日本を代表する伝統芸能の一つ、歌舞伎。その歴史は江戸時代にまで遡り、長年国民に愛されてきました。しかし、実際に歌舞伎を見たことのある人は少ないのではないでしょうか。観劇経験のない方にとっては、少し足を運びづらいかもしれません。
しかし、いざ客席から観劇してみると、豪華な衣装を身にまとった役者による迫力満点のパフォーマンスに圧倒され、息つく暇もないほどの興奮に包まれます。公演時間は丸1日かかる演目がある一方、30分と短いものもあり、歌舞伎初心者の方でも安心。
今回は、そんな歌舞伎の舞台が行われる「歌舞伎座」を紹介します。
歌舞伎とは?
「歌舞伎」は当て字だということをご存知でしょうか。「傾く(かたむく)」の古語である「傾く(かぶく)」が由来とされており、奇抜な格好・振る舞いをする、という意味があります。そういった人のことを江戸時代では、「かぶき者」と呼んでいました。
1603年、京都に「出雲阿国」という女性芸能者がいました。阿国は、かぶき者をまねて派手な服装に身を包み、奇抜な踊りで人々を楽しませていました。これが歌舞伎の始まりと言われています。
その後、それを見た多くの女性芸能者が阿国をまねたことで、歌舞伎は京から江戸にまで伝わりました。こうして「女歌舞伎」は繁栄しましたが、風紀を乱すとして1629年に禁止令が出されてしまいます。
その後は、男性が前髪を剃り下ろした「野郎頭」で演じる「野郎歌舞伎」が主流となります。男性が演じるようになったことで、「女方」も誕生し、現代まで続く歌舞伎のベースが完成されたと言われています。この当時から、歌舞伎の内容やストーリーはほとんど変わっていません。
歌舞伎座の歴史
歌舞伎座(正面)
明治時代〜大正時代
初めて歌舞伎座ができたのは1889年。明治時代に入り、近代化・西洋化が進んだ日本では歌舞伎の内容をより近代的かつ高尚なものにしよう、と演劇改良運動が行われました。その演劇改良運動の中心人物であった福地源一郎が中心となり、歌舞伎座の建設が始まりました。洋風な外観をした第一期歌舞伎座は、九代目 市川團十郎・五代目 尾上菊五郎・初代 市川左団次の「團菊左」の活躍により、大いに繁栄しました。
1911年に行われた初めての改修工事で、歌舞伎座は和風建築に生まれ変わります。しかしその10年後、火災を受けて再び修復工事が行われました。関東大震災による一時中断をはさみながらも、この修復工事によって第三期歌舞伎座が完成。
十五代目 市川羽左衛門・六代目 尾上菊五郎・初代 中村吉右衛門らの活躍によって、より一層の盛り上がりを見せた当時の歌舞伎界は「歌舞伎の黄金期」と呼ばれました。その黄金時代を支えたのが、なにを隠そう歌舞伎座なのです。
昭和時代以降
その後、第二次世界大戦中の東京大空襲により歌舞伎座は外郭のみを残して焼失してしまいます。戦後、復旧作業が始まり1951年に第四期歌舞伎座が完成しました。しかし戦後の日本は、西洋の文化を受け近代化が急速に進んでいきます。
その影響から生活スタイルや価値観が大きく変わり、歌舞伎の人気は低迷してしまいました。その流れに対し、歌舞伎界は襲名披露や海外公演といった新しい挑戦を行い、見事成功。苦しい時代を乗り越え、日本を代表する伝統芸能としての地位を再び築いていきます。
第五期歌舞伎座の建設は2010年に始まりました。3年の工事を経て、バリアフリーの設備を備え、耐震化の進んだ劇場に生まれ変わりました。
歌舞伎座の公演情報
歌舞伎座の正面
歌舞伎座での公演は「通常公演」と「一幕見席」の2つに分かれます。
通常公演
通常公演は、昼の部と夜の部に分かれています。各部は、いくつかの幕によって構成されており、公演時間は合計3〜4時間ほどです(休憩時間込み)。演目や役者は月替わりで変更されます。チケットの値段は席の種類によって異なり、3,000円から20,000円です。詳細はこちらで確認できます。
一幕見席
「歌舞伎を見てみたいけど時間がない」、「初めてで3時間はちょっと…」という方には、一幕見席がオススメです。その名の通り公演内容は30分から1時間の一幕のみ。当日券のみの販売で、予約はできません。開演の1時間半から2時間前より入場券の販売が開始されます。
150席限定となっているので、早めに行かれることをオススメします。値段は800円から3,000円。このような公演を行っているのは全国でも、ここ歌舞伎座だけです。
歌舞伎座をもっと楽しむために
お食事
歌舞伎座には和食、なかでも定食を扱うレストランがいくつか存在します。各公演の幕間(休憩時間)や、終演後に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。当日は混み合うのでネットもしくは電話で予約しておくと良いかもしれません。
【営業情報】
ネット予約:お食事処 花篭
電話予約:03-3545-6820
また、レストランの他にお弁当屋さんもあるので、簡単に済ませることもできます。そのお弁当や持ち込んだ食べ物を座席で食べることも可能です。
お土産
歌舞伎座の1階・3階・5階・地下2階にはお土産屋さんがあります。歌舞伎グッズの他に、和菓子といった食品も売られています。
歌舞伎座ギャラリー
背後のビルが歌舞伎座タワー
歌舞伎座の後ろに建つ「歌舞伎座タワー」。その5階にある「歌舞伎座ギャラリー」では、舞台で実際に使われた衣装や道具が展示されています。また、歌舞伎の舞台が完全再現されており、役者になりきって写真を撮ることもできます。
営業時間は10時00分〜17時30分で、料金は600円と、とてもリーズナブル。公演のチケットを持っていればさらに100円引きです。
イヤホン・字幕ガイド
初めて歌舞伎を観る方は、ぜひイヤホンガイドをお使いください。上演前に舞台のあらすじや役者の紹介を聴けるのはもちろん、上演中にセリフの解説などを聴くこともできます。
貸出場所は、1階食事所近く、また2階のイヤホンガイドカウンターです。料金は、通常公演の場合700円+保証金1000円、一幕見の場合500円+保証金1000円。
イヤホンガイドの他にも、歌舞伎座では字幕ガイドの貸出を行っています。音声ではなく、あらすじやセリフの説明が文面で小型モニターに映し出されます。
貸出場所は、1階字幕ガイドカウンターです。料金は、通常公演で1000円、一幕見で500円です。
【歌舞伎座 利用案内】
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座4-12-15
TEL:03-3545-6800
公式HP:歌舞伎座
チケットの購入方法
チケットはインターネットもしくは電話での予約、歌舞伎座の切符売り場で直接購入ができます。
【営業情報】
ナビダイアル:0570-000-489
TEL: 03-6745-0888
チケット予約:チケットWEB松竹
一幕見席切符売場:歌舞伎座正門の左側にあります。開演1〜2時間前より販売開始です。松竹歌舞伎座切符販売売場:歌舞伎座地下2階にあります。
歌舞伎座へのアクセス
最寄駅:東京メトロ日比谷線・都営浅草線 東銀座駅 / 東京メトロ銀座線・丸の内線・日比谷線 銀座駅
新宿駅からのアクセス
【新宿駅】ー 東京メトロ丸ノ内線 / 池袋方面 →【銀座駅】A7出口 → 徒歩(約5分)
東京駅からのアクセス
【東京駅】ー 東京メトロ丸ノ内線 / 新宿方面 →【銀座駅】A7出口 → 徒歩(約5分)
成田空港からのアクセス
【成田空港駅】ー スカイライナー / 京成上野方面 →【京成上野駅】 ーーー 徒歩(約5分)
→ 【上野駅】ー 東京メトロ日比谷線 / 中目黒方面 → 【東銀座駅】出口3 → 直通
羽田空港駅からのアクセス
【羽田空港駅】ー 京浜エアポート快特 / 成田空港方面 →【泉岳寺駅】ー 都営浅草線 / 京成佐倉方面
→ 【東銀座駅】出口3 → 直通
いざ歌舞伎の世界へ
日本を代表する伝統文化である歌舞伎。その歴史を支え、発展に貢献してきたのが、この歌舞伎座です。銀座という近代的な街中に佇む、和建築は存在感抜群。お時間のない方は一幕見席や歌舞伎ギャラリーで、余裕のある方は通常公演で存分に歌舞伎を楽しんでください。
きっと今まで味わったことのない世界を体験できることでしょう。