「布ぞうり」ってどんなもの?
おしゃれで快適な布ぞうりを求め両国へ
布ぞうり作りの職人に会う
手作り布ぞうりで心地よい足元を手に入れよう

近年再注目されているルームシューズ「布ぞうり」は、その名の通り、布で作った草履(ぞうり)のことを指します。地方のお母さんたちが手仕事で作るイメージの強い布ぞうりですが、実は東京都内に、東北生まれのおしゃれな布ぞうり専門店があることをご存知でしょうか?

今回は、墨田区両国に立つ布ぞうり専門店「MERIKOTI」に足を運び、布ぞうりの特徴や魅力に触れてきました。エコで、スリッパよりも開放的で、なによりも過ごしやすく気持ちいい。そんな布ぞうりを体感しに、両国へと足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?

「布ぞうり」ってどんなもの?

旅館をはじめ、屋内に入る際に目にする「スリッパ」。実はスリッパは、日本生まれの文化であることはご存知でしょうか。

日本をはじめとしたいくつかの国では、欧米諸国とは異なり「屋内では靴を脱ぐ」という習慣があります。日本は木造家屋が多かったことと、雨の多い気候から、外履きの靴でそのまま屋内に入ると床がカビてしまったり、そこから腐敗が進んでしまったりとデメリットが多かったため「玄関や土間で靴を脱ぐ」という習慣が生まれたとされています。

対して、靴を履いたまま過ごす欧米諸国からの来訪客用に、自然とルームシューズとしてスリッパを提供するようになっていったのです。

日本のスリッパ文化

日本のスリッパ文化

家屋の床が無垢材や畳で造られていれば、柔らかい木本来の良さを体感するため裸足のまま屋内で過ごしたいところですが、現在の日本の住まいは欧米諸国のようにフローリングを使うのが一般的。

夏はペタペタするし、冬は足元から冷えてしまう…そんな不快感を軽減させるために、帰宅をしたら裸足ではなくスリッパやルームシューズを履くという習慣を持っている人も多いのではないでしょうか?

布ぞうり

布ぞうり(イメージ)

そこで新しいルームシューズとしておすすめしたいのが、布でできた草履「布ぞうり」。名前の通り、布で作られた草履のことを指し、日本各地の地方で暮らす人々が作る手仕事品のひとつとして知られています。

ここからは、布ぞうりが人気を集めている理由や特徴を紹介していきます。

布ぞうりの特徴① 開放的で過ごしやすい形

布ぞうりの最大の特徴は、日本で古くから使われてきた草履の形をしているということ。

日本で古く使われてきた一般的な草履は、い草や藁をはじめとした草木で作られるのが基本でした。木で土台を作り鼻緒をつけた「下駄」が普及する以前に、農民が着用していた履き物ですね。足に草が刺さる、耐久性もさほどよくない、といった不便さから下駄などに取って代わられた草履ですが、実は窮屈さがなく開放的であることから、意外にも足元の健康面をサポートする履き物としてかなり優秀な存在なのです。

ぞうりイメージ

藁やい草で作られるぞうり

布ぞうりは草履と同じように、布を藁などと同様に編んで土台を作り、鼻緒をつけて完成します。足を開放的な状態で保ってくれるため、足元にストレスを感じることなく快適に過ごせます。

布ぞうりの特徴② 要らない布で作ることができる

布をカットする様子

カーテンやTシャツなど自宅にある要らない布で制作できる布ぞうり

布ぞうりは土台の元となる紐と、布さえあれば作ることができます。つまり、要らなくなったカーテンや着なくなったTシャツといった布さえあれば、それを裂いて編んで、布ぞうりとして再生させることが可能。布ぞうりは日本人の「もったいない」精神を色濃く反映した、エコなアイテムなんです。

布ぞうりの特徴③ 丸洗いできる

家の中で過ごすだけでも、意外と足元は汚れるもの。綿でできた布ぞうりなら、そのまま洗濯機に入れて丸洗いできちゃうんです。洋服を洗うように、洗濯洗剤を投入して洗濯機を回せばOK。布に染み込んだ汚れや匂いもキレイになるため、長期間使い続けることができるのも大きな魅力といえるでしょう。

おしゃれで快適な布ぞうりを求め両国へ

MERIKOTI外観

シンプルな外観が魅力的な布ぞうり専門店「MERIKOTI」

開放的でエコで使い勝手も抜群。そんな布ぞうりを豊富なデザインとサイズを揃え展開している専門店が、墨田区両国にあります。都営大江戸線両国駅から徒歩約5分、モダンでシンプルな外観と木造りの看板が愛らしいこちらが、今回取材に足を運んだ「MERIKOTI」。繊維製品の製造や販売を中心に事業を展開する「オレンジトーキョー株式会社」が手がける布ぞうり専門店です。

木製の看板

木製の看板が目印の布ぞうり専門店「MERIKOTI」

店内に入ると、壁にはかわいらしいデザインの布ぞうりが飾られ、店奥には数々の布ぞうり商品をストックしている大きな棚が。モダンなコンクリート造りの内装に、布ぞうりのカラフルで温かみのあるデザインがよく映えています。

MERIKOTIストック棚

店内に入ってすぐ、目の前には布ぞうりがストックされた棚が

同店の店長である阿部さんに、MERIKOTIが手がける布ぞうりについて話を伺いました。

同店がオープンしたのは、2014年の9月のこと。そもそもきっかけは、東北に住まうおばあちゃんと同店のオーナーの出会いがはじまりだと阿部さんは話します。「オーナーが東北に住まう知り合いに『要らない布があったら送ってくれ』と言われ送ると、後日布ぞうりになって手元に戻ってきたそうです」。

MERIKOTI店長阿部さん

布ぞうり専門店MERIKOTI店長の阿部史子さん

その精巧な作りと、履き心地の良さに魅せられたオーナーは、東北のおばあちゃんたちの手仕事による布ぞうり作りの技術と知恵をベースに、布ぞうり「MERI」の製作を開始。

均一なサイズ、締まり具合、形で作られた色鮮やかな布ぞうりは、機械で作るのではなく、すべて手仕事で職人により作られているというから驚きです。1日に2〜3足ほどしか完成しないという、時間と手間をかけて作られていくMERI。その魅力やこだわりは、使う材料やデザインからもうかがえます。

MERIKOTIの布ぞうり

モダンでキュートな布ぞうりたち

「デザインは、温かみのある北欧テイストのものにしています。日本文化が根付く両国という地にお店を構えているので、北欧チックな色使いをしながら、和のテイストを大切にしたデザインが多いですね」と阿部さん。どの布ぞうりも、発色の良い鮮やかな土台と、日本らしい花柄や小紋柄を携えた鼻緒があわさり、北欧の温かさと和の上品で優しい印象が見事にマッチしています。

壁に並んでいる以外にも、MERIKOTIでは常時30パターン以上の布ぞうりをストック。鼻緒に赤いバラのようなコサージュをあしらった「Ellen」、シンプルさと落ち着きのある知的さを兼ね備えた「Tove」、女性だけでなく男性の贈り物にもぴったりなメンズライクの「Mika」など、つい足元を覗いてしまいたくなるようなおしゃれな布ぞうりたちを幅広く取り揃えています。

おしゃれなデザインの布ぞうり

性別、年齢問わず使えるデザインも魅力の布ぞうり

触って、履いて。MERIの魅力を体感

ご自身もMERIの愛用者だという阿部さん。虜になってしまう最大の秘訣は、履き心地にあるようです。「布ぞうりを着用していると足が楽チンで、靴を履いているのが窮屈に感じちゃいますね。MERIはやわらかくて足にフィットするオリジナルの素材を使っているので、ずっと心地よいマットの上を歩いているみたいな感覚なんです」と笑います。

阿部さんの足元

阿部さんも愛用している布ぞうり。こちらは「Tove」

布ぞうり履き心地が気になるという人は、店内の一角に設けられた試着スペースでぜひお試しを。子どもから成人男性まで履けるよう、S〜LLまでサイズを用意しています。

せっかくなので筆者も履いてみることに。手でMERIを触ってみると、少し硬いかな?という感覚。弾力があり、しっかり編み込まれている印象です。ですが履いてみると、思った以上にふかふか!足裏に体重がかかることで、ちょうど良い足裏の心地よさを実現してくれるようです。スリッパのようにつっかけではないため、歩いても足裏の土台はペラペラせず、とっても快適。

「サイズ感はお好みですが、あまり大きいとフィット感が薄れてしまうので、ちょっとぴったりすぎるくらいがちょうどいいかもしれません」と阿部さん。履いているうちに足になじんでいき、自分だけの布ぞうりの形へと変化していきます。もちろん洗濯機で丸洗い可能ですし、丁寧に使っていけば、1年半〜2年は持つのだそう。

店内の試着ブース

店内の一角で布ぞうりのサイズや履き心地を確認

オリジナル紐を作る様子が店内で見られる

この履き心地のよさを叶えてくれるのは、同社が布ぞうりのためだけに開発した、オリジナルの紐を使っているから。店内では、細い糸を引き揃えて紐を作るための機械が置かれており、実際に紐が生み出されていく様子を見ることができます。幅広で厚みのあるこのオリジナルの紐こそが、MERIの魅力を生み出す一番の要なのです。

店内で作るヤーン

店内の機械で布ぞうりの紐が作られる様子を見学できる

幅広の紐

糸を束ねて編み、丈夫でしなやかな布ぞうりの紐を作る

店内にはほか、布ぞうりと一緒に使える5本指ソックスなども展開。同社が60年以上続く愛知県の手袋工場とともに作り上げた、メイドインジャパンのオリジナル商品です。MERIは冬場でも使えるアイテムですが、寒さが気になるという人には、こちらの指割れ靴下と併用するのがおすすめ。

メイドインジャパンの靴下たち

豊富なデザインの布ぞうりで足元のおしゃれを楽しんで

履き口から編むのではなく指先から編んでいくことで指元に継ぎ目が残らないため、フィット感と快適さを叶え、優しい履き心地に仕上げています。

布ぞうり作りの職人に会う

この日はMERIの職人さんが来てくださってるとのことで、ショップ「MERIKOTI」から徒歩約5分の位置に立つ、オレンジトーキョー株式会社の本社にもお邪魔してきました。

本社1階には布ぞうり作りの体験ができるワークショップスペースがあり、毎月8回(第2・4週の火・土曜。それぞれ2部制)布ぞうりのワークショップを開催しています。室内ではワークショップ参加者が自宅でもさらに布ぞうり作りができるようにと、国産のニット生地を裁断して作ったオリジナルニットヤーン(ニット製の紐)「JonoJono」や、布ぞうり制作キットの販売も行っています。

JonoJono

オリジナルニットヤーン「JonoJono」

本日話を聞かせてくれたのは、MERIを作り始めて7年目になるという三田先生。土台作り、鼻緒付けそれぞれの工程は別の職人さんがおこなっているようで、先生は土台を作る工程を担っています。24cmサイズの土台を作るためには、約12mもの長さの紐を準備する必要があるのだそう。

布ぞうり制作の様子

MERIの土台を作る三田先生

最初に布ぞうり作りに欠かせない専用の台に形を作るベースとなるポリエステルのロープをかけ、そこにMERIオリジナルの紐を編み込む。慣れた手つきでどんどんと編んでいく三田先生ですが、やはり均一に作れるようになるまでにはかなりの時間がかかったと話します。「編む力を均一にするのが難しいですね。片足がうまくできても、全く同じキツさで、同じ形でもう片足分の土台も作らなくちゃいけないですから」。

編み始めの部分

均等に力をかけながら編んでいく

特に最初の編み始めの部分は、その後の仕上がりを大きく左右する重要な部分。今では片足1時間ほどで編み上がると先生は言いますが、その手つきからは何度も失敗や経験を重ね身に付けた、職人の技を感じられます。

土台ができていく様子

丈夫な作りになるよう、丁寧に編み込む

生産性が低くとも、MERIは「職人による手作り」の布ぞうりとしてこの方法にこだわり続けます。

それは何よりも、受け継いできた職人技を大切にしたいから。東北で出会い、東京都で誕生したMERIは、機械では生み出せない唯一無二の布ぞうりとして、愛らしいデザインと快適さを携え私たちの足元に彩りと温もりを与え続けてくれます。

手作り布ぞうりで心地よい足元を手に入れよう

草履の開放感を叶えながら、足元に温もりを授けてくれる布ぞうり。一度履いたらそのストレスフリーな感覚に、病みつきになること間違いなしです。両国に足を運んだ際には、ぜひあなたの足にフィットする一足を探しに布ぞうり専門店MERIKOTIに訪れてみてはいかがでしょうか。