日本の夏の風物詩として欠かせないのが、やはり怪談やお化け。日本には「幽霊」や「妖怪」など様々なお化けが古くから歴史書や民間伝承に登場し、その存在が語り継がれてきました。その非日常的な世界観やゾクッと感じる怖さは現在でも人々を魅了し、親しまれています。
そんな幽霊や妖怪ですが、実ははっきりとした違いがあることをご存知でしょうか?今回は、幽霊と妖怪の違いやその歴史を徹底解説。
さらに代表的なものや海外の幽霊・妖怪も紹介します。これを知れば、怪談がもっと面白く感じられるはず。
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幽霊と妖怪の違い
日本の怪談などに登場する幽霊や妖怪。幽霊とは「死んだ人の霊」で、妖怪とは「奇怪現象や非日常的な存在」のことを指します。
日本人にとって馴染みのある言葉ですが、その意味の違いを聞かれると、なんとなくしか答えられないという人も多いはず。実は幽霊と妖怪にはそれぞれ定義があり、別のものとして扱われているんです。
まずはここで、幽霊と妖怪の定義を見ていきましょう。
幽霊とは
枕元に現れる幽霊
幽霊とは「死んだ人の霊」や「成仏できなかった魂の姿」のこと。この世に未練や恨みがあって成仏できない死者が、幽霊となって因縁のある人の前に姿を表すとされています。
幽霊の多くは、この世に思いを残したまま死んだ者であるため、その望みや思いを聴いて、執着を解消して安心させることで、姿を消すとも言われています。
妖怪とは
妖怪百鬼夜行
妖怪は、人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、それらを起こす不思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のこと。「妖(あやかし)」「物の怪(もののけ)」などとも呼ばれています。主に人間以外の動物や物から変化したもので、特定の場所から出現し、誰でも見境いなく脅かすとされています。
古代では、自然物にはすべて精霊が宿っていると信じられてきました。人の力の及ばない自然災害などは、人間を超越した存在のせいにすることで説明されてきたと考えられています。
ここまでの違いをまとめると、
【幽霊】特定の人の前に現れてこの世での未練を晴らす
【妖怪】特定の場所に現れて見境なく人を脅かす
このように分けることができると言えそうです。
日本の幽霊の歴史
それでは、ここから幽霊が現在のように日本で知られるようになった歴史を見ていきましょう。
幽霊の始まり
奈良時代に完成した日本最古の歴史書と言われる「古事記」には、死者が行く黄泉の国の存在が描かれています。死者がこの世を離れて別の世界へ行くという概念はこの頃からあったと考えられます。
さらに、幽霊が怪談の中で悪霊として描かれたのは、平安時代初期の説話集「日本国現報善悪霊異記」が初めて。その後室町時代以降になると、能や歌舞伎のテーマとしても扱われるようになりました。
怪談や絵画によって有名に
幽霊の絵画
江戸時代に入ると、幽霊の存在は一気にポピュラーなものに変わっていきます。江戸時代以前から存在していた怪談は、「怪談噺」として落語の演目となり、庶民の間で大流行。「雨月物語」や「四谷怪談」といった名作と言われる怪談は、この頃に確立されたと言えます。
さらに、幽霊は当時流行した浮世絵や水墨画でもその姿が描かれるようになります。中でも江戸時代初期の画家・円山応挙の描いた幽霊は、髪を乱し、青ざめた顔に白装束、といったリアリティあふれる姿をしていました。この幽霊画は非常に有名となり、これが現在の「幽霊のイメージ」の典型と言われています。
幽霊には足がない?
日本の幽霊のイメージ
日本の幽霊の典型的なイメージとして最もよく言われるのが「足がない」こと。これには「仏壇に炊いたお香の煙で足が見えない」「地獄で足を切られる」など諸説ありますが、最も有力なのは、先ほども登場した円山応挙の幽霊画に足が描かれていないため、と言われています。
日本の妖怪の歴史
幽霊と同じく妖怪にも長い歴史があります。妖怪はどのように生まれ語り継がれているのでしょうか。
神と表裏一体の存在であった妖怪
ヤマタノオロチと戦うスサノオノミコトの像
妖怪が登場したのも、奈良時代の歴史書「古事記」や「日本書紀」が初めと言われています。ヤマタノオロチ(大蛇の妖怪)や鬼などがこの頃すでに登場しており、当時の妖怪は神が堕落して恐ろしい姿に変化したものとして描かれました。
また、逆に妖怪が神として祀られる場合もあり、神と妖怪が表裏一体の存在とされてきたことがわかります。また、平安時代には「今昔物語集」など怪異にまつわる説話集も編纂されました。
怪談や絵画にも登場
葛飾北斎「百物語」(イラスト)
中世(鎌倉時代~室町時代)には妖怪の絵巻物が刊行され、それまで文章でしか表現されなかった妖怪の姿が、絵で表現されるようになりました。中でも妖怪たちが行列をなす様子を描いた「百鬼夜行図」は当時の代表的な作品です。
江戸時代に入ると、幽霊と同じように多数の妖怪画絵巻や、妖怪をモチーフとした浮世絵が描かれます。中世では人に害をなす「脅威の象徴」として描かれることが多かった妖怪ですが、江戸時代以降の作品では、親しみのある「キャラクター」として描かれることが多くなり、現在のような妖怪のイメージが形成されていきました。
また、妖怪の伝承に基づいた「百物語」など怪談会が大流行。伝承や物語をミックスした書籍などの創作も増えていきました。
現代の妖怪
現代ではさらに妖怪のキャラクター化が進み、漫画や映画、ゲームなどでも描かれるようになりました。また、次に紹介する「トイレの花子さん」や「口裂け女」など、現代のシチュエーションで語られる「学校の怪談」や「都市伝説」から生まれた、新たな妖怪も登場してきました。
日本の伝統的な妖怪
多くの歴史書や民間伝承で語り継がれてきた妖怪。ここでは、古くから人々の間でその存在が認められ、多くの逸話を持つ日本の伝統的な妖怪を紹介します。中でも鬼、河童、天狗は「日本三代妖怪」と呼ばれ、日本を代表する妖怪として誰もが知る存在となっています。
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鬼
鬼のイメージ
鬼は、古代から物語や伝統芸能の題材にも頻繁に登場する妖怪。頭には角、口には牙を生やした恐ろしい姿で、赤や青の体に金棒を持った様子が一般的なイメージとして描かれます。古くから怨霊の化身や人喰いといった、人間に害をなし恐怖を与える存在として信じられてきました。また仏教との関連から、地獄の番人として描かれることも多い妖怪です。
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河童
河童
河童は、水辺に棲むとされる妖怪。子どものような姿をしていますが、全身が緑色で水かきを持ち、頭の上には水の入った皿が乗っています。皿が乾いたり割れてしまうと死んでしまうとも言われています。「いたずら好きだが悪さはしない」と言われる一方で、水辺にいる人を水中に引き込んだり、相撲をして負けると尻子玉(しりこだま)と呼ばれる肝を抜かれたりする、といった言い伝えもあります。
天狗
天狗
天狗は山奥に棲む妖怪で、山伏のような姿に真っ赤な顔と長い鼻が特徴。羽うちわを持って空を飛ぶ様子がよくイメージされます。中国の古書「山海経」や「地蔵経」で語られた伝説が、日本の信仰と合わさって生まれたと言われています。平安時代末期に活躍した武士・源義経は、鞍馬山の天狗に武術を教わったという逸話が有名です。
座敷わらし
座敷わらし
座敷わらしは、おかっぱ頭の子どもの妖怪。名前の通り古い日本家屋などに現れ、見ると幸福になれると言われています。座敷わらしは実際に目撃したという噂も多い妖怪。東北地方には座敷わらしが現れると有名な宿があり、一年先まで予約が埋まるほどの人気です。
ろくろ首
ろくろ首
ろくろ首は、古典の怪談や妖怪画の題材としてよく取り上げられる妖怪。中でも江戸時代に落語として語られたものが有名です。普通の人間の姿をしていますが、首が異様に長く伸びて見る人を驚かせます。地域によっては、首が胴体を離れて浮遊すると言われる場合もあります。
現代の日本の妖怪
現代では「学校の怪談」や「都市伝説」など、伝統的な言い伝えとは異なり、より日常生活に結びついた話も数多く語られます。そして、その中から新たな妖怪が誕生する場合もあるのです。ここでは、そんな現代に誕生した妖怪を紹介します。
トイレの花子さん
トイレの花子さん
トイレの花子さんは、学校の怪談の中に登場します。その内容は、誰もいないはずの学校のトイレで、ある方法で呼びかけると「花子さん」という女の子から返事が返ってくるというもの。
手前から3番目の個室をノックして、「花子さん、遊びましょ」と呼びかけるなど、話の細かい設定や呼びかけの方法などは地域によって異なります。返事が返ってくるだけの場合もあれば、方法を間違えたり花子さんをからかったりすると、実際に現れて襲われるといった話もあります。
口裂け女
口裂け女
口裂け女は、1979年に話題となり一時は社会現象にまでなった都市伝説。その内容は、大きなマスクをした若い女性が、学校帰りの子供に 「私、きれい?」と訊ねてきて、「きれい」と答えると、「これでも…?」と言いながらマスクを外し、その口が耳元まで大きく裂けていた、というもの。
この都市伝説は全国の小・中学生に非常な恐怖を与え、パトカーの出動や集団下校が行われるほどのパニック状態となりました。
海外にも幽霊や妖怪はいる?
これまで日本の幽霊や妖怪について紹介してきましたが、海外にも同じような幽霊や妖怪は存在するのでしょうか?ここでは、海外の怪談や都市伝説に登場するものをいくつか紹介します。
ブラッディメアリー
鏡の中のブラッディメアリー
ブラッディーメアリーは、アメリカの都市伝説に登場する女性の幽霊。真夜中に鏡の前に立ち、3回名前を呼ぶと姿を現すとされ、肝試しとしても行われます。
一般的には長髪の若い女性で、血まみれの衣装を身につけていることから、ブラッディーメアリーの名前がつけられました。呼び出すと、顔を引っかかれて気絶する、発狂して死亡するなど、かなり危険な幽霊として知られています。
グレムリン
グレムリンは妖精の一種とされ、機械にいたずらをすることで知られます。もともとは、人間の発明にヒントを与える、職人の手引をするなど協力的でしたが、人間が感謝をないがしろにしたため、悪さをするようになったと言われています。
座標を狂わせる、ガソリンを飲むなど、飛行機に取り憑いて悪さをすることで有名ですが、これは20世紀初頭にイギリスの空軍パイロットの間でその存在が噂されたのが始まりと言われています。
ポンティアナック
ポンティアナック
ポンティアナックは東南アジアのマレー半島やインドネシアに伝わる妖怪で、女性の姿をした吸血鬼と言われています。もともとは妊娠中に死亡した女性の幽霊とされており、赤ちゃんの泣き声と共に現れ、出会ったものは鋭い爪で胃に穴を開けられて内臓を食べられるという恐ろしい妖怪です。
また、ポンティアナックは、外に干してある服の臭いを嗅ぎ分けることで、獲物の場所を特定すると言われているため、一部のマレー人は洗濯物を一晩中外に干さないよう気をつけているんだとか。
「怖い!」けど魅了されてしまう不思議な存在
今回は、日本の幽霊や妖怪の歴史を見てきました。書物、伝承、絵画やアニメに至るまで、形を変えながらも、いつの時代も人々を怖がらせ、楽しませてきた幽霊や妖怪。時代を超えて受け継がれてきた日本の伝統文化ともいえます。
不思議な世界が人々を魅了し続ける限り、この伝統は未来にも語り継がれ、新たに生み出されていくことでしょう。