日本全体でいよいよ冬の寒さが本番を迎える1月下旬ごろ、南国沖縄では琉球寒緋桜(リュウキュウカンヒザクラ)が咲き始めます。琉球寒緋桜は色鮮やかなピンク色の花びらを持つかわいらしい桜。沖縄の空や海に映える琉球寒緋桜を一目見ようと、桜の名所には毎年多くの観光客が訪れ、賑わいます。
今回は、沖縄県内でもカンヒザクラの3大名所と言われるスポットである本部町の「八重岳(やえだけ)」、今帰仁村の「世界遺産 今帰仁城跡」、名護市「名護中央公園」の名護城(なんぐすく)一帯をご紹介。
寒い冬を抜け出して、沖縄で春の訪れを感じる旅へでかけませんか。
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沖縄の桜「琉球寒緋桜」とは?
濃いピンク色が特徴的な「琉球寒緋桜」
沖縄で咲く桜は「琉球寒緋桜(リュウキュウカンヒザクラ)」という種類で、別名ヒカンザクラ(緋寒桜)、ヒザクラ(緋桜)、タイワンザクラ(台湾桜)とも呼ばれている、沖縄に自生している品種のサクラです。
寒緋桜は日本で一般的に目にする淡いピンク色の「ソメイヨシノ」とは異なり、濃いピンク色の桜。花は下向きに咲き、花弁は散らずに萼(がく)がついたまま落花するのも特徴のひとつです。
桜並木の景色を楽しむのが一般的
また沖縄県内の桜の楽しみ方はソメイヨシノの花見とは異なり、桜の下で宴会をすることはほぼありません。歩きながら桜と景色を楽しむのが主なスタイルです。
沖縄カンヒザクラの開花時期は例年1月~2月
たわわに咲く八重岳の桜
沖縄のサクラ「琉球寒緋桜」は気温が下がっていくことにより開花していきます。そのため沖縄県内でも北部にある桜スポットから咲きはじめ、桜前線は北部から南下していきます。
その年によって多少の違いはあるものの、沖縄本島では、北部にある山「八重岳(やえだけ)」の頂上付近にて1月中旬ごろから咲きはじめます。寒さが増していくことで桜前線も南下し、南部の那覇市などでは1月下旬から2月上旬ごろにサクラの開花が見られます。
沖縄のカンヒザクラ三大名所はどこ?
沖縄各地で出会える「琉球寒緋桜」の3大スポットと言われるのが、本部町の「八重岳」、今帰仁村の「世界遺産 今帰仁城跡」、名護市の「名護城を中心とする名護中央公園」です。
3つのスポットはすべて沖縄本島北部に位置しており、沖縄の桜前線がはじまる場所でもあります。それぞれのスポットでは桜開花時期に合わせて祭りも開催されており、県内外から多くの観光客が訪れます。それぞれの特徴をみていきましょう。
本部町「八重岳」
桜並木道が「八重岳」頂上まで続く
沖縄本島でもっとも早く桜が咲きはじめるとされるのは本部町の「八重岳」。「八重岳」は標高453.4mの山で、沖縄北部にある本部半島の最高峰。沖縄本島では与那覇岳に次ぐ第2位の標高を誇ります。
八重岳一帯には約7,000本の桜が生息し、沖縄県指定の自然保護区になっています。気温が下がることで咲く琉球寒緋桜は「八重岳」の頂上付近から開花。見頃を迎える1月下旬〜2月初旬には、八重岳の山肌や登山道の両端に植えられた桜が見事に咲き乱れます。
高々と伸びたシダの一種であるヘゴ。奥の山にはイタジイが群生
南国特有の植物であるヘゴの木や、沖縄の豊かな山を代表する常緑高木イタジイの間で色づく琉球寒緋桜が見られるのも、八重岳ならでは。頂上までの山道にはところどころに駐車スペースがあるので、車を停めて撮影スポットを探すのがおすすめです。
遠くに伊江島の姿も望める
八重岳からは、本部町の町並みと青い海、そしてその先の伊江島までを眺めることができます。頂上付近まで車で行くことができ、気軽に訪れられる自然あふれる絶景スポットです。
上から眺める寒緋桜の風景も趣深い
琉球寒緋桜の名所であり、豊かな自然に恵まれた八重岳一帯。満開の頃は、山肌にピンク色ののサクラが広がる絶景を見られます。
1月下旬〜2月初旬に「もとぶ八重岳桜まつり」を開催
もとぶ八重岳桜まつりの様子(写真提供:本部町役場)
毎年「もとぶ八重岳桜まつり」として1月下旬~2月初旬にイベントを開催。例年、イベント期間中最初の土・日曜にはステージイベントも行われます。詳細は本部町公式サイトをチェックしてください。
今帰仁村「世界遺産 今帰仁城跡」
今帰仁城跡も桜の名所
本部町の八重岳と同じく、沖縄北部の本部半島にある「世界遺産 今帰仁城跡」も有名な琉球寒緋桜のスポットです。琉球王国建国以前に造られた沖縄最大級の城跡である今帰仁城跡では、特徴的な流線型の石垣を今も見ることができます。
標高100mの山の上にある城跡からは、今帰仁村一帯とその先に広がる美しい海原を眺められ、沖縄県を代表する景勝地の一つともなっています。
今帰仁城跡の石垣と寒緋桜
例年、八重岳とほぼ同時期の1月下旬~2月初旬に見頃を迎える城跡内の琉球寒緋桜。石垣と濃い桜が咲く姿が重なり、ここでしか見られない風景が広がります。
琉球国由来記に「北山王者、本門、平郎門ヲ守護ス」と記された平郎門
入場料を払い、いざ城の本門へ。
本門「平郎門」は琉球国由来記に「北山王者、本門、平郎門ヲ守護ス」としてその名が残る歴史的な場所。
今帰仁城の王様は沖縄北部一帯を治める強い王として伝えられていますが、平郎門はその強さを今に伝える強固な造り。門はせまく、攻めにくい構造になっており、両側に門番が外を見張るためののぞき窓があります。現在の平郎門は昭和37年、琉球王府時代に修復されたものです。
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平郎門から奥に続く道の両側に桜が植えられており、平郎門越しに見る桜並木の撮影もおすすめです。
桜のトンネルで記念撮影
平郎門をくぐり、城跡内に入ると山の上の主郭(俗称本丸)へ登っていく道(階段)があります。ここが城跡内でももっとも桜が集まる場所。桜が作り出した絶景のトンネルの中を歩いてみてください。
城跡へ登る階段の頂上付近から撮影した琉球寒緋桜の並木道
石垣とその先に広がる海を見渡すことができる桜の並木道。平郎門から登りきるまでは約15分です。ちなみに城跡の桜は、城跡のふもとにある今泊集落の区民によって植樹されたそうです。
桜の開花時期にはライトアップを実施
夜にはサクラのライトアップを実施
世界遺産 今帰仁城跡の桜で見逃せないのが、ライトアップ。色とりどりの明かりがサクラと城跡を照らし出し、幻想的な姿を見せてくれます。
ライトアップを一目見ようと、夜でも多くの観光客が訪れます。毎年桜開花に合わせて開催される「今帰仁グスク桜まつり」のイベント期間中は夜遅くまで城跡内への入場が可能。城跡内へ入るには入場料が必要ですが、当日内であれば昼に一度入場した後でも、夜に再入場することができます。
毎年選ばれる今帰仁城跡の北山王&王妃
イベント開催期間中、運が良ければ今帰仁城跡の北山王&王妃と一緒に無料で記念撮影もできますよ。
名護市「名護中央公園」一帯
名護市の中心に広がる「名護中央公園」一帯でも桜の絶景が
沖縄自動車道の北端にある「許田(きょだ)」がある名護市は沖縄北部の経済の中心地。そのほぼ中心に位置する名護中央公園の「名護城(なんぐすく)」一帯が、本部町「八重岳」と今帰仁村「世界遺産 今帰仁城跡」と同じ、沖縄の3大琉球寒緋桜名所のひとつです。
特におすすめは名護城跡内の奉納殿へ続く、約2kmの階段。両脇に桜が咲き誇り、訪れる人を楽しませてくれます。
名護城周辺に咲き誇る桜たち
桜並木道の頂上「奉納殿」近くから、名護市街地、また右に本部半島を見渡すことができます。頂上へは正面から歩くと、車を駐車できる並木道のはじまりから600段以上の階段を登り、約20~30分かかります。
上がりきったころには汗がにじむほどの距離で、ちょっとした運動に。並木道の途中まで車で行ける道もありますよ。
1月最終土・日曜開催の「名護さくら祭り」
ステージイベントも充実の「名護さくら祭り」
例年1月最後の土・日曜には、名護中央公園を中心として「名護さくら祭り」が開催されます。名護中央公園だけでなく、さくら公園のお祭り広場特設ステージはもちろん、名護十字路大通りや名護漁港内など名護市全体が賑わうイベントです。
桜味のアイスクリン!その他地元グルメが堪能できる
地元グルメが食べられたり、夜には桜のライトアップがあったりと昼夜問わず楽しめるイベント。この2日間は名護中央公園周辺には駐車できず、遠方の駐車スペースに停めなければならないので注意しましょう。
カンヒザクラ名所を巡るおすすめ観光コース
今回紹介したカンヒザクラの三大名所は、ドライブしながら巡るのにちょうどよい距離に位置しています。ここではカンヒザクラ観賞にぴったりな、1泊2日のおすすめ観光コースを紹介します。
<1日目>
カンヒザクラ観賞①:名護中央公園・名護城周辺
↓車(約5分)
工場見学:名護市「オリオンハッピーパーク」
↓車(約10分)
ランチ:名護市「我部祖河食堂 本店」
↓車(約23分)
カンヒザクラ観賞②:今帰仁城跡で夜桜鑑賞
↓車(約3分)
宿泊:今帰仁村今泊の古民家宿「ぬ~ね~ん」
<2日目>
「ぬ〜ね〜ん」出発
↓車で約15分
カンヒザクラ観賞③:八重岳
「名護城」でカンヒザクラ観賞
頂上からは名護市街地を一望できる
沖縄自動車道を下りて、名護市「名護城」へ。名護中央公園のふもとから登って、名護市街地を一望。
「オリオンハッピーパーク」でビールの工場見学を
オリオンハッピーパーク外観(写真提供:オリオンハッピーパーク)
名護市に訪れたなら、沖縄のグルメを堪能するのもおすすめ。まずは名護中央公園のすぐ近く、「オリオンハッピーパーク」へ訪れてみては。こちらでは、沖縄のビールメーカー「オリオンビール」の工場見学ができます。
仕込室見学エリア(写真提供:オリオンハッピーパーク)
原料や仕込みから発酵、ビン(缶)詰に至るまでの過程を実際の工場の様子と再現映像でわかりやすく紹介。スタッフが同行し、ビール作りの工程やこだわりを説明してくれます。
見学後には試飲ができる!(写真提供:オリオンハッピーパーク)
ドライバーの方以外に限られますが、試飲スペースではできたてのオリオンビールを飲むことができます(未成年・ドライバーにはソフトドリンクを用意)。沖縄旅行で一度は訪れてほしい観光スポットです。
「我部祖河食堂 本店」ソーキそば(沖縄そば)でランチ
元祖「ソーキそば」の店として知られる「我部祖河食堂」
名護市から今帰仁村へ抜ける道の途中にあるのが「我部祖河食堂 本店(がぶそかしょくどう ほんてん)」。沖縄そばの中でも元祖「ソーキそば」のお店として有名です。
もっちりとした自家製麺と透き通ったお汁、そして箸で触ればホロホロと骨からほぐれる「ソーキ(沖縄の言葉で豚の骨付きあばら肉・スペアリブのこと)」のコンビネーションが絶品!
名物「ソーキそば」
名護市~今帰仁村へ向かう県道71号線沿いにある本店以外にも、県内には複数の店舗があります。
「世界遺産 今帰仁城跡」で夜桜観賞
ライトアップされた夜桜の美しさを満喫
日が暮れてきたら、「世界遺産 今帰仁城跡」で夜桜のライトアップをたっぷり楽しみましょう。ライトアップされた桜はもちろん、夜の石垣の美しさが見られるのは桜開花イベント期間中のみ。昼間とは違う幻想的な雰囲気に感動しますよ。
宿泊はフクギ並木集落今泊にある古民家宿「nunen(ぬ~ね~ん)」で
古民家宿「nunen」で沖縄の暮らしを楽しむ
「世界遺産 今帰仁城跡」のふもとにあるフクギ並木集落「今泊」。この集落の中に位置する古民家の宿「nunen(ぬ~ね~ん)」の周囲には、沖縄の自然がそのまま残っています。「ぬ~ね~ん」とは沖縄の言葉で「何もない」という意味。大きなホテルのような行き届いたサービスや快適さを求める方には不向きですが、沖縄らしい風景や生活を感じたい人にはぴったりの宿です。
ワンフロア、木造の古民家
城跡の夜桜ライトアップを見た後に、帰る宿はフクギ並木の間にひっそりと佇む、昔ながらの素朴な古民家。思い出に残るひとときを過ごせるはずです。
2日目は「八重岳」のカンヒザクラ観賞を楽しんで
八重岳頂上への道で見られる桜たち(写真提供:本部町役場)
今帰仁村の古民家で目覚めた2日目は、3番目の桜名所「八重岳」へ。nunenから車を約15分走らせると、八重岳の山道入り口に着きます。
以上で1泊2日の沖縄桜巡りは終了です。沖縄のカンヒザクラが見頃を迎える1月下旬〜2月上旬にかけて訪れるのにぴったりなルートを紹介しました。今回は沖縄北部の3エリアを巡るため、レンタカーなど車での移動がおすすめです。エリアごとに異なる街の雰囲気や、沖縄のグルメも満喫してみてくださいね。
沖縄の桜観賞で一足早く春を満喫しよう
沖縄本島北部・本部半島は観光地として有名な「古宇利島」や「沖縄美ら海水族館」もあり、冬でも沖縄は見どころいっぱい!各名所のイベント日程や、随時更新される開花状況なども確認しながら、ぜひ沖縄で一足早い春を満喫しましょう。