り立ちについてうかがいました。

瓦そばを最初に考案したのは、瓦そばたかせの前身となった旅館。今からおよそ60年前、そこで川棚温泉の名物を作ろうと思ったのがきっかけでした。


創業者の高瀬慎一さんは、「西南戦争の長い戦いの間、野営をしている薩摩軍の兵士たちが熱した瓦で肉や野菜を焼いて食べていた」という話から着想を得て、瓦で食べ物を焼くという料理を思いついたそうです。うどんや蕎麦などいろいろな食材を瓦の上で焼いて試行錯誤を重ねた結果、風味豊かでモチモチとした食感が特徴の茶そばに行き着いたのだとか。

1962年に誕生した瓦そばは、すぐに川棚温泉の名物として定着。その人気は下関市にとどまらず、現在ではご当地グルメとしても山口県内で広く親しまれています。お隣の福岡県や、さらには東京などにも専門店ができるなど、その人気は留まるところを知りません。

食器には本物の瓦を使用

瓦そばを乗せる瓦

瓦そばは本物の瓦にそばを乗せて提供される

瓦そばの最大の特色がこの瓦。以前は実際に民家の屋根瓦と同じものを使っていましたが、最近の瓦は塗料などの関係で食器として使うには適さないということで、特注の瓦を使っているそうです。

見た目のインパクトはもちろん、瓦は遠赤外線効果により保温性にも優れているため、食べている間に冷めにくく、最後まででき立ての熱々の状態を保ったまま食べられるというメリットがあります。さらに、瓦に面した部分の茶そばはおこげのようにパリパリとした食感が楽しめるのも特徴。屋根に乗せるイメージの瓦に、食器としてそんなメリットがあるとは驚きです。

材料にもこだわり抜いた元祖瓦そば

熱々の瓦そば

茶そば以外にもとことんこだわるたかせの瓦そば

たかせの瓦そばは、材料にも並々ならぬこだわりがあると山本さんは話します。

同店では、北海道産のそば粉と京都の良質な宇治抹茶を練り合わせた、こだわりの茶そばを奈良の製麺業者に注文。さらに、香りと甘味が日本一ともいわれている名産の「下関安岡産ねぎ」が、茶そばの深みのある香りをより一層引き立てます。

めんつゆはカツオと昆布をたっぷりと使用した合わせダシで、香り豊かで程よく甘口の上品な味わい。瓦で保温された茶そばが冷めぬよう、熱いまま提供されます。

「元祖 瓦そば たかせ」発祥の歴史

築100年のたかせ本館

長い歴史を誇る「瓦そば たかせ」

瓦そば発祥の店として知られる瓦そばたかせですが、前述の通り、瓦そばが考案された当時は旅館を営んでいました。

「その後旅館は閉館してしまったのですが、実際に瓦そばを食べたことのあるお客様から、『どうにかして瓦そばを商品化して欲しい』という声が上がったので、『瓦そばたかせ』という名前で専門店として営業を始めました」と山本さん。

お店は今回訪問した川棚本館から始まり、現在は東本館、南本館と川棚に3店舗。さらに、北九州の門司港と下関ゆめシティにも店舗を展開し、計5店舗で展開しています。

「瓦そばは、今では山口のソウルフードにもなっており、山口県に限らず全国各地に瓦そばのお店があるとか。それでも、瓦そばを考案した発祥の店であり、ずっと続く元祖伝統の味を楽しめるのはここ「元祖 瓦そば たかせ」だけです。興味を持たれた方はぜひ川棚までいらしてください」と話します。

その伝統の味はもちろん、築100年の歴史を感じるお店で中庭を眺めながら食べる瓦そばは絶品です。

本館の中庭

丁寧に手入れされた中庭も美しい

ちなみに、同店では瓦そばのほか「うなめし」も人気。うなめしは川棚温泉でウナギの養殖が行われていたことで生まれた名物料理のひとつで、瓦そばと並ぶ二大看板として愛されています。

2人でお店へ行く際には、2人前の瓦そばとうなめしのセットがたかせの黄金メニューなんだとか。うなめしは、そのまま食べるのはもちろん、ダシをかけてお茶漬けのようにして食べるのもおすすめ。異なるふたつの味わいが楽しめますよ。

茶そばの香ばしさがたまらない!瓦そばを食べてみよう

「元祖 瓦そば たかせ」の瓦そばをいただく前に、瓦そばの調理工程をのぞいてみましょう。

瓦そばの作り方

今回は、特別に実際の調理の様子を見学させてもらうことができました。

茶そばを焼く様子

まずは茶そばを焼く

まずは、メインの茶そばを鉄板で焼いていきます。熱を加えられたことによって漂う茶そばの香りがたまりません。最初から瓦に乗せるのかと思っていましたが、瓦に乗せて食べる時にちょうどいい焼き加減になるように焼いておくそうです。

茶そばを鉄板で焼いている間に、瓦は直火で熱されます。

茶そばの盛り付け

熱々の瓦に茶そばをのせる

そして、焼きあがった茶そばを瓦の上に素早く乗せていきます。2膳の箸を使った無駄のない手つきは職人技です。

瓦そばの盛り付け

卵や牛肉をトッピングする(写真は2人前)

最後に茶そばの上に具材を盛り付けていくと瓦そばの完成です。

いざ、瓦そばを実食。気になる食べ方は?

できたての瓦そば

出来たての瓦そば(2人前 2,200円+税)

こうして出来上がったのがこちら。今回は「元祖 瓦そば たかせ」のおすすめ、元祖の食べ方を教えていただくことにしました。

まずは、温かい秘伝のめんつゆに茶そばや具材をつけて、そのまま半分ほど食べます。カツオと昆布をたっぷり使った秘伝のめんつゆは、香りも味も絶品です。

そのままめんつゆで食べる

香り高い茶そばのもちもち感とパリッとした食感を楽しむ食べ方

半分ほど食べたら、上に乗っていたレモンともみじおろしを入れます。一番上に乗っているので最初に載せる方が多いようなのですが、この半分くらいというのがポイントだそう。

「半分ほど食べてから入れると、めんつゆの味がさっぱりとした味に変わって、ふたつの味を楽しむことができます。これがたかせのおすすめの食べ方です」と山本さん。麺の固さも、つゆの味も2種類楽しめるなんてとても贅沢な食べ方です。

レモンともみじおろし

レモンともみじおろしを入れてさっぱりといただく食べ方

自宅でも瓦そばが楽しめる

瓦そば土産用セット

瓦そばセット(4人前 1,900円+税)

お店の会計横には、お土産のコーナーが設けられていました。
元祖の味を自宅でも楽しめるということで人気の瓦そばセットを取り扱っています。川棚本館だけでなく、山口県内の土産屋やネットショップなどでも購入できます。

瓦そばのサンプル

ご家庭で老舗の味を楽しむ食べ方

瓦そばのセットに含まれるのは、茶そばと秘伝のめんつゆのみ。具材は自分で用意する必要があります。必要なのは、トッピングとなる肉、ネギ、のり、錦糸卵、レモン、もみじおろしの6点。茶そばとめんつゆの豊かな香りを楽しむため、肉は塩味のみで、他に余計な味付けは一切しません。茶そばはホットプレートやフライパンで炒めて、お好みでおこげがつくまで火にかけ、パリッとした食感を楽しむのもおすすめです。

歴史を感じる佇まいで味わう元祖の味

1962年の瓦そば誕生以来、元祖の味を受け継ぐ「元祖 瓦そば たかせ」。今では山口県の郷土料理になっている瓦そばですが、元祖の味や美味しい食べ方を楽しめるのはここだけ。歴史を感じる店舗の中で、綺麗な中庭を眺めながら味わう瓦そばは格別です。ぜひ発祥の地で元祖の味を味わってみてくださいね。