東京だけでなく、日本全国の台所を支えてきた「築地市場」。今では東京観光に欠かせない、外国人観光客に大人気のスポットだということをご存知でしょうか。新鮮な海鮮料理や魚介類、江戸前寿司を食べられるだけでなく、マグロの競りといった活気溢れる市場の様子など、ここにしかない魅力を求めた観光客で連日賑わう市場です。
2018年に中央卸売市場、いわゆる場内市場が豊洲に移転しました。しかし、一般向けに解放されている築地場外市場の活気はいまだ健在。変わらぬ賑わいを見せています。
今回は、そんな日本の食を支えてきた築地市場の歴史や見どころを紹介します。
築地市場の歴史
築地市場全体
築地市場は東京都内に11か所ある東京都中央卸売市場の一つ。2018年に江戸時代から続いてきた卸売市場としての役目を終え、場内市場が豊洲へと移転した築地市場。まずは、これまでの歴史を振り返ってみましょう。
江戸時代
築地は最初から卸売市場の街として栄えたわけではありませんでした。1657年に起きた「明暦の大火」により、隅田川周辺は大きな被害を受けます。その復興計画の中で隅田川河口一帯が埋め立てられ、武家地として整備されました。この武家地こそが、築地のルーツとなります。
修復工事は、大火によって焼失した本願寺の門徒らが中心となり進められました。以前は浅草にあった本願寺も築地に再建されます。このように、築地は文字通り海を埋め立て「築かれた地」なのです。
江戸時代に入ると、築地の武家地はより発展し、多くの武士や大名が生活するようになります。そのため、当時の商人は米や炭、薪といった生活用品を彼らに売り、生計を立てていました。こうして築地の経済は回り出し、人口も増え、成長を遂げていきます。
明治時代以降
江戸時代後半、築地に外国人居留地の設立が提案されます。これは長らく続いた鎖国状態から、幕末にかけて開国に向かったのが大きな要因です。明治維新後は、実際に築地に居留地が建ち、本格的に外国人を迎える準備が進められます。居留地以外にも、外国人に向けた講武所や軍艦操練所が建設されました。
その結果、ミッション・スクール(キリスト教主義の学校)やホテル、パンといった外国の文化が築地に広まっていきます。
1923年の関東大震災により、築地は街の大部分が焼失し、甚大な被害を受けます。その後の復興計画に伴い、町名や地番の変更が行われましたが、それがかえって混乱を招き、外国文化を取り入れ発展した街は徐々に衰退してしまいます。
築地の象徴でもあった本願寺も震災により壊滅し、街の雰囲気は大きく変わっていきました。そんな中、魚河岸が築地に再建されることが決定。これを機に、築地は当時の活気を取り戻し始めるのです。
その後、「墓地の跡地で商売をすると繁盛する」という噂が流れ、本願寺の跡地に店を構える人が現れます。その結果、全国から食品や調理器具を扱うお店が築地に集まり、500以上の店が軒を連ねる日本有数の問屋街「築地市場」が完成したのです。
第二次世界大戦中、政府の統制に伴い築地市場の活動は制限されますが、戦後間もなく営業が開始され、あっという間にその賑わいを取り戻します。
市民に愛され、「都民の台所」として発展し続けた築地市場は、今では水産業者や地域の人々だけでなく、外国人観光客も多く訪れる観光地となりました。2018年には、中央卸売市場、いわゆる場内市場が豊洲市場に移転。一般向けの場外市場のみになりましたが、多くのお店が営業しており、変わらぬ賑わいを見せています。
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築地市場の「場内」と「場外」で何が違うの?
場内市場は業者のための卸売市場
築地市場の場内市場の様子
築地市場の「場内」では水産業者の営業や競りが行われており、日本を代表する卸売市場である築地市場の心臓部分として機能していました。
築地市場の魚がし横丁
築地市場の場内には、獲れたての鮮魚を取り扱うお店が並ぶ「魚がし横丁」があります。この横丁は誰でも利用することができ、仕入れに通う食のプロから観光客まで、様々な人が買い物したり、食事をしたりするお店が並ぶ大商店街。新鮮なまぐろやで旬な魚を手頃なお値段で楽しめると、国内外の観光客に大人気でした。
築地市場を走るターレー
場内は人だけでなく、トラックやフォークリフト、ターレーと呼ばれる運搬車両が多く行き交います。
築地場外市場は誰でも気軽に食事や買い物ができる
築地市場の場外市場
業者だけでなく、一般向けに解放されている場外市場は、誰でも気軽に食事や買い物をできるエリア。場内市場が移転した今でも、多くの店舗が営業しています。
営業時間は、朝の5時から15時まで。魚介類だけでなく、ラーメンや玉子焼き、もろこし揚げなど様々なジャンルの料理や食材を扱う専門店が並びます。場内と比べると広々としており、落ち着いた雰囲気の中で築地を楽しめます。
築地市場のイベント
5月「半値市」
築地市場の半値市で出される卵焼き
年に一度、5月の半ばに行われる「半値市」では築地市場の場外にある各店舗がメニューの中の1品を半額で提供します。普段の半分の値段で絶品の海鮮丼や卵焼きが食べられることもあり、毎年大人気のイベントです。
6月「つきじ獅子祭り」
波除稲荷神社の獅子
「つきじ獅子祭り」は、万治2年に創設された波除稲荷神社のお祭りです。その当時、突然起こる波風によって埋め立て工事が難航していました。
しかし波除神社創建後、その荒波がおさまり、復興が無事行われたとされています。その効力に驚き、新たに奉納された「雲を従える”龍”」「風を従える”虎”」「一声で万物を威伏される”獅子”」を祀る行事として獅子祭りは始まりました。「本祭り」は3年に一度、「陰祭り」は毎年行われています。
8月「築地本願寺納涼盆踊り大会」
築地本願寺盆踊り祭り
「日本一おいしい盆踊り」として知られる築地本願寺盆踊り。築地市場からほど近くに立つ、「築地本願寺」で開催される祭りです。夏祭りの雰囲気と築地ならではのグルメやビールを一緒に楽しめます。築地市場にある多くの有名店が屋台を出し、ほかのお祭りにはないバラエティに富んだ食事を楽しむことができます。毎年8月上旬に4日間ほど行われます。
築地市場へのアクセス
最寄駅:都営大江戸線 築地市場駅
東京メトロ日比谷線 築地駅
新宿駅からのアクセス
【新宿駅】ー 都営大江戸線 / 六本木・大門方面
→【築地市場駅】A1出口 → 徒歩(約5分)
東京駅からのアクセス
【東京駅】ー JR山手線 / 品川方面
→【浜松町/大門駅】ー 都営大江戸線 / 都庁前方面
→ 【築地市場駅】A1出口 → 徒歩(約5分)
成田空港からのアクセス
【成田空港駅】ー 成田スカイアクセス特急 / 羽田空港国内線ターミナル方面
→ 【大門駅】ー 都営大江戸線 / 都庁前方面
→ 【築地市場駅】A1出口 → 徒歩(約5分)
羽田空港駅からのアクセス
【羽田空港駅】ー 東京モノレール / 浜松町方面
→ 【浜松町/大門駅】ー 都営大江戸線 / 都庁前方面
→ 【築地市場駅】A1出口 → 徒歩(約5分)
築地の魅力を再発見
2018年の中央卸売市場が築地から豊洲に移転し、時代の転換点にある築地。ですが、築地場外市場はいまでも変わらぬ賑わいを見せ、多くの観光客が訪れています。これからも東京を、日本を代表する台所として賑わい続けることでしょう。みなさんも東京へ訪れた際には、変わりつつある築地に足を運んでみてはいかがでしょうか。