そもそも仏像とは?
仏像の種類と見分け方
如来
菩薩
明王
天部
その他
仏像の手の形にも意味がある?
仏像めぐりをもっと楽しく

いにしえの時代から日本人の心と共にあった仏像。仏教における崇拝の対象でありながら、その美しさから美術品としても多くの人々を虜にしてきました。たとえ仏教の知識がなくとも、仏像の神々しい姿と心を洗われるような不思議な魅力に、思わず惹かれてしまう人は現代でも多いはず。

今も昔も変わらず人々を魅了する仏像ですが、日本には数えきれないほど多くの種類が存在します。仏像は好きだけど、その違いはなんとなくしかわからない…そんな人も意外と多いのではないでしょうか?

今回は仏像の種類や見分け方など、仏像を見る上で知っておくと便利な基本知識を紹介します。一緒に行く友達に思わず話したくなる、そんな知識を身につけて仏像巡りをさらに楽しみましょう。

そもそも仏像とは?

もともと仏像とは、仏教を始めた釈迦の姿を表した像のことを指しました。しかし、後に釈迦以外の様々な仏の像も作られるようになります。ここでは仏教の祖である釈迦と、仏像の歴史を紹介します。

悟りを開き「仏陀(ブッダ)」と呼ばれた釈迦

悟りを開いた釈迦

悟りを開いた釈迦

今から約2500百年前、インドで生まれた釈迦はさまざまな修行を経て初めて悟りを開きます。そこから「悟りを開いた人」という意味の「ブッダ」という名で呼ばれるようになりました。

中国ではこの「ブッダ」という音を「仏陀」という漢字で記し、これが省略されて「仏(ぶつ・ほとけ)」という言葉になりました。そのため仏像は仏の像、つまり釈迦の姿を意味するのです。現在では、仏像は「悟りを開いた人の像」、あらゆる信仰の対象を象った像という広い意味で定義されています。

仏像の歴史

インドにある古代の釈迦の彫刻

インドにある古代の釈迦の彫刻

仏像の歴史は古代インドからはじまったとされています。最初に作られたのは仏教の祖である釈迦如来像。仏像はその姿を崇め、信仰を深めるためにつくられました。

仏像の制作は釈迦の入滅から500年もあとのことですが、これには釈迦の偉大さから畏れ多くて像にできなかったため、あるいは人間とは別の存在であり、人間の姿では表せないと考えられたため、といった説があります。それまでは、釈迦の足をイメージした「仏足石(ぶっそくせき)」や釈迦が誕生した時に咲いたという「蓮の花」などが崇拝の対象になっていました。

仏足石

仏足石

初めの頃は悟りを得る前の釈迦(菩薩像)と悟りを得たあとの釈迦(如来像)だけが作られていました。しかしその後、釈迦の前に存在したブッダや過去、現在、未来それぞれで民衆を救済する仏など、ほかにもたくさんの仏や菩薩がいると考えられるようになり、さまざまな仏像が作られました。

日本に仏像が入ってきたのは飛鳥時代。善光寺の「一光三尊阿弥陀如来像」や明日香寺の「飛鳥仏像」は国内で最古の仏像とされています。

仏像の種類と見分け方

ご存知の通り、仏像にはさまざまな種類があります。それは人間にもさまざまな種類の人や願いがあるから。仏様も人々の状況や願いに応じてそれぞれ役割を分担しているというわけです。

さて、仏像の種類の多さから、「違いがよくわからない…」「どこに注目してみれば良いんだろう?」そう想う人も多いはず。ここでは、仏像の種類からそれぞれの代表的な仏像、見分けるポイントなどを詳しく解説していきます。

如来

「如来」とは、真理を得て悟りを開いた存在のことで、もともとは仏教の開祖・釈迦の姿をかたどったものです。「如」は真理という意味で、真理を得て悟りを開いた釈迦が、その真理の世界から「来た」という意味で「如来」と呼ばれます。悟りをひらいた後の姿であるため、如来は仏像の中で最も位が高いとされます。

如来の仏像

如来の仏像

如来は他の仏像と比べて装飾が少ない質素な身なりが特徴。これは出家した際に、装飾を外して衣一枚のみを身につけ、その衣がボロボロになるほどの苦行を修め、悟りを得たという釈迦の姿を象徴しているためです。

質素な身なりが特徴の如来

質素な身なりが特徴の如来

如来の装飾は「大衣(だいえ)」という法衣を上半身にまとい、下半身には「裙(くん)」もしくは「裳(も)」といわれる布を巻き付けているだけ。頭髪は「螺髪(らほつ)」という丸く巻かれて粒状になった髪の毛で表現されています。

もう一つの目立つ特徴が白毫(びゃくごう)。これは眉間から伸びた白い毛が右に渦を巻いて固まったもので、ここから光を放つとされています。ちなみにこの毛をまっすぐ伸ばすと2m以上にもなると言われています。

代表的な如来の仏像① 釈迦如来

釈迦如来像

奈良・壺阪寺の釈迦如来像

「釈迦如来」は、仏教の開祖・釈迦の姿をかたどった仏像。悟りを開いた後の釈迦の姿を表しており、仏教を代表する仏像とも言えます。釈迦がまさに教えを説いている様子で、生きとしいけるものを苦しみから救うとされています。

代表的な如来の仏像② 阿弥陀如来

鎌倉大仏も阿弥陀如来像

鎌倉・高徳院の大仏は阿弥陀如来像

阿弥陀如来は「西方極楽浄土」の主であり、「無量寿如来(むりょうじゅにょらい)」「無量光如来(むりょうこうにょらい)」とも呼ばれます。「念仏を唱えると極楽浄土に行ける」という阿弥陀信仰から、迷いや苦しみから救いをもとめるすべての人を悟りへと導き、極楽浄土へ救い取ってくれるとされます。

背中には48本の「放射光」を背負っていますが、中には放射光を省略して、円形の「円光」となっていることも多くあります。

代表的な如来の仏像③ 薬師如来

薬師如来像

千葉・鋸山日本寺の薬師如来像

「薬師如来」は人々を病から救うことができる力を持っており、「医者の長」とも呼ばれます。通常は装飾品や持ち物を持たない如来ですが、薬師如来だけは手に「薬壺(やっこ)」という小さな壺を持っています。このなかに万病に効果のある霊薬が入っているとされています。

日本では古くから病気平癒を願って、多数の薬師如来像が作られました。とくに眼病に霊験があるとされ、熱心な信者の多い仏です。

代表的な如来の仏像④ 大日如来

大日如来像

奈良・久米寺の大日如来像

「大日如来」は、仏教界にある「金剛界」と「胎蔵界」の中心となる仏のこと。宇宙の真理をあらわす仏で、仏教の流れの一つである密教のなかでは最高位にある絶対的な存在です。諸仏の王とされているため、大日如来だけは出家者の姿ではなくインドの王様の姿で表現されているのが特徴。頭に冠をかぶったり、ブレスレットをするなどさまざまな装飾品を身につけています。

菩薩

「菩薩」とは、「悟りを求めるもの」という意味。悟りを開く前の修行の段階にいますが、将来、如来となることが約束されています。悟りを開いた仏と人間の間の身近な存在として広く信仰される菩薩。如来になるための悟りを開く前の釈迦の姿が仏像のモデルとされています。釈迦が出家する前のインド王子だった頃を表わしているので、貴族のようにきらびやかな装飾を身につけているのが特徴です。

紅葉と菩薩像

紅葉と菩薩像

「条帛(じょうはく)」というタスキがけした細い帯状の布や、「天衣(てんね)」という肩から胸側に垂らしている白い帯状の布などの優美な服をまとい、長い髪を美しく結い上げて宝冠をかぶっています。また「瓔珞(ようらく)」というネックレスや「腕釧(わんせん)」というブレスレットなどの装身具で飾り立てているのが特徴です。

十一面観音像

京都・六波羅蜜寺の十一面観音像

「菩薩」は仏教界の序列において如来のすぐ下の位にあり、如来の意志に従ってさまざまな姿に変わります。そのため女性のような姿をしていたり、頭上に顔がたくさんあったり、手が千本あったりと、多様な外観をもつのが大きな特徴。単体でも崇拝されますが、「釈迦三尊」「阿弥陀三尊」のように、如来像の左右に脇侍仏(わきじぶつ)として配置されることもあります。

代表的な菩薩の仏像① 観音菩薩(聖観音)

三十三間堂の千手観音像

京都・三十三間堂の千手観音像

最も広く信仰されている仏で「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」「聖観音(しょうかんのん)」とも呼ばれます。人々の苦しみの声を聴いて救ってくれる仏で、救いを求める者の姿に応じて「十一面観音」や「千手観音」「如意観音」など様々に変化し、慈悲をもってあらゆる人々を救います。浄土教では、現世だけでなく来世の救済にもご利益があるとされています。

観音菩薩は阿弥陀如来の化身ともされ、宝冠の中央に阿弥陀如来の小像「化仏(けぶつ)」が配されているのも特徴です。

代表的な菩薩の仏像② 弥勒菩薩(みろくぼさつ)

弥勒菩薩半跏思惟像

弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしゆいぞう)

「弥勒菩薩(みろくぼさつ)」は、仏の世界「兜率天(とそつてん)」で修業中の菩薩。釈迦が亡くなったあと、56億7000万年後に人間界にあらわれて、人々を救済すると言われている、釈迦の後継者的な存在の仏です。

静かで安らかな姿・表情から人気の高い仏像で、日本では京都の広隆寺にある「弥勒半跏思惟像(みろくはんかしゆいぞう)」が「日本一うつくしい仏像」として有名です。

代表的な菩薩の仏像③ 地蔵菩薩

地蔵菩薩像

地蔵菩薩像

「地蔵菩薩(じぞうぼさつ)」は、釈迦が亡くなってからあと、弥勒菩薩が人間を救いにやってくるまでのあいだ、人々を救う役目を持つ仏。道端の祠や田んぼのあぜ道で見守ってくれている「お地蔵様」は地蔵菩薩のことで、最も身近な菩薩として知られます。安産や子供の無事と健康を願う仏としても有名で、子安地蔵、子育て地蔵、夜泣き地蔵などがあります。

地蔵菩薩は、他の菩薩のように着飾った在家者の姿ではなく,坊主頭に袈裟(けさ)を身につけた修行僧のような姿で表現されます。左手の宝珠と右手に持った錫杖(しゃくじょう)が特徴。

明王

忿怒の形相が特徴の明王

忿怒の形相が特徴の明王

明王は密教から生まれたとされる仏で、仏の教えに従わない者を導く存在。仏教の敵に立ち向かうために、髪が激しく逆立ち、牙が生え、相手を激しく睨みつける恐ろしい姿をしています。悪者を逃さないように顔や手の数が多いことや、武器や蛇などを手にしているのが特徴です。

また、背に炎をまとっていたり、岩盤やクジャクなどの動物に座っていたりと、威厳と迫力に満ちた風貌で描かれています。

如来や菩薩に次ぐ位にあるとされる明王ですが、普段は温厚な如来が教えに従わないものを厳しく調教するために姿を変えて現れたものとも言われています。

代表的な明王の仏像① 不動明王

不動明王像

山口・龍造寺の不動明王像

「お不動さん」で親しまれている不動明王は修行者を守る仏で、明王の中でも最強とされています。また密教では大日如来の化身と考えられています。

右手には煩悩を断ち切る「宝剣」を、左手には煩悩を縛り衆生を救う「羂索(けんじゃく)」という縄状の武器を持っており、煩悩を焼き尽くす力や永遠の勇猛心を表す「火焔光背(かえんこうはい)」を背負っているのが特徴。厄払いや商売繁盛などがあるとされています。

代表的な明王の仏像② 愛染明王(あいぜんみょうおう)

愛染明王像

愛染明王像

「愛欲の王」の意味を持つ愛染明王は、人間の煩悩を完全に否定することなく、愛欲に向かうエネルギーを浄化させて悟りへと繋げる役割を持った仏。恋愛や縁結びのご利益があるとされています。また、「愛染」が「藍染」に通じるとされ、染色業界やアパレル業界からも信仰されています。

光背は赤い日輪(太陽)をイメージしたもので、「宝瓶」の上に乗った蓮華座に座っている姿が一般的です。愛染明王は「一面三目六臂」の仏像で、身体は色欲をあらわす赤色に染まり、頭に「獅子の冠」を乗せているのが大きな特徴。また6本の手はそれぞれ「持物」を持っていますが、その中には弓と矢が含まれています。

代表的な明王の仏像③ 孔雀明王(くじゃくみょうおう)

孔雀明王像

孔雀明王像

孔雀明王(くじゃくみょうおう)は、病気をしりぞけ延命をかなえるという仏です。恐ろしい姿の明王ですが、孔雀明王だけは「菩薩面(ぼさつめん)」と呼ばれるやさしく穏やかな顔をしていて、武器も持っていません。代わりに4本の腕それぞれに「吉祥果」と呼ばれるザクロや、「蓮華」と呼ばれる蓮のつぼみ、招福をしめす「孔雀の尾」を持っていることが特徴。

孔雀明王はその名の通り、孔雀の背に乗った姿で表現されます。孔雀は古代インドで煩悩の象徴とされていた毒蛇を食べても死ななかったため、煩悩をのぞき、災いをしりぞける仏として崇拝されてきました。

天部

天部は仏教に帰依した神々のことで、仏教の信仰を妨げるものから人々を守る「護法」の役割があります。もともとは、主にバラモン教やヒンディー教にでてくるようなインド固有の神様でしたが、仏教に取り入れられて仏法を護る役割を担いました。中には、中国や日本の影響をみられるものもあります。天部という名前は「天界に住む者」という意味から来ています。

四天王の一体 広目天

奈良・東大寺の四天王の一体 広目天

土着の神々をベースとしているため数や種類が多い天部。仏教世界を守る「四天王」や薬師如来を守護する「十二神将」といった戦士のようなものだけでなく、風神・雷神など自然現象や抽象的な概念を神格化したものや、七福神のような庶民が信仰するものも天部に含まれます。

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江戸最古の七福神【谷中七福神巡り】でパワーをもらおう

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谷中七福神の七福神福絵

江戸最古の七福神【谷中七福神巡り】でパワーをもらおう 江戸最古の七福神、「谷中七福神」。毎年お正月に行う七福神巡りという風習があります。田端駅から上野駅には7つの神社が点在。今回は、東京で最も古いといわれる、谷中七福神の田端駅スタートのめぐり方を紹介します。

神社・寺

容姿のバリエーションも様々で、甲冑に武器を持ったものや中国風の衣装をまとったものも存在します。また、他の仏像には存在しない、女性や動物の姿の像があることも特徴です。

代表的な天部の仏像① 帝釈天(たいしゃくてん)

帝釈天の彫刻

帝釈天の彫刻

「帝釈天(たいしゃくてん)」は、仏教を守る武将として表される仏。四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)を従える神の中の神とされ、数々の戦いを勝ち抜いた軍神と言われています。密教では「一面三目二臂」の武装した姿で登場し、手には古代インドの武器である「金剛杵(こんごうしょ)」を持ち、白いゾウに乗っています。

代表的な天部の仏像② 弁財天(べんざいてん)

弁財天象

京都・三千院の弁財天象

「弁財天(べんざいてん)」は、水の恵みをあらわす仏で、仏像には珍しい女性の姿をしています。日本では七福神のひとりとして有名ですが、もともとはインドの「サラバティー(聖なる河)」を神格化したもの。富や食べ物、子孫をさずける仏でもあります。
楽器の琵琶を持っていることが多く、他に「宝珠」などを手に持ち、頭に「人頭蛇身」の「宇賀神(うがじん)」を乗せているものもあります。

代表的な天部の仏像③ 阿修羅(あしゅら)

阿修羅像

阿修羅像

「阿修羅(あしゅら)」は、釈迦を守護する仏です。鳥の顔を持つ「迦楼羅(かるら)」や、音楽神「緊那羅(きんなら)」と共に「八部衆(はちぶしゅう)」に含まれます。

古代インドの太陽神であった阿修羅は、後に帝釈天となるインドラと絶えず戦いを繰り広げており、やがて魔神・鬼神として扱われてしまうようになりました。しかし阿修羅は釈迦の説法に聞き惹かれ、これまでの罪を懺悔して釈迦を守護する神となりました。
仏像では「三面六臂(さんめんろっぴ)」の姿で、表情は明王と同じ忿怒(ふんぬ)の形相。3組の手は、ひとつで合掌し、ひとつで月と太陽を持ち、残るひとつで矢と弓を持っています。

その他

現存する仏像の中には、実は仏以外の存在も含まれています。それは仏と同じくらい徳が高い存在と考えられていたため。ここでは仏以外で仏像として祀られる代表的な例を紹介します。

その他の仏像① 羅漢

五百羅漢像

五百羅漢像

悟りを開いた高僧を指す「阿羅漢」の略称で、釈迦の弟子の中で最も位の高い弟子に与えられる称号でした。長く世の中に留まって仏の決まり事を守っていくようにと釈迦から命じられた16人の羅漢である「十六羅漢」、釈迦の入滅後に仏典編集会議で集まった500人の羅漢である「五百羅漢」などが仏像として祀られています。

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【羅漢寺】断崖絶壁の岩山にそびえ立つ五百羅漢像の謎に迫る

大分県 < 日田・耶馬

断崖絶壁に立つ羅漢寺

【羅漢寺】断崖絶壁の岩山にそびえ立つ五百羅漢像の謎に迫る 断崖絶壁にそびえ立つ「羅漢寺」。巨大な岩山が圧巻の羅漢山の中腹に位置し、日本三大五百羅漢の一つです。寺内には3,770体もの石仏が並び、厳粛・圧巻・千年の霊気さえも感じるほどの存在感。今回は大分県中津市随一のパワースポット羅漢寺を紹介します。

神社・寺

その他の仏像② 祖師

弘法大師像

弘法大師像

インドや中国、日本において仏教の布教に尽力した人物や、仏教の隆盛を支えた高僧の姿をうつしたもので、仏像と一緒に崇拝の対象となりました。仏教の宗派の開祖である人物もこれに含まれます。「弘法大師(空海)」や「空也上人」、「鑑真和上像(がんじんわじょうぞう)」などが仏像として有名です。

弘法大師の開いた真言宗の総本山「高野山」に関する記事はこちら↓↓
【高野山】空海が築いた仏教の聖地

和歌山県 < 高野山

高野山金剛峯寺

【高野山】空海が築いた仏教の聖地 1,200年の歴史が息づく世界遺産「高野山」。和歌山県高野町に位置する、弘法大師・空海によって開かれた日本仏教の聖地です。高野山金剛峯寺は真言宗の総本山。紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録された人気の観光名所となっています。

神社・寺

仏像の手の形にも意味がある?

仏像には色々な姿があり、ポーズも様々。しかし一つ一つのポーズにはちゃんと意味があるんです。特に仏像の手の形は「印相(いんそう)」と呼ばれ、それぞれ重要な意味を持ちます。ここでは代表的な仏像の印相とその意味を解説します。

施無畏印(せむいいん)と与願印(よがんいん)

まず最もポピュラーなのが「施無畏印(せむいいん)」と「与願印(よがんいん)」。日本で最も有名な大仏の一つ、奈良・東大寺の毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)の手の形がこれに当てはまります。

東大寺の大仏

奈良・東大寺の大仏

施無畏印は、右手の中指を軽く曲げて「やあ」とあいさつするように胸前に上げた印相。施無畏印は読んで字のごとく「畏(おそ)れることはない」という意味の印相です。

与願印は左手の中指と薬指を軽く上げて、掌を上向きにした印相。相手の願いを聞き届けようという姿勢を表しています。この2つはセットで用いられることが多く、釈迦如来像に多く見られる印相です。

智拳印(ちけんいん)

智拳印

智拳印の仏像

胸前で左手を握り人さし指を立て、それを右手で握る「智拳印(ちけんいん)」は大日如来独特の印相で、最高の知恵を表しています。右手が左手の指を包むような形は、インドで清浄の手とされる右手を仏、不浄の手とされる左手を衆生になぞらえ、仏の智慧が衆生を包み込むことを表しています。

定印(じょういん)

定印定印の仏像

左手の指を伸ばして掌を上向け、その上に右手を同じようにして重ねて親指同士の先を合わす「定印(じょういん)」。大日如来や釈迦如来坐像に多く見られる姿勢で、「禅定印」とも呼ばれることもあるように、深い瞑想に入る姿を表しています。阿弥陀如来の「定印」は、人差し指を親指につけて輪を作る場合もあります。

来迎印

来迎印

来迎印の仏像

来迎印はこれは阿弥陀如来特有の印相とされ、臨終の際、阿弥陀仏が西方極楽浄土より迎えに来るときのポーズとされています。「施無畏印・与願印」と似ていますが、指で輪を作るのが特徴。

ちなみに阿弥陀如来によるお迎えのスタイルは、生前の行いによって9つのランクに分かれており、印相の違いによって見分けることができます。

仏像めぐりをもっと楽しく

今回は、仏像の種類と見分け方について紹介してきました。あなたのお気に入りの仏像は見つかったでしょうか?仏教に関する細かい知識を知らなくても、仏像の特徴や役割、注目ポイントなどを知っているだけで、仏像を見るのが何倍も楽しくなるはず。友達との仏像めぐりでさりげなく今回の知識を披露すれば、あなたも一気に尊敬の的になってしまうかも。