地域に愛される「下町商店街」の魅力とは
【下町人情キラキラ橘商店街】の約40年続く朝市を覗いてみよう
まとめ

全国各地に点在している「商店街」には、その土地柄を表すおもしろい要素がたくさん詰まっています。人情深さに触れられたり、地域の名物を味わえたり、限定グッズがもらえるスタンプラリーを開催していたり…。旅行や観光の際は商店街にも訪れて、地域の魅力に触れてみてはいかがでしょうか?

今回紹介するのは、東京都の亀戸エリアに位置している「下町人情キラキラ橘商店街」。昔から地域密着型の商店街として、地元住民たちの生活を支えてきた商店街です。地域に根付いた商店街の魅力を探りながら、毎月開催されているという朝市に訪れてみました。

地域に愛される「下町商店街」の魅力とは

観光地として人気の高い墨田区・台東区などを含む東京東エリア。両国、浅草、谷根千などを筆頭に、下町の良さを残すエリアとして多くの人が観光に訪れています。個性豊かな魅力があふれる町が点在していますが、その中でも不思議な魅力を持っているのが墨田区に該当する「京島」エリア。

木造住宅が並ぶ京島エリア

木造住宅が並ぶ京島エリア

ここは、通りから1歩足を踏み入れるだけで、まるで昭和時代にタイムスリップしたかのような木造住宅が並ぶ景観が残り、どの通りにも小さなお店が点在し、本島の下町人情に触れられる場所なんです。さらに、まだまだ観光客が少なく、朝も昼も夜も、東京とは思えないほど街全体に流れる時間がゆったりしているのも大きな魅力のひとつといえるでしょう。

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下町人情キラキラ橘商店街

そんな京島に立つ商店街が、今回紹介する「下町人情キラキラ橘商店街」です。

一度聞いたら忘れられないインパクトのある名前の商店街は、京成曳舟駅から徒歩約10分の場所に位置しています。東京の新観光名所となった東京スカイツリーのある押上駅の隣駅ながら、喧騒を一切感じさせない緩やかな時間が流れる京島エリア。そこで長年、住まう人々たちを手助けする「町の商店街」として活躍してきたキラキラ橘商店街は、どんな魅力をもっているのか。商店街事務局に訪れて話をうかがってきました。

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テーマパーク

「下町人情キラキラ橘商店街」。名前の由来は?

商店街事務局

キラキラ橘商店街事務局

商店街の中に立つ事務局は、赤色の看板が目印。2階は会議室ですが、1階には事務所とテーブルが配置されており、商店街で購入した食事などはここに持ち込んで食べることもできるそうです(午前10時〜午後6時まで年中無休で開放)。取材中にも商店街の方や次回のイベント担当者がふらっと訪れており、開けた空間であることがわかります。

事務局の内観

ふらりと立ち寄ることのできるキラキラ橘商店街憩いの空間

まずは事務局長の大和さんに、印象的な商店街の名前の由来を聞きました。

「この商店街の正式名称は『向島橘銀座商店街』といいます。「下町人情キラキラ橘商店街」は、愛称といいますか、今から30年前の1989年に商店街全体をカラー舗装しリニューアルしたタイミングで新しくつけられたものなんです」と大和さん。

このインパクト抜群の商店街名は、公募により約4,000通の中から選ばれた当時小学3年生の女の子が考えたものなんだそう。商店街が大切にしている「下町人情」という言葉を頭につけ、「さらにキラキラと輝くように繁栄していこう」という願いを込めてつけられたのです。名前からも地域に愛されていることがうかがえますね。

商店街に見える3つのタイプに注目

大和さんは「商店街は3つのタイプに分かれます」と話します。「ひとつは「インバウンド型」とも呼ばれる商店街で、観光客で賑わう商店街のことです。もうひとつは「にぎわい型」とも呼ばれる商店街で、例えば高円寺や中野の商店街など、駅からも近くアクセスもしやすいエリア。そして最後が、キラキラ橘商店街が該当する「地域密着型」です。とことん地域に根付いた商店街で、地域貢献をするために地元の住民たちをサポートする役割があると考えています」。

1975年頃の商店街の様子

1975年頃の様子

今でもなお日本には多くの商店街がありますが、よくよく考えてみると、観光客と活気にあふれている商店街はその中のほんの一部だということがわかります。もともとは地域住民の生活を支えるために生まれたはずの商店街のほとんどは、人が都市部へと流れてしまったり、ネットショッピングなどが発達したりと時代の変化とともに経営が難しくなり、閉めざるを得なくなってしまったのです。

同商店街は最寄りの京成曳舟駅から、徒歩約10分の場所に位置しています。町の商店街としてはかなり駅から距離がある方で、その道中には大きな観光施設もないため、商店街に訪れようと思っていなければ、たどり着くことができないでしょう。ですが、意外にもこの距離の遠さが「地域密着型」には必要なことであると、事務局長の大和さんは言います。

「駅の近くにないからこそ、駅チカのスーパーに行けない人は24時間営業の商店街のスーパーで買い物ができますし、大人たちが集う商店街が住宅街にあると、地元の子供を持つ親も安心できますよね。地域密着型の商店街は、駅から遠いからこそ地域密着型でいられるんです」。

「新しさ」と「昔ながら」を大切にする商店街に

地域密着型の商店街としてこの町を支えてきたキラキラ橘商店街ですが、やはり商店街経営者の年齢が高齢になってきて、閉めるお店も増えてきているそう。ピーク時には137店あった商店街の店舗も、いまでは75店舗までに下がってしまいました。

それでもなお、「地域貢献をしたい、地域住民が買い物難民にならないように商店街を活性化させたい」という思いから、昨今は商店街にお店を誘致したり、学生とコラボしながら町づくりを行ったり、イベント開催の場所として商店街を使ってもらったりと、これまでの地域密着型商店街の伝統を残しつつ、さまざまな取り組みを行っているのです。

キラキラ会館外観

一角に立つ集会所「キラキラ会館」もイベントの会場に活用

その一環として、毎月必ず何かしらのイベントを開催しているというキラキラ橘商店街。多彩なイベントを開催しながら人と人とが町で繋がる場所を提供し続けています。

住民の生活を支えながら、さらなる発展を遂げていく新しい地域密着型商店街となるに違いありません。その魅力を探りに、押上や浅草だけでなく、さらに足を伸ばして下町人情キラキラ橘商店街に足を運んでみてはいかがでしょうか。

夜市の看板

毎年9月には夜市を実施。ちびっ子縁日などを開き、多くの人々が集う

【下町人情キラキラ橘商店街】の約40年続く朝市を覗いてみよう

キラキラ橘商店街朝市看板

毎月必ず開催される「朝市」へ

下町人情キラキラ橘商店街が開催しているイベントのひとつに、毎月第4日曜(12月のみ第2日曜)に行われる「朝市」があります。より地元に根付いた商店街として地域に貢献できるようにと、1980年の開始から40年弱続いているという伝統的な月1回のイベントです。

開催時間は朝6時ごろ〜9時ごろまで。お店によってオープン時間はさまざまですし、月によって営業しているお店もさまざまですが、のんびりと下町人情に触れる観光をしたいという人にはぴったりのイベントです。

最後に、朝市の様子を覗いてみましょう。

マイペースに楽しむ下町商店街の朝市

京成曳舟駅

京成電鉄押上線 京成曳舟駅

よく晴れた日の朝。京成曳舟駅から、商店街を目指し歩いていきます。さすが押上駅の隣というだけあって、道中、建物の隙間から大きなスカイツリーが見えます。目前には東京の観光名所が大きく佇んでいるのに、大通りから一歩外れた道を覗いてみると、そこは古き良き木造住宅が並んでいるというコントラストが印象的でした。

京島から見えるスカイツリー

建物の隙間からスカイツリーが顔を覗かせる

朝の京島エリア

朝日が差し込み穏やかな影を落とす

駅から徒歩約10分かけてのんびり歩いていくと、見えました「下町人情キラキラ橘商店街」です。

ポップでかわいらしい看板が目に止まります。店舗マップを見てみると、かなり長い商店街であることが分かります。実はこのキラキラ橘商店街、地域経済・地域活性化への貢献やさまざまな取り組みが認められ、2013年度には、経済産業省が全国の商店街を対象に認定した「がんばる商店街30選」のひとつとして、東京都内で唯一選ばれた実績も持ちます。

キラキラ橘商店街マップ

下町人情キラキラ橘商店街案内マップ

商店街を覗いてみると、店の前に台を構えて朝市用の出店をしている店舗がちらほら見受けられます。どうやらこれが朝市のスタイルのよう。揚げたてのさつま揚げ、串焼きにお寿司など、中には朝市だけの特別メニューを用意しているお店もあります。この日の出店は約20店舗ほどでした。お腹をすかせて行くのが正解かもしれません。

商店街でくつろぐネコ

ネコがくつろぐ姿を発見

のんびりと散策していると、おしゃれなカフェを見つけました。

すみまめカフェ

すみまめカフェ

「すみまめカフェ」というこちらは、商店街の誘致によりオープンしたカフェ。普段は墨田区で仕入れたコーヒーやパンを提供していますが、朝市では筑波で採れた新鮮な野菜を店頭に並べています。この日揃っていたのは、生でそのまま食べられるオクラや空芯菜など。「ぜひ生で食べてみてください」という言葉に押され、オクラを購入してしました。生で食べられるほど柔らかいのにシャキシャキと歯ごたえがあり、それでいて甘いという、これまで食べたことのない絶品のオクラでした。

新鮮な野菜を用意

朝市の時だけ販売しているという採れたての野菜たち

お客さんはちらほらとすれ違う程度でしたが、歩いていると、ご近所さんでしょうか、店主と仲良く話しているお客さんがたくさんいました。朝市にお店を構える店主の方々に話しかけてみると、どなたも優しく朗らかなのには驚きました。会話を楽しみながら、マイペースに商店街を散策できるのが大きな魅力ですね。

商店街朝市の様子

地域の方たちの交流の場でもある商店街

ちなみに、商店街にはゲストハウスもあるそうで、そこに宿泊していたのでしょうか、外国人カップルがのんびりと商店街を散策する姿も。地域に寄り添う商店街としての在り方は変えずとも、観光客が少しずつ集まってきている様子がうかがえました。

商店街に立つ田丸稲荷神社

最後は商店街の一角に立つ「田丸稲荷神社」でお参り

町に根付いたキラキラ橘商店街でゆったりとした時間を過ごそう

まだまだインバウンド型の商店街のように観光客で大賑わいはしていないものの、地元の人たちの温かな笑顔と笑い声が響く、穏やかな空間がキラキラ橘商店街には広がっていました。これこそまさに、「下町人情」あふれる商店街のカタチなのかもしれません。

都会の喧騒から外れた昭和の面影が残るこのエリアで、のんびりと人の温かさに触れながら商店街を散策してみてはいかがでしょうか。