秋といえば、やはり「紅葉」。東京都新でも気軽に紅葉を楽しめる場所がいくつかありますが、ここではライトアップが美しい日本庭園に限定してご紹介。昼とは違う、幻想的な夜の紅葉を、秋の夜長に楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています。諸事情により最新の状況と異なる場合があります。お出かけの際は、ご自身で最新の情報をご確認ください
※2024年10月、一部情報を更新しました
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東京の紅葉の見頃:2024年は?
東京の紅葉:例年の見頃
東京の紅葉は、例年11月中旬から12月上旬頃が見頃。日本全国の中でも遅めの部類に入ります。
秋川渓谷や奥多摩湖など、奥多摩方面は都心よりも見頃が少し早く、11月中旬・下旬頃まで。都心では12月に入っても紅葉を楽しめる年は珍しくありません。
2024年の見頃予想は?
日本気象協会の2024年紅葉見頃予想<第2回>によると、2024年は9月・10月の気温が平年より高かった影響で、平年より葉の色づきが遅く進む見込み。
ただし、東京・高尾山の予想見頃は平年並の11月中旬となっています。
紅葉とライトアップが美しい東京の庭園
国営昭和記念公園
昭和記念公園日本庭園の紅葉
東京都立川市にある「国営昭和記念公園」は、昭和天皇御在位50年の記念事業の一環として造られた、総面積1.8㎢の広大な国営公園。公園の一角には、天皇皇后両陛下のご成婚を記念して造られた日本庭園があり、池を中心に周辺を散策しながら自然の景観を楽しめるエリアとなっています。
基本的に日本庭園では常緑樹を用いることが多いのですが、昭和記念公園の日本庭園では、武蔵野の樹木林をイメージして、モミジ、コナラといった落葉広葉樹を採用。秋の紅葉の時期には木々がオレンジや赤に色づきます。
国営昭和記念公園のライトアップ情報
昭和記念公園庭園のライトアップ(写真提供:国営昭和記念公園)
2020年にはじまって以来恒例となっている昭和記念公園「日本庭園」のライトアップ。「日本庭園」のほか全長300mの「かたらいのイチョウ並木」もライトアップされ、幻想的な散歩を楽しむことができますよ。
「かたらいイチョウ並木」の見どころは、最盛期になる「黄金のトンネル」。足元から頭上までイチョウの葉を覆い尽くされます。「日本庭園」では、水鏡に反射するもみじや歓楓亭(かんふうてい)に思わずうっとり。
2024年のライトアップ期間は2024年10月31日(木)〜12月1日(日)。紅葉の見頃は11月中旬頃です。なお、「日本庭園」の紅葉ライトアップを鑑賞するにはWEB券の購入が必要となります。
《国営昭和記念公園 紅葉&ライトアップ情報》
●住所:東京都立川市緑町3173(昭和記念公園管理センター)
●ライトアップ期間:2024年10月31日(木)〜12月1日(日)
●ライトアップ時間:16:30〜20:30(21:00閉園)
●料金:
入園料……高校生以上450円/中学生以下無料
日本庭園ライトアップ観賞券……高校生以上1100〜1200円/中学生以下600円
●公式サイト:
・国営昭和記念公園
・秋の夜散歩2024|国営昭和記念公園
大田黒公園
大田黒公園の紅葉
東京都杉並区に位置する「大田黒公園」は、この地に屋敷を構えていた音楽評論家・大田黒元雄(おおたぐろ もとお)氏の屋敷跡を整備した公園です。日本庭園のほか、数寄屋造りの茶室、休憩室、大田黒氏が仕事部屋として活用していたレンガ色の建物を記念館とし保存。西洋風の記念館は当時としては珍しい様式で、大田黒氏が愛用していたスタインウェイ社製のピアノや蓄音器がそのまま残されています。
西洋風の記念館と相対するように整えられた広々とした日本庭園は、錦鯉が泳ぐ池を中心に、ケヤキやアカマツといった巨木が植えられています。池の水は園内の茶室にある中庭から井筒を通って流れ、高低差を利用した「流れ」を渡り、池へと注がれます。川のようなせせらぎや、池へと水が流れ込む静かな音に耳を澄ませるのも楽しみ方のひとつです。
池の奥には休憩ができるあずま屋が設けられており、柱には、数寄屋造りを代表する木材への加工技術「ナグリ」が施されています。職人が手仕事で削ったナグリ仕上げを、ぜひ間近で眺めてみては。
大田黒公園のライトアップ情報
幻想的な情景を見せるライトアップを開催(写真提供:大田黒公園)
日本庭園と、庭園へと続く道に植えられたもみじが色づく11月下旬から紅葉のライトアップを実施。ライトアップ期間中は開園時間を延長し、その美しい姿を夜が深くなるまで存分に楽しむことができます。
《大田黒公園 紅葉&ライトアップ情報》
●住所:東京都杉並区荻窪3-33-12
●ライトアップ期間:2024年11月30日(土)〜12月8日(日)
●ライトアップ時間:
月〜木曜……17:00〜20:00(最終入場19:45)
金〜日曜……17:00〜21:00(最終入場20:30)
●関連サイト:
・大田黒公園|杉並区
・大田黒公園紅葉ライトアップ2024|なみじゃない、杉並!
東京都庭園美術館
東京都庭園美術館 本館 (写真提供:東京都庭園美術館)
1983年に開館。東京都庭園美術館の本館は、もともとは皇族・朝香宮夫妻の邸宅として、1933年に建築された建物です。特徴は、モダンなアール・デコ様式が随所に見られること。アール・デコ様式とは、1930年代にヨーロッパやアメリカを中心に、それまでの曲線的で装飾的なアール・ヌーボー様式から一転して誕生した建築様式で、直線的かつ幾何学的な模様が特徴的です。
その西洋式の建築に対して、以前からの敷地内で受け継がれてきたのが「日本庭園」です。中心に池があり、周囲には植栽や石を用いて造られた築山が配されています。日本庭園内に設けられた茶室「光華」は、本館である旧朝香宮邸とともに国の重要文化財に指定されています。
東京都庭園美術館の夜間開館情報
夕暮れ時のひと時、紅葉が艶やかに彩られます(写真提供:東京都庭園美術館)
東京都庭園美術館では夕方になると毎日、庭が間接照明で照らされます。間接照明で照らされるのは美術館が開館している18時までですが、日が短い秋なら日没前後で夕闇に浮かぶ紅葉が楽しめますよ。
なお、東京都庭園美術館では紅葉の時期に合わせて、夜間開館されることもあります。(2024年は11月22日(金)・23日(土)・29日(金)・30日(土)、12月6日(金)・7日(土))
《東京都庭園美術館 照明点灯概要》
●住所:東京都港区白金台5-21-9
●点灯期間:通年
●時間:日暮れ〜18:00(夜間開館日は20:00まで)
●夜間開館日:
2024年11月22日(金)・23日(土)
2024年11月29日(金)・30日(土)
2024年12月6日(金)・7日(土)
●庭園入場料:大人200円/大学生160円/中学・高校生・65歳以上100円
●公式サイト:東京都庭園美術館
豊島区立 目白庭園
目白庭園の表門から色づいた木々が覗く
東京都豊島区に、より潤いある街づくりをすべく誕生した「豊島区立 目白庭園」。訪れる人を迎えるのは、風格ある表門。「長屋門」と呼ばれる、日本の伝統的な門形式です。
門を抜けた先に建つのが、目白庭園を代表する建物「赤鳥庵」です。1918年に、学童文学者の鈴木三重吉により、豊島区で創刊した子ども向け文芸雑誌「赤い鳥」にちなみ、赤鳥庵と名づけられました。
また、水上に浮かぶ小休憩所「六角浮き見堂」からの景色も見どころのひとつ。池に向かって眺めると、まるで大海を思わせるような池の雄大な様子を望めます。
目白庭園のライトアップ情報
目白庭園の紅葉のライトアップ
目白庭園では例年、庭園の紅葉ライトアップを開催しています。紅葉が一番の見頃を迎える11月に池の周囲をライトアップ。暖色系のライトだけでなく、青色のライティングなどを効果的に用い、まるでイルミネーションのように輝く庭園を楽しむことができます。
2024年も「-めじろアートナイトVol.6-「庭園の紅葉ライトアップ」」を開催。庭園ライトアップは2024年11月16日(土)〜24日(日)の9日間の予定で、混雑防止のため整理券が配られます。当日の17:00から正門前で配布されるので受け取ってから入場してくださいね。
《目白庭園 紅葉&ライトアップ情報》
●ライトアップ期間:2024年11月16日(土)〜24日(日)
●ライトアップ時間:17:30~21:00(最終入園20:30)
●料金:入園料300円(未就学児無料)
●公式サイト:豊島区立 目白庭園
六義園(りくぎえん)
六義園紅葉の様子(写真提供:公益財団法人東京都公園協会)
小石川後楽園とともに、江戸の二大庭園のひとつで、江戸時代に7年の歳月をかけ造られたのが、六義園です。
池と、その周りに山をしつらえた「築山泉水庭園(つきやませんすいていえん)」という様式の庭。有機的につながる池・山・庭石・植栽・茶室をゆっくり鑑賞しながら巡ることができます。
六義園内には『万葉集』や『古今和歌集』に詠まれた名所や旧跡が88カ所再現されており(「八十八境」と呼ばれます)、それらも見どころのひとつ。窓口で購入できる庭園ガイドブックに詳しく掲載されていますので、ガイドブックを片手に、和歌に詠まれた幽玄な景色を満喫してみるのも粋です。
六義園のライトアップ情報
穏やかにライトアップされた庭園の木々たち(写真提供:公益財団法人東京都公園協会)
六義園では例年、紅葉シーズンを迎える11月下旬よりライトアップイベントを開催。この期間には、通常は閉門している駒込駅から徒歩約2分の「染井門」が開門されるため、よりアクセスが良好に。ライトに照らされ、柔らかな木々の影が庭園中で楽しめます。
2024年は11月22日(金)から13日間、夜間特別鑑賞を実施。事前に夜間特別鑑賞券の購入が必要です。
《六義園 ライトアップ開催概要》
●ライトアップ期間:2024年11月22日(金)〜12月4日(水)
●ライトアップ時間:18:00〜20:30(最終入園19:30)
●夜間特別鑑賞料金:
オンライン購入…… 900円
窓口当日券……1000円
●公式サイト:
・六義園
・「庭紅葉の六義園」夜間特別観賞 Special Nighttime Viewing in Autumn.
知るともっと楽しい! 日本庭園の鑑賞ポイント
日本庭園の様式とは(写真提供:国営昭和記念公園)
ここからは紅葉をより楽しむために、日本庭園の見どころや、知っていると楽しい豆知識をご紹介していきます。
日本庭園は、その名の通り日本で生まれ発展してきた庭園のことです。いくつか様式がありますが、ここでは3つの様式について紹介していきます。
日本庭園の代表的な3つの様式
「日本庭園」と一言で言っても、実は鑑賞方法や、庭園の要素などによって名称がさまざまあるんです。日本庭園は大きく分けて、「池泉庭園」「枯山水」「茶庭(または露地)」の3つの様式があります。まずはその3つについて、簡単に解説していきましょう。
様式①:池泉(ちせん)庭園
代表的な池泉庭園 京都府・金閣寺
その名の通り、庭園の中心に池や泉が設けられている日本庭園のことを指します。「日本庭園」と聞くと、多くの人がこの池泉庭園を思い浮かべるのではないでしょうか。
特徴は、池など水を使って庭園の美しさを表現していること。水面に陸地の木々や石が映り込み、幻想的な表情を見せてくれます。
池泉庭園はさらに、鑑賞方法によって3つの形式に細かく分類されます。それが「池泉舟遊式」「池泉鑑賞式」「池泉回遊式」の3つ。
「池泉舟遊式」は、庭園を楽しむ文化が生まれ始めた平安時代に誕生したもの。池に舟を浮かべ、貴族たちが船遊びをしながら、庭園の情景を和歌にするなどして楽しんでいました。その後、平安時代後期から鎌倉時代には、書院などから座って池泉および庭園の様子を眺める「池泉鑑賞式」へ。
そこさらに時が過ぎ、次第に池の周りの陸地をゆっくりと歩きながらその情景を楽しむ「池泉回遊式」へと変遷を遂げていったのです。
様式②:枯山水(かれさんすい)
京都府・龍安寺の枯山水
寺院などの庭でよく見られる様式「枯山水」。水を使わずに日本庭園の美しさを表す様式として、室町時代ごろに発展していったとされています。
特徴は、水を一切使わずして、山水の様子を表現していること。庭に敷いた白砂に模様を描いて水の流れを表現し、石や苔を使って山の様子を描き出します。その場に川や池はないのに、あたかもそこに水が流れているように見える、幽玄の美が枯山水の魅力といえるでしょう。
鑑賞方法は縁側や座敷から庭に向かって座り、ゆったりと情景を感じとるのが一般的です。
様式③:茶庭(または露地)
秋田県・千秋公園の茶庭
日本庭園の様式のひとつ「茶庭」は、門から茶室までの道(路地)に設けられた庭園のこと。茶室までの道すがら、自然の情景をそのまま路地に作り込んだ庭です。お茶を楽しみに訪れる人々を癒す役割を持っています。
誕生したのは、日本における茶の文化の第一人者でもある千利休が活躍した安土桃山時代のころ。茶室へと訪れる前に、わび・さびを基調とした茶庭を眺めることで、雑念を払うことができるのです。次第に「路地」から「美しい情景を露わにする」という「露地」へと表記を変え、ひとつの日本庭園の形として大成されていきました。
分かると楽しい!日本庭園の要素とは?
3つの様式のなかでも、現代において特によく見られるのが、池などの水を主役とした「池泉庭園」。次は、池泉庭園を作る要素や、見るべきポイントなどについて紹介していきます。
日本庭園は日本の心を感じながら、美しく整えられた庭園の情景を眺めるのが醍醐味。見どころを知っておけば、きっと庭園を鑑賞するのがもっと楽しくなるはずです。
要素①:池泉(ちせん)
白鳥庭園の池泉
池泉庭園の中心となる池。周囲には陸地があり、そこに職人たちが意匠を凝らした草木や花々、石などが配置されています。庭園における池や小川は、海や川を表しているのが一般的。
池の中心に岩が据えられていれば、それは島になりますし、浅い池の周りに角のない石が並べられていれば、それは浅瀬を表していることになります。池と、その周辺の陸地の様子がどうなのか、池と陸地がどのようにつながっているのかを見ることで、庭園が表す海や川の姿が見えてきます。
要素②:庭石(にわいし・ていせき)
秋の龍安寺の石庭
庭園を歩いていると、「なんでこんなところに石が?」というシーンに出くわすこともしばしば。実は、庭園において石というのはさまざまな意味を持ち、非常に重要な役割を担っているのです。石を使った表現の手法は大きくわけて2つ。ひとつの石を置いて意味を持たせる「捨石」と、ふたつ以上の石を使って置き方、組み合わせ方で意味を持たせる「石組」があります。
ここでは、池泉庭園でよく見られる庭石の表現を3つピックアップしました。
●三尊石組
陸地に置かれる庭石のひとつで、日本庭園における石組の基本。仏教思想に基づいた石の組み方で、「三尊仏(中尊と左右の菩薩)」を石で表現しています。
●舟石
名前の通り、船に見立てた石のことで、池泉庭園では池の中に置かれます。その様子は、海へと出港、または入港する情景を表します。神仙思想を表す庭石のひとつで、石が沈みかけている様子であれば、多くの宝を積んだ船が旅を終え戻ってきたという意味を持ちます。
●陰陽石
陸地に配される庭石のひとつ。立てた石(陽石)と、横にした石(隠石)2つを並べ、それぞれ男女を表します。2つの石に子孫繁栄の願いを込めて配置したとされています。
この他にも、庭石の組み方はさまざまあります。気になる石を見つけたら、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
要素③:植栽
目白庭園の茶室から見える紅葉(写真提供:目白庭園)
池の周りを美しく彩る植物たちも、池泉庭園における重要な見どころのひとつ。時代によって植えられる植物が異なるのも特徴といえるでしょう。古くは神が宿るとされていた常緑樹(スギやクスノキ)が用いられていましたが、奈良時代以降になるとマツや四季の草花が植えられるように。
現在では日本庭園で四季を楽しむという鑑賞方法が主流となり、紅葉や華やかな草花を植えている庭園も多く見られます。
おわりに:美しい紅葉を観に「日本庭園」に足を伸ばしてみて
山々や庭園を彩る紅葉は、秋にしかない風情を感じさせてくれます。
日の光に輝く紅葉も見事ですが、夜のライトアップの幽玄な美しさは、秋の夜長をいっそう特別なものにしてくれるでしょう。日本庭園をのんびりと歩きながら、紅葉以外にも、池や庭石の様子などに目を向けて、庭園自体をたっぷり楽しむ有意義な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。